スワップ協定(読み)スワップきょうてい

精選版 日本国語大辞典 「スワップ協定」の意味・読み・例文・類語

スワップ‐きょうてい ‥ケフテイ【スワップ協定】

〘名〙 (swap agreement の訳語) 二か国の中央銀行が一定額の自国通貨を一定期間にわたり相互に預け入れることを取り決めた協定。取得した相手国通貨は主として急激な為替変動を防ぐための為替操作に使用される。

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デジタル大辞泉 「スワップ協定」の意味・読み・例文・類語

スワップ‐きょうてい〔‐ケフテイ〕【スワップ協定】

swap agreement》⇒通貨スワップ協定

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改訂新版 世界大百科事典 「スワップ協定」の意味・わかりやすい解説

スワップ協定 (スワップきょうてい)

スワップswapとは本来〈物々交換〉を意味する英語であるが,民間の外国為替取引においては為替リスクを避け,かつ金利差を利用し有利な資金調達を図るために,売買が逆方向で金額の等しい直物(じきもの)為替と先物為替を抱き合わせて行う取引の意味(スワップ取引ともいう)である。

 これに対しスワップ協定は中央銀行間のスワップに関する協定である。通貨当局は自国通貨の為替相場が急激に下落するような場合,為替市場に強い通貨を売却して市場に介入する。売却すべき通貨を十分保有していれば問題はないが,これが不足する場合,IMFからの借入れや外債発行,銀行借入れの方法もあるが,これらの方法では条件交渉等に手間取り急場に間に合わない。このような緊急の場合のため,ある国の中央銀行と他の国の中央銀行とが必要とする外貨をいつでも借り受ける方法として,一定限度額内においてスワップを行うという約束をあらかじめ締結するのがスワップ協定である。1962年アメリカニューヨーク連邦準備銀行が中心となった,イギリス,フランス,西ドイツ,日本などの主要国との間の双務協定が最初である。仕組みはニューヨークにある相手国の勘定ドルを貸記し,相手国にあるアメリカの勘定に同額の相手国の通貨を貸記し,為替市場に介入の必要があれば必要通貨を使用する。使用した通貨は原則として3ヵ月後に元に戻すという契約だが,1回程度は更新できるとされている。スワップ協定の典型例としては,1964年のポンド支援の総額30億ドルの〈バーゼル協定〉があるが,73年に変動相場制になってからも拡大され,EMS(ヨーロッパ通貨制度)の基盤となった。

 これ以外に特記すべき例としては,77年11月のカーター大統領のドル防衛措置の一環としてのスワップ枠の巨額な増額,79年5月の日本銀行が円安対策としてニューヨーク連銀以外の西ドイツの連邦銀行およびスイスの中央銀行ともスワップ取決めを拡大した例がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スワップ協定」の意味・わかりやすい解説

スワップ協定
すわっぷきょうてい
swap agreement

二か国の中央銀行が一定額の自国通貨を一定期間相互に預け合うことを取り決めた協定。取得した相手国通貨は主として為替(かわせ)安定資金に使用される。多くは3か月ないし6か月の短期協定であるが、双方の合意があれば更新できる。相手国通貨をもつことに伴う為替リスクを回避するため、返済は預け合ったときの為替相場によって行われる。

 スワップ協定は、1959年にアメリカの連邦準備制度が旧西ドイツの中央銀行(ブンデスバンク)との間で締結したのが最初であるが、その後アメリカの連邦準備制度はドル防衛のために協定網を拡大し、日本銀行も1963年(昭和38)に同制度と協定を結んだ。この協定は、もともと双務的な信用供与の方法なので、その後、各国の中央銀行間でも協定が結ばれ、国際収支危機を乗り切る手段として利用されている。なお、取得した相手国通貨は、為替操作に使用しない場合には財務省証券(TB)などに投資できる。

[土屋六郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スワップ協定」の意味・わかりやすい解説

スワップ協定
スワップきょうてい
swap agreement

外国為替相場の安定をはかるため,各国通貨当局が一定額の自国通貨を一定期間相互に預け合ったり,必要に応じて相手国通貨を引出すことを取決める協定。現在は後者が主流となっている。期間は通常3~6ヵ月である。なお,前者の場合返済は預け合いを行なったときの為替レートを適用する。 1959年ニューヨーク連銀とブンデスバンク (ドイツ連銀) との間でドル防衛のため締結されたのが最初である。日本では 62年日本銀行とニューヨーク連銀との間で1億 5000万ドルの円ドル・スワップ協定が結ばれた。現在,スワップ協定網は主要 14ヵ国の中央銀行と国際決済銀行 BISに拡大しており,日銀もニューヨーク連銀のほかにブンデスバンクとスイス国民銀行とスワップ協定を締結している。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「スワップ協定」の解説

スワップ協定

中央銀行間で、自国の通貨を相互に預けあうことを取り決めた協定。中央銀行は、あらかじめお互いに自国の通貨の貸し借りを行なえる一定の枠を取り決めておく。そして、実際に外貨が必要なときは、枠の範囲内で、外貨を他国の中央銀行から借り入れるのである。この借り入れは短期間で返済が求められるものであるが、外貨を容易に取得できる手段として、利便性の高いものである。アメリカは、ドル交換制度をとっていた当時は頻繁に利用された。さらに、近年ではアジア地域で、スワップ協定のネットワーク拡大の動きがあり、2005年にはASEAN諸国と日本、中国、韓国の間でスワップ協定を結ぶことで合意した。

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百科事典マイペディア 「スワップ協定」の意味・わかりやすい解説

スワップ協定【スワップきょうてい】

2ヵ国の中央銀行が一定額の自国通貨を一定期間相互に預け合うことを取り決める協定。協定の発動により取得した相手国通貨は,主として為替を安定させるための為替平衡資金に使用される。預け合う期間は2〜3ヵ月から6ヵ月の短期間で,返済は協定発動時の為替相場で行われる。1959年に米国とドイツの間で締結されたのが最初である。

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