ウォルフ=ライエ星(読み)ウォルフライエせい(英語表記)Wolf-Rayet star

改訂新版 世界大百科事典 「ウォルフ=ライエ星」の意味・わかりやすい解説

ウォルフ=ライエ星 (ウォルフライエせい)
Wolf-Rayet star

1867年にパリ天文台ウォルフC.WolfとライエG.Rayetによって発見された輝線星一種スペクトルはHe,O,N,Cなどの電離イオンが放射する幅広く強い輝線特徴である。イオンの電離段階から星の表面温度は4万~6万Kと推定される。また,輝線の幅を大気運動によるドップラー効果によるものと考えると,ウォルフ=ライエ星の大気は2000~4000km/sの高速度で流出状態にある。この星には化学組成の異常も知られており,Cに富む炭素系列とNに富む窒素系列に分かれ,星の進化との関係が注目されている。星からの質量流出量は年間太陽質量の10⁻5倍に達し,著しい質量流出を示す星の典型となっている。これまでに発見された同様な星の数は150個あまりにすぎず,銀河系の中でもきわめて特殊な星である。大部分は銀河面に集中しており,年齢の若い天体,とくにO型やB型のアソシエーションと共存している。
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百科事典マイペディア 「ウォルフ=ライエ星」の意味・わかりやすい解説

ウォルフ=ライエ星【ウォルフライエせい】

1867年にパリ天文台のC.ウォルフとG.ライエによって発見された輝線星の一種。スペクトルにヘリウム酸素,窒素,炭素などの電離イオンが放射する幅の広い強い輝線が見られるのが特徴。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウォルフ=ライエ星」の意味・わかりやすい解説

ウォルフ=ライエ星
ウォルフ=ライエせい
Wolf-Rayèt star

青白色のスペクトルを示すO型恒星の一種で,電離したヘリウム,炭素,窒素などによる多くの輝線がスペクトル中に見られるもの。発見者にちなんで命名。その輝線はすべて非常に幅が広く,これは星の外を取巻く高温ガスの急激な膨張自転のためだと考えられている。

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世界大百科事典(旧版)内のウォルフ=ライエ星の言及

【輝線星】より

…輝線星は星の中では早期型(高温度)星と晩期型(低温度)星とに現れる傾向がある。前者にはウォルフ=ライエ星,はくちょう座P型星,輝線B型星,超巨星などがあり,なかでもはくちょう座P型星は流出型星周圏をもつ輝線星の典型となっている。晩期型では輝線M型星,長周期変光星,おうし座T型星などが知られている。…

【恒星】より

…O,B型の高温度星が広がった大気をもつと輝線スペクトルが現れる。これには,ウォルフ=ライエ星,Be型星,はくちょう座P型星などの星があり,大気の構造や大きな膨張運動によりそれぞれ特徴的な輝線が現れる。惑星状星雲はO型星あるいはウォルフ=ライエ星に似た中心星をもっているが,そのまわりを0.1パーセクにも及ぶ膨大で希薄なガス層が包んでいる。…

※「ウォルフ=ライエ星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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