クリケット(読み)くりけっと(英語表記)cricket

翻訳|cricket

精選版 日本国語大辞典 「クリケット」の意味・読み・例文・類語

クリケット

〘名〙 (cricket) イギリス古来の国民的な球技。一一人ずつ二チームに分かれて得点を争う。三本の柱に横木をのせたウイケットを二か所に設け、攻撃側から打者と次打者が出てそれぞれの前に立つ。打者がバットボールを打つと、打者と次打者はそれぞれ反対側のウイケットに走り、守備側が捕手にボールを返すか横木をボールで落とすかする前にそれに触れれば一点を得る。
毎日新聞‐明治二八年(1895)一〇月一七日「横浜に於ける秋季クリケット競争会は」

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デジタル大辞泉 「クリケット」の意味・読み・例文・類語

クリケット(cricket)

英国古来の球技。11人一組でチームをつくり、攻守に分かれて試合をする。投手の球を打者がバットで打ち、相対して立てたウィケット(三柱門)の間を走って得点を争う。

クリケット(cricket)

コオロギ1の英語名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリケット」の意味・わかりやすい解説

クリケット
くりけっと
cricket

主としてイギリス、オーストラリアをはじめイギリス連邦諸国で行われている、野球に似た競技。公明正大という意味をももつようにイギリス人の生活哲学に密着したスポーツである。イングランド南部では14世紀の初めにかなり普及していたといわれている。クロッケーフィールドホッケー、ゴルフなど先端の曲がったスティックを使用するスポーツの一つとして人々が楽しんでいたと思われる。1744年に最初の規則がつくられたが、ボールやバットの大きさが統一されたのは1774年で、88年にはメリールボン・クリケット・クラブMCC)が組織され、クリケット発展の基礎を固めた。19世紀に入るとパブリック・スクールにも普及し、1846年にはプロチームが生まれるほど盛んになり、最大の試合といわれるイングランド対オーストラリアのテスト・マッチは1877年に始まっている。わが国にも明治時代に紹介されたことはあるが、同じころアメリカから野球が伝えられたことから、日本で普及するまでには至らなかった。現在、神戸市外国語大学で行われている(正式にクラブが生まれたのが1981年)が、日本での普及の見通しは暗いとみられる。

[大谷要三]

競技の方法

グラウンド楕円(だえん)に近い芝生で、広さに規定はないが、160メートル×140メートル程度のものが望ましい。1チーム11名で、2チームが攻守に分かれて試合を進めるところは野球に似ているが、1イニングまたは2イニングスで終了する。各イニングには全員に打順が回り、10人がアウトになれば攻守交代するが、なかなかアウトにならないので試合が長くなり、3~5日と続けられることもある。このため、最近はテレビ中継などの関係もあって1日で終了するワン・デー・マッチが多くなってきている。

 試合は、グラウンド中央付近に二つのウィケットを向かい合わせたピッチを中心に展開する。守備側はボウラー(投手)とウィケット・キーパー(捕手)を除いた9名で守りを固めるが、打球は前後左右に飛ぶ(ファウルはない)ので守備位置はいろいろに変化する。攻撃側はまず最初の打者がポッピング・クリースをまたいで立ち投球を待つ。このとき次打者は反対側ウィケットのあるもう一つのポッピング・クリースの後方に立つ。ボウラーによって投げられた球がノーバウンドかワンバウンドでスタンプに当たりベイルが落ちれば打者はアウトになる。打者はボウラーの球がウィケットに当たる前に打ち返すが、打球がバウンドする前に野手にとられれば、野球の飛球と同じようにアウトになる。ボウラーは肘(ひじ)を曲げないオーバーハンドで投球しなければならず、打者が打てないような球を投げると攻撃側の得点になる。打球が直接捕球されることなくグラウンドに転がっている間に反対側のウィケットに向かって走る。このとき、もう1人の打者も反対側のウィケットに向かって走り、両打者がそれぞれ反対側のポッピング・クリースを回れば1点になるが、野手がその前に返球して球がスタンプに当たりベイルが落ちれば、そのウィケットに近い打者がアウトになる。もし返球が遅れれば、打者は両ウィケットの間を何回も回れるし、そのたびに得点が増加する。また打球が境界線に達すれば4点、ノーバウンドでこれを越せば6点になる。ボウラーの投球は6球ごとにくぎられ、ボウラーが交代する。

 ボールは硬式野球のそれよりすこし小さく、外周は22.4センチメートルないし22.9センチメートル、重さは155.9グラムないし163グラムのもので、赤色の堅いレザー・カバーのものが用いられる。バットは柄(え)のついた平板状のもので、長さ96.52センチメートル以下、幅は10.8センチメートル以下となっている。重さについてはとくに定めていない。なお、打者とウィケット・キーパーはレガース(すね当て)を用いる。ほかに打者用、ウィケット・キーパー用のグラブ、両競技者のための下半身の防具などもあるが、野手は素手でボールを受けなければならない。服装はカッターシャツと長ズボン、白靴が用いられる。

[大谷要三]

その後の動き

1984年(昭和59)に日本クリケット協会が設立された。大学では1987年慶應義塾大学に、さらに1989年(平成1)専修大学と中央大学にクリケットクラブが誕生した。その後1990年に早稲田大学、同志社大学、1992年に東京工科大学、1994年に青山学院大学と聖心女子大学にクラブが誕生するなど、全国の大学クラブの数は増えている。また、1993年のファーイーストクリケットクラブ(現富士ファーイーストクリケットクラブ)の設立を皮切りに、各大学のクリケット部出身者による社会人クラブの設立も相次ぎ、学生、社会人問わず、日本人のプレーヤーが増えてきている。

 在日外国人主導型のクラブは1983年に東海地域に静岡クリケットクラブが誕生し、静岡県や愛知県を中心に在日外国人クラブが増えてきた。1985年には東京の江戸川区にもクラブができ、その後東京都各地、埼玉県岩槻(いわつき)市(現さいたま市)、前橋市や千葉県市原市など関東地域にも在日外国人のクラブが誕生している。当初は外国人主導型のクラブと日本人のクラブの接点はあまりなかったが、2000年に関東クリケットリーグが創設され、日本人のクラブと外国人主導型のクラブが同じ大会で競技するようになった。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「クリケット」の意味・わかりやすい解説

クリケット
cricket

イギリスの伝統的球技。野外で11人編成の2チームが,ボールをバットで打って得点を争うスポーツ。イギリスやオーストラリア,ニュージーランド,インド,西インド諸島などイギリス連邦諸国を中心に普及している。

発祥地はイギリスともフランスともいわれ明確ではない。13世紀ごろ,クロッケーと同じくつえを使うクラブ・ボールの一種として庶民の娯楽となった。当時の書物や絵画に練習風景が描かれている。賭競技であるうえ,動作が粗暴で非紳士的という理由から,1477年エドワード4世が禁止令を出した。しかし,しだいに盛んとなり1744年初めて公式の競技規則ができ,48年にはジョージ2世が解禁した。イギリス国内で記録に残る最初の試合は,1728年のサリー州対ケント州戦。88年にロンドンのメリルボン・クリケット・クラブが〈全国統一ルール〉を制定し,以来,上流貴族社会のレクリエーションとして発達した。1827年にはケンブリッジ大学対オックスフォード大学の第1回対校戦が行われ,パブリック・スクールでも人気スポーツになった。46年には〈オールイングランド〉のプロチームが誕生する。1909年に王室クリケット連盟が設立され,65年には国際クリケット連盟(ICC)に改組された。

ひと言でいうと,〈360度どの方向に打ってもよい一塁帰りの野球〉。投手(ボウラー)と打者(ストライカー)のかけひき,根比べが妙味で,フェア,ファールやストライク,ボールの概念はなく,守備位置も流動的。本塁ともいえるウィケットの攻防がゲームの骨格である。野球と同様攻守を交代しながら2イニングで1ゲーム。攻撃側は打者2人が二つのウィケットの前4フィートに設けられた打席(ポッピングクリース)に入り,交代で打つ。投手は打者の後ろのウィケットを倒そうと球を投げる。打ちづらいワンバウンドが原則で,ウィケットに当たってベールが落ちれば打者はアウト。10人がアウトになればチェンジする。打者はバットで球がウィケットに当たらないように防ぎながら打つ。ピッチを取り囲んで守る野手がフライを取れば打者はアウト。ゴロやフライが野手間を抜けると,打者は向い側のウィケットに走る。もう1人の打者もスタートし,互いにウィケットに到達すると1得点が記録される。この際,守備側は打者が到達する前に返球し,ベールを落とせば打者はアウトになる。しかし,打者は打球の勢いを見てまにあわないと判断すれば走る必要がない。したがって,おそろしく試合時間が長くなる。テストマッチ(公式国際戦)では5日間の日程で,途中ティータイムやランチタイムを取って優雅に行われる。一度のバッティングで最高6点まであげられ,これを繰り返して1人で100点をマークすれば,〈センチュリー〉と称されたいへんな名誉となる。野手は捕手(ウィケットキーパー)以外グローブをつけてはいけない。審判は2人。クリケットでは規則をルールといわずローlawsと呼び,厳格である。英語でplay cricketといえば〈公明正大にやる〉の意味になる。それだけクリケットはイギリス的なスポーツということであろう。

クリケットのコラム・用語解説

【クリケット用語】

競技場
広さに規定はないが,160m×140m程度の楕円形で芝のグラウンドが使用される。
ピッチ
競技場の中央に22ヤード間隔の2基のウィケット(三柱門)を設置する。野球のダイヤモンドに当たり,投げたり打ったりする場所。
ウィケット
3本の木製の棒で,棒の間にベールと呼ばれる木片が置かれている。
ボール
コルクを芯にウール糸を巻きつけ表面は赤い皮革。重さ5.5~5.75オンス。周囲は8.8125~9インチ。
バット
伝統的にヤナギが原材。舟の櫂に似た形で重さは2.25~2.5ポンド。柄にはフジつるを巻く。

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百科事典マイペディア 「クリケット」の意味・わかりやすい解説

クリケット

英国古来の伝統的球戯。各11人からなる2チームで行う。3本の柱の上に横木をのせた三柱門(ウィケット)を二つ20m隔てて向かい合わせて立て,その内側に打席(ポッピングクリース)を設ける。攻撃チームは両側の打席に1人ずつ打者を送り,守備チームは三柱門の一方に投手,他方に捕手を配置し,残りの9人は野手となる。投手が三柱門に向かって投げる球(コルクと麻糸の芯(しん)を牛皮で包んだもの)を一方の打者がバット(柄のついた幅10cmほどの平板)で打ち,打球が捕手に返され三柱門の横木が落とされるまでに両打者がその位置を交換すれば得点となり,長打の場合には何回も三柱門間を走って6点まで得点を追加できる。打球の勢いをみてまにあわないと判断すれば走らなくともよい。打球は360度どの方向に飛ばしてもよいが,投手の投球が直接三柱門の横木を落としたときや,打球が直接野手に捕球されると打者はアウトになり,10人がアウトになると攻守交代する。試合は数日間の日程で行われ,途中にティータイムやランチタイムもとられる。起源は不詳だが,13世紀ころ賭(かけ)競技として広まり,18世紀以後規則が確立。英国のほかにオーストラリア,ニュージーランド,インドなどでも行われる。
→関連項目近代スポーツ野球

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クリケット」の意味・わかりやすい解説

クリケット
cricket

11名ずつの2チームが交互に攻守交代して,ボールをバットで打合い得点を競う競技。イギリスの国技。すでに 13世紀中頃には絵画や書物に,その練習風景が現れている。最初の規則が整えられたのは 18世紀初頭とされている。日本ではほとんど行われていない。競技場の広さには制限がなく,芝生のグラウンドの中央 (ピッチ) に 22ヤード (約 20.1m) 間隔で3柱門のウィケット2つを立て,そこに8フィート8インチ (約 2.64m) の投手線と,そこから内側に4フィート (約 1.22m) 離して平行の打者線を引く。バットは櫂形の柳製。ボールはコルク芯に糸を巻き皮で包む。競技では守備側が位置につき,攻撃側は2名ずつペアとなり各ウィケットに位置し,うち1名のバットマンがボウラーの投げるボールを打つ。打てずにボールがウィケットに当ればアウト。打てれば,2名同時に反対側のウィケットに向け走り,できるかぎり何度も両ウィケット間を走る。走者がウィケットに達しバットでそれに触れるごとに得点を数える。 10名がアウトになって1回が終了,攻守交代をする。

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世界大百科事典(旧版)内のクリケットの言及

【コオロギ(蟋蟀)】より

…直翅目コオロギ上科Grylloideaに属する昆虫を呼ぶときに用いる通俗的な呼名。ケラもこの仲間だが,別に扱うことも多い。またツヅレサセコオロギの旧名をコオロギといった。 コオロギ類は,キリギリス類やバッタ類とともに直翅目を構成する主要な群で,とくにキリギリス類に類縁が近い。キリギリス類は体型が縦に平たく,主として樹上生活に適応しているが,コオロギ類は,エンマコオロギで代表されるように,体型が背腹に平たくなり,地表生活に適応している。…

【ドロー】より

…しかし,なかには優劣の判定をしないことをもってよしとする,いわゆる〈ドローの精神〉とも呼べるものが尊重された時代がある。 たとえば,イギリスの国技ともいわれるクリケット。クリケットの試合は,こんにちでは最長5日間,大学対抗戦で3日間,ふつうは1日(朝10時から日没まで)で行われる。…

※「クリケット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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