いみじ

精選版 日本国語大辞典 「いみじ」の意味・読み・例文・類語

いみ

〘形シク〙 善悪ともに、程度のはなはだしいことを表わす。中古文および擬古文で用いる。
① (用言体言を修飾して、その被修飾語の持つ属性の程度がなみなみでないことを表わす) はなはだしい。著しい。たいそう(な)。
※竹取(9C末‐10C初)「かぐや姫『もの知らぬ事なの給ひそ』とて、いみじく静かに公に御文奉り給ふ」
② (望ましくないものについて、その程度がはなはだしい意を表わす) ひどく…である。
(イ) (話し手情緒に好ましくない影響を与える場合) ひどくつらい、苦しい、みじめである、悲しい、情けない、恐ろしい、困ったことである、などの気持を表わす。
大和(947‐957頃)一六五「かへりごとなどもせんとする程に死にけりと聞きて、いといみじかりけり」
源氏(1001‐14頃)若紫「あないみじや。いとあやしき様を人や見つらむ」
(ロ) (ある事柄がはげしくひどいさまにいう場合) ひどくはげしい、大変なことである、とんでもないことである、などの意を表わす。
※大和(947‐957頃)一四九「つれなき顔なれど女の思ふこといといみじきことなりけるを、かく行かぬを、いかに思ふらむ」
③ (望ましいものについてその程度がはなはだしい意を表わす) ひどく…である。
(イ) (話し手や周囲の者の感情・情緒に好ましい影響を与えた場合) たいそううれしい、喜ばしい、などの意を表わす。
※竹取(9C末‐10C初)「いみじからん心ちもせず、悲しくのみなむある」
(ロ) (ある事柄がすぐれている場合) たいそうすばらしい、りっぱである、情趣が深い、などの意を表わす。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「いみじきものぞや。さばかり乱れてはしたなかりつるに、異人の酔ひざまには似ずかし」
[語誌]上代文献には見られず、中古においても訓点資料や歌集には使われず、多く物語や日記で用いられた。程度のはなはだしいさまを表わし、解釈上は前後文脈から具体的に補って理解すべきことが多い。平安末期から良い意味に用いられることが多くなっていった。
いみじ‐が・る
〘他ラ四〙
いみじ‐げ
〘形動〙
いみじげ‐さ
〘名〙
いみじ‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「いみじ」の意味・読み・例文・類語

いみ・じ

[形シク]《「い(忌)み」の形容詞化。忌まなければならないほどひどい、というところから》善悪ともに程度のはなはだしいさまにいう。
下にくる被修飾語の程度が並々でないさまを表す。はなはだしい。著しい。
「―・じく静かに公に御文奉り給ふ」〈竹取
「―・じき色好みを、かくあからめさせ奉らぬこと」〈宇津保・俊蔭〉
被修飾語に当たる具体的内容が省略され、文脈から補わなければならない場合。
㋐(望ましいものについて)たいそうすばらしい。たいそううれしい。すぐれている。
「―・じからむ(=ウレシイトイウヨウナ)心地もせず、悲しくのみある」〈竹取
「―・じき(=スグレタ)絵師といへども筆限りありければ」〈桐壺
㋑(望ましくないものについて)たいそうつらい。ひどく悲しい。すさまじい。ものすごい。
「世の中に―・じき(=悲シイ)目見給ひぬべからむ時」〈宇津保・俊蔭〉
右近は…泣きまどふさまいと―・じ(=ヒドイモノダ)」〈夕顔
[補説]上代語にはなく、中古の和文に多く用いられる。また、漢文訓読語では「はなはだ」「きわめて」が用いられ、「いみじ」の使用はない。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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