ストークスの法則(読み)ストークスノホウソク(英語表記)Stokes' law

デジタル大辞泉 「ストークスの法則」の意味・読み・例文・類語

ストークス‐の‐ほうそく〔‐ハフソク〕【ストークスの法則】

粘性流体中における物体の運動に関する法則粘性率ηエータの流体中を半径aの小球が速度Uで運動しているとき、小球にはたらく抵抗Dは、D=6πηaUで表される。レイノルズ数が1に比べて小さい時に成り立つ。ストークスの抵抗法則。
蛍光体吸収・放出する光の波長に関する法則。蛍光体が光を吸収して励起し、蛍光を放出してもとの状態に戻るとき、一般に放出される蛍光の波長は励起に使われた光の波長よりも長いというもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「ストークスの法則」の意味・わかりやすい解説

ストークスの法則 (ストークスのほうそく)
Stokes' law

G.G.ストークスによって見いだされたもので,次の二つがよく知られている。

(1)粘性流体中をゆっくりと進行する球に働く抵抗に関する法則。球の半径をa,速度をU,流体の粘性率をμとするとき,抵抗がD0=6πμaUに等しいというもの。ただし流体の密度をρとするとき,レーノルズ数Re=2aU/(μ/ρ)が1に比べて小さいという条件を必要とする。1850年にストークスがこの近似のもとに成り立つストークスの方程式を用いて導出したものである。C.W.オセーンによる補正項を入れれば抵抗はD0(1+3/16Re)となる。なお,他の物体や壁からの距離に比べてaが小さいことも必要である。
執筆者:(2)光ルミネセンス蛍光スペクトル励起光より長波長であるという法則。光子エネルギーがその波長の逆数に比例することに基づく現象で,ストークスシフトStokes shiftと呼ばれる。ストークスが実験によって確かめたものであるが例外もある。励起光より低いエネルギー(すなわち長波長)の蛍光をストークスシフトしたスペクトルと呼ぶが,この場合には,蛍光体は発光のために余分なエネルギーを要しない。これに対し蛍光体がエネルギーを供給するならば励起光より短い波長の蛍光を発することができる。多くの場合,蛍光体のもつ熱エネルギーの一部,すなわち格子振動のエネルギーが励起光のエネルギーに加えられ発光する。この現象は光ルミネセンスに限らず,例えば,ラマン散乱においても,励起光より長波長の散乱光スペクトルをストークス線,短波長のスペクトルを反ストークス線と呼ぶ。反ストークス線はストークス線に比べて強度の弱いのがふつうである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストークスの法則」の意味・わかりやすい解説

ストークスの法則
すとーくすのほうそく

(1)半径rの剛体球が、粘性率ηの粘性流体中を速度Uで運動するとき、球は、F=6πηrUの大きさの抵抗を受けるという法則。この法則は、レイノルズ数R=ρrU/η(ρは流体の密度)が1より小さい場合に、実験結果とよく一致することがわかっている。たとえば、雨滴が空から落下してくるとき、雨滴はストークスの法則に従った空気抵抗を受ける。抵抗は速度に比例しているため、雨滴の速度はある一定の値(5~50km/s)以上にはならない。このため、いかに高いところから落ちてきても私たちは雨滴を痛く感じないのである。

(2)ある特有の物質では、光を当てたとき、温度放射とは異なる光を発することがある。当てる光を消したとき、発光が止まる物質を蛍光体とよび、なおしばらく発光の続く物質を燐光(りんこう)体とよぶ。このいずれも、当てた光の波長よりも発光した光(これをストークス線という)の波長のほうが長いのが一般的であり、これをストークスの蛍燐の法則という。この例外もあり、入射光より発光した光のほうが波長が短い場合を、反ストークス線とよぶ。

[池内 了]

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百科事典マイペディア 「ストークスの法則」の意味・わかりやすい解説

ストークスの法則【ストークスのほうそく】

(1)〈粘性率μの流体中を半径aの球が速度Uで動くとき,球が受ける抵抗力は6πμaUで与えられる〉。レーノルズ数R=ρaU/μ(ρは流体の密度)が約1以下のときこの法則が成り立つ。(2)〈蛍光体が発する蛍光(ルミネセンス)の波長は物質に吸収された光の波長よりも長波長側に現れる〉。リン光にも同じ法則が成り立つ。→G.ストークス
→関連項目イオン半径蛍光抵抗粘度計

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化学辞典 第2版 「ストークスの法則」の解説

ストークスの法則
ストークスノホウソク
Stokes' law

】半径rの球が粘度ηの流体中をvの速さで動くとき,球には

f = 6πηrv
の抵抗がはたらくという法則.この法則は,レイノルズ数がほぼ1以下の場合に成立する.【】蛍光の波長は,吸収光の波長に等しいかそれより長い,という法則.これはりん光蛍光X線,ラマン線についても成立する.この法則に従う発光の線をストークス線といい,法則に反して発光する線(吸収光より短い波長)を反ストークス線(アンチストークス線)という.

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岩石学辞典 「ストークスの法則」の解説

ストークスの法則

粘性率ηの流体の中を半径aの球が速度Uで動くとき,球にはD=6πηaUの大きさの抵抗が働くという法則.ストークス(G. G. Stokes)が理論的に導いたもので,レイノルズ数Re=ρaU/ηが大体1以下の場合に成り立つ.ρは流体の密度である[長倉ほか : 1998].この法則で,球状粒子が流体中を通過して落ちる場合に,終末速度(terminal velocity ; V)は直接粒子の半径の二乗に比例すると表すことができる[Stokes : 1845].

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世界大百科事典(旧版)内のストークスの法則の言及

【堆積作用】より

…流動粒子の沈積と停止(堆積)を示す粒径と流速の関係についてはユルストレームF.HjulströmとスンドボルグÅ.Sundborgのグラフで一般に示される(図)。静水中での粒子の沈降は,ストークスの法則Stokes’ lawまたはインパクト則impact law(ニュートンの法則ともいう)に従う。ストークスの法則は粒径0.1~0.001mmの小粒子によく適合し,沈降速度vは次式で表される。…

※「ストークスの法則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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