かんぽ生命(読み)カンポセイメイ(英語表記)JAPAN POST INSURANCE Co.,Ltd.

デジタル大辞泉 「かんぽ生命」の意味・読み・例文・類語

かんぽ‐せいめい【かんぽ生命】

株式会社かんぽ生命保険」の通称

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 「かんぽ生命」の解説

かんぽ生命

東京都千代田区に本社を置く生命保険会社。略称および愛称かんぽ生命とする。2007年の民営化以前に国営の郵政事業の一環として行われていた簡易保険(簡易生命保険)が「簡保」と称されていたため、この後を引き継ぐものとして「かんぽ」と呼ぶ。簡易で小口の個人向け保険商品を中心に、被保険者2800万人、総資産77兆円(17年度末)を有し、日本生命保険相互会社と肩を並べ、業界トップクラスの規模を誇る。
かんぽ生命は、05年公布の郵政民営化法により、日本郵政公社の事業であった郵便、郵便貯金、簡易保険の3事業のうち、保険事業を引き継ぐものとして06年に設立(株式会社かんぽ)された。株式の大半を日本郵政(株式の多くは財務大臣が保有する株式会社)が保有するが、株式を上場する民営企業である。07年の日本郵政公社解散により生命保険業を開始し、現在の称号に変更された。なお、07年以前に販売された政府保証のある簡易生命保険(簡保)の保険金支払いや保険料収納の事務は委託を受けた同社が行っているが、同年以降に開始された同社の設計による新たな保険契約は、他の保険会社の商品と同様の生命保険(生保)である。ただし、同社の新商品は簡保時代の保険商品の構成を引き継いで展開されているため、掛け捨てタイプの普通定期保険を除けば、養老保険学資保険など多くの商品が貯蓄性の高い、積み立てタイプなどで構成される。
旧制度の簡保は、簡易生命保険法に基づいて1916年に非営利の政府の独占事業として逓信省(後に郵政省)により創建された。当時すでに民営の生保は存在したが、掛け金が高額で年払いであることなどから富裕層のみを対象とするものだった。簡保は、「簡易な手続きで、国民の基礎的生活手段を保障する」として、社会保険制度が未整備だった時代に社会保障を補完するものとして登場した。
簡保は加入時に医師の診査職業制約がなく簡便であり、敗戦後は政府独占が廃止されたがその後も引き続き政府の保証の下にあった。不慮の事故や災害による死亡には保険金の支払いが割り増しになり、災害など非常時には各種の便宜が図られることなどの利点もあり、保険の限度額は低く抑えられてはいたが国民各層に広く利用された。一方、民営の保険会社も敗戦後の社会構造の変化に伴って、一般勤労者を対象とする無診査、小口、月掛けの簡保に準じた保険商品を次々と市場に上げた。簡保の限度額引き上げもあって、両者の競合関係が取りざたされるようになった。2001年に中央省庁再編により郵政省は廃止され、国営だった郵政事業は03年には郵政公社に移されて、07年には分割民営化された。こうして90年余にわたって続いた簡保は新たな契約を終了し、これ以降は「かんぽ」という呼び名の生保になった。それでも、郵便局(日本郵便株式会社)を窓口として簡保時代の顧客を引き継ぐ巨大な保険会社として大きな存在感を保ち続けている。
このような経緯により高齢世代から厚い信頼を受けていたかんぽ生命であるが、19年に過去5年間に18万件を超える不適切な契約があったことが明らかになった。

(金谷俊秀 ライター/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android