野呂間(読み)のろま

改訂新版 世界大百科事典 「野呂間」の意味・わかりやすい解説

野呂間 (のろま)

道化人形。近世初頭,興行界で行われる諸芸能には必ず間(あい)の狂言がはさまれた。それは歌謡軽業からくり,少年の歌舞など多彩であった。なかでも歌舞伎の座の道化方による物まね芸が好まれ,浄瑠璃操座ではそれら著名道化方の顔を模した人形まで作られ,滑稽(こつけい)な寸劇を演じた。ふんとく,才六,たろま等々が作られたが,江戸ののろまがいちばん著名である。野呂松勘兵衛が創始したといわれる人形で,頭がひらたく色の青黒い人形であった。ほかにのろま治兵衛,のろま九兵衛などの遣い手もいた。上方ではそろま七郎兵衛によるそろま人形が代表的なものとして知られている。近松門左衛門の《国性爺合戦(こくせんやかつせん)》あたりから間の狂言は消えていくが,古浄瑠璃系の操座ではその後も残り,現在では佐渡広栄座の狂言人形(一般にのろま人形と呼ばれる)が有名である。このほか,宮崎県都城市の旧山之口町麓,鹿児島県薩摩川内市の旧東郷町斧淵の文弥人形座においても道化人形は上演されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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