(読み)ソ

デジタル大辞泉 「そ」の意味・読み・例文・類語

そ[終助・係助]

[終助]サ変・カ変動詞未然形その他の動詞の連用形に付く。中世には、サ変動詞の連用形にも付く。
副詞「な」と呼応して、禁止制止の意を表す。…てくれるな。…なよ。
「な恨み給ひ―」〈徒然・六九〉
副詞「な」は用いないで、禁止・制止の意を表す。…てくれるな。…なよ。
「かくみだりがはしくておはし―」〈今昔・一九・三〉
[補説]上代は「な」だけで「そ」を伴わない例もあり、禁止の意は「な」のほうにあって「そ」は軽く指示するにすぎなかったといわれるが、院政期ごろから中世にかけて2用法も現れた。
[係助]

そ[感]

[感]
馬を追うときの声。
左奈都良さなつらの岡にあはきかなしきが駒はぐともは―ともはじ」〈・三四五一〉
相手注意を引く声。
「あとも―とも言はば、一定事も出で来なんと思ふ」〈義経記・三〉

そ[五十音]

五十音図サ行の第5音。歯茎の無声摩擦子音[s]と母音[o]とから成る音節。[so]
平仮名「そ」は「曾」の草体から。片仮名「ソ」は「曾」の初2画。
[補説]「そ」は古く[tso](あるいは[ʃo][tʃo])であったかともいわれる。室町時代末にはすでに[so]であった。

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精選版 日本国語大辞典 「そ」の意味・読み・例文・類語

〘終助〙
① 「な…そ」あるいは「な…そね」の形で動詞の連用形(カ変、サ変の動詞だけは未然形)をはさみ、禁止の意を表わす。→語誌。
古事記(712)上・歌謡「今こそは 我鳥(わどり)にあらめ 後(のち)汝鳥(などり)にあらむを 命は な死せたまひ(ソ)
万葉(8C後)二〇・四三三五「今替る新防人(にひさきもり)が船出する海原の上に波な開(さ)(ソ)ね」
浄瑠璃心中宵庚申(1722)道行「なふおちよ、此もうせんをもうせんとな思はれ
② 活用語の連用形に下接し「そ」単独で禁止の意を表わす。院政期頃に現われ、近世にはほとんど用いられなくなる。
※今昔(1120頃か)一九「然はれ其達(そこたち)は否不呑(えのみ)
※歌謡・松の葉(1703)二・玉くしげ「我通ひきと吹く嵐、よそには告げ朝がらす」
[語誌]上代では「な…そ」「な…そね」「な…」「…な」の四種の形でも禁止を表わした。中古には、「な…そね」「な…」は衰退し、「な…そ」が優勢になった。また、「な」が脱落した「…そ」の形で禁止を表わすようになったが、本来は「そ」に禁止の意はない。「そ」の単独用法は、中世かなり用いられたが、近世になるとやがて消滅した。現代では「…な」だけが残っている。

〘感動〙
① 馬を追う声。しい。
※万葉(8C後)一四・三四五一「左奈都良の岡に粟蒔き愛(かな)しきが駒はたぐとも吾は素(ソ)ともはじ」
② 相手の注意を喚起する掛け声。それ。
※義経記(室町中か)三「あともそとも言はば、一定事も出で来なんと思ふ」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「そ」の意味・わかりやすい解説

五十音図第3行第5段の仮名。平仮名の「そ」は「曽」の草体から、片仮名の「ソ」は「曽」の初めの2画からできたものである。万葉仮名には2類あって、甲類に「蘇、素、宗、祖(以上音仮名)、十(訓仮名)」、乙類に「曽、僧、増、憎、則、所(以上音仮名)、衣、苑、背(以上訓仮名)」などが使われ、濁音仮名としては、甲類に「俗(音仮名)」、乙類に「序、敍、賊、存、茹、鋤(以上音仮名のみ)」などが使われた。ほかに草仮名としては「(所)」「(楚)」「(處)」「(蘇)」などがある。

 音韻的には/so/(濁音/zo/)で、上歯茎と舌との間で調音する無声摩擦音[s](有声破擦音[dz])を子音にもつ。上代では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。

[上野和昭]

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