サカタザメ(読み)さかたざめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サカタザメ」の意味・わかりやすい解説

サカタザメ
さかたざめ / 坂田鮫

軟骨魚綱ノコギリエイ目の科や属の総称、またはその1種の名称。サカタザメ科Rhinobatidae(英名guitarfishes)は体盤前縁が直線状で、第1背びれ腹びれよりはるか後方にあることで、同じノコギリエイ目のウチワザメ科Platyrhinidaeやトンガリサカタザメ科Rhynchobatidaeなどと区別できる。サカタザメ属Rhinobatosには世界から19種が知られている。日本近海にはサカタザメR. schlegeliiとコモンサカタザメR. hynnicephalus分布するが、サカタザメは背面が一様に茶褐色で、斑紋(はんもん)がない(コモンサカタザメには輪状斑紋がある)ことで区別できる。

 種としてのサカタザメ(英名brown guitarfish)は砂泥底にすみ、甲殻類や貝類を捕食する。生殖方法は非胎盤型の胎生で、胎仔(たいし)は自分の卵黄を吸収してしまうと母体から栄養を受けて成育する。東シナ海では6~10月に2~7尾の子を産む。最大で全長1メートルほどになる。おもな生息水深は20~225メートルで、本州中部以南の日本各地、東シナ海、南シナ海などに分布する。底引網などで漁獲され、練り製品原料煮物などに利用される。国際自然保護連合IUCN)のレッド・リストでは、絶滅危惧(きぐ)種中の「深刻な危機」(CR)に指定されている(2021年8月時点)。

[仲谷一宏 2021年9月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「サカタザメ」の意味・わかりやすい解説

サカタザメ

エイ目サカタザメ科Rhinobatidaeに属する海産魚の総称,またはそのうちの1種を指す。この類は体型がギターに似ているので英名はguitarfish,あるいはシャベルに似ているのでshovelnoseなどという。サカタザメ科は世界に45種,日本近海にはサカタザメ,コモンサカタザメ,タイワンサカタザメ,シノノメサカタザメ,トンガリの5種がいるが,サカタザメおよびコモンサカタザメがもっともふつうに見られる。サカタザメRhinobatos schlegeliiは日本の中部以南の暖海の,おもに大陸棚の砂泥底に生息する。尾部が太く,背びれが2基あり,背面が一様に褐色または灰褐色であるのが特徴。全長1mに達する。卵胎生のエイで,6月ころ1産6尾の子どもを生む。甲殻類などの小動物を餌とする。また,シノノメサカタザメRhina ancylostomaやトンガリRhynchobatus djiddensisは南日本以南の暖海域に生息し,全長2mを超える。サカタザメは刺身,煮つけなどで直接食用となるが,他の種類は練製品の原料となる。また,ひれはフカのひれの材料となる。
エイ
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百科事典マイペディア 「サカタザメ」の意味・わかりやすい解説

サカタザメ

サカタザメ科の魚の総称,またはその1種。エイのなかま。サカタザメ科は世界に45種,日本には5種いる。もっともふつうに見られる種のサカタザメは,全長1m。背面は灰褐〜褐色。本州中部以南,フィリピン〜アラビアに分布。本州南部ではかなりの漁獲がある。地方名トウバ,サカタ,スキ,スキノサキ,カイメなど。刺身,煮魚,かまぼこ材料となる。また,ひれはフカひれの代用品になる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サカタザメ」の意味・わかりやすい解説

サカタザメ
Rhinobatos schlegelii

エイ目サカタザメ科の海水魚。全長約 1m。体は扁平で,上から見て頭部は三角形で,吻が長い。尾部は細長く,尾鰭はよく発達している。鰓孔は腹側にあり,この点でエイ類に分類されている。沿岸の砂底にすむ。胎生。本州中部以南,朝鮮半島からオーストラリアに分布する。

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