カラシ(芥子)油(読み)からしゆ(英語表記)mustard oil

改訂新版 世界大百科事典 「カラシ(芥子)油」の意味・わかりやすい解説

カラシ(芥子)油 (からしゆ)
mustard oil

アブラナ科植物カラシナ類の種子であるカラシを圧搾して得られるカラシ脂肪油をいう。また,粉砕して温湯に浸した後,水蒸気蒸留して得られる揮発性カラシ油,さらにその主成分であるイソチオシアン酸エステルをさす場合もある。カラシ脂肪油は,ナタネ油に似た半乾性油であって,クロガラシまたはシロガラシから約30%得られる。飽和脂肪酸として炭素数16,18,20,22,24のものを含むが,16のパルミチン酸が2.6%で最高である。不飽和酸としては,炭素数21のエルカ酸(48.7%),18のリノール酸(13.8%)などを多量に含んでいる。食用セッケンなどに用いられている。

 揮発性カラシ油はカラシナから得られるもので,150℃で沸騰し,激しい刺激臭をもち,皮膚に水疱を生じさせ,粘膜を侵す。カラシ粉の辛みの成分であり,収油率は0.5~1%程度。カラシナ,クロガラシではシニグリン,シロガラシではシナルビンなどの配糖体の形で存在するカラシ油配糖体が,特殊の酵素ミロシンにより加水分解されて生じる。食用,薬用として用いられる。
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世界大百科事典(旧版)内のカラシ(芥子)油の言及

【アブラナ(油菜)】より

…アブラナ科のほとんどの種類は特殊なミロシン細胞をもち,これをもっているのは,わずかの例外をのぞいてアブラナ科とフウチョウソウ科に限られている。ミロシンmyrosinというのは,からし油mustard oilの形成に関与する酵素である。アブラナ科は科としてはよくまとまった自然群で,フウチョウソウ科と類縁があり,ともにフウチョウソウ目としてまとめられる。…

【アブラナ(油菜)】より

…油料植物や野菜として重要なアブラナ類は,4月ころ黄色の十字花をつけるアブラナ科植物で,種子には40~45%の油を含み,世界中で広く栽培される。明治以後セイヨウアブラナの栽培が始まる前は,日本ではアブラナが植物性油の中でも最も重要なものであった。 このアブラナ類の所属するアブラナ属Brassicaは約40種からなり,北半球に広く分布している。この属には,アブラナ,カブ,ハクサイ,キャベツ,カラシナなど多くの有用植物が含まれ,葉や根は野菜や飼料作物として,また種子から良質の油がとれるので油料作物として重要であり,さらに観賞用として利用されるものもある。…

※「カラシ(芥子)油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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