ドブネズミ(読み)どぶねずみ(英語表記)brown rat

翻訳|brown rat

改訂新版 世界大百科事典 「ドブネズミ」の意味・わかりやすい解説

ドブネズミ (溝鼠)
Norway rat
brown rat
Rattus norvegicus

齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類クマネズミと並ぶ代表的なイエネズミ原産地はおそらく中央アジアと考えられ,18世紀初めにヨーロッパへ分布を拡大し,現在では世界中で見られる。体長22~26cm,尾長17~22cm,体重300~400g。同属のクマネズミに似るが,尾は体長より短く,耳も小さく,前に倒したときに目まで達しない。体背面は多くは褐色,腹面と前・後脚は灰白色だが,全身黒色のもの,白色のもの,黒と白のぶちのものなど変化に富む。夜行性で泳ぎがうまく,壁や柱を登るのも巧み。性質は荒く,雑食性。集団生活によく適応し,その社会行動は複雑である。雌は年に3~5回出産し,妊娠期間は約24日,1産4~10子で,子の数は母親の年齢や社会的順位などの条件によって異なる。子の成長は早く,3週間で巣立ちする。雌は生後80日目から繁殖をはじめ,年に最高50子までを生む。寿命は飼育下で4年の記録がある。なお,本種の白化型(アルビノ)を家畜化したものはラットラッテ),あるいはダイコクネズミと呼ばれ,医学や生物学の実験動物として重要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドブネズミ」の意味・わかりやすい解説

ドブネズミ
どぶねずみ / 溝鼠
brown rat
Norway rat
[学] Rattus norvegicus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ科の動物。原産地は中国北部であるが、日本には600年以上前に渡来し、ヨーロッパには18世紀に侵入した。現在では世界中に分布する。水辺好み、用水路や水田の周辺、港湾の埋立地、ごみ捨て場の周辺、下水溝、家畜舎の周辺や家屋内などで人間と共生している。頭胴長21~27センチメートル、尾長17~23センチメートル、体重は160~450グラム。目や耳は小さく、尾は頭胴より短い。体色は、体上面は灰褐色から赤褐色まで変化に富むが、体下面と手足は灰白色。夜行性で、一般に夏は屋外、冬は屋内で生活する。雑食性で、植物の茎葉や種子、魚貝類、昆虫、ミミズ、鳥卵などのほかに残飯、台所の生ごみ、家畜飼料、穀物なども食べる。性質は荒く、飼い鳥を襲ったり、乳飲み子や寝ている人をかじった例もある。妊娠期間は約21日で、1産6~14子を産む。生まれた直後の子は体重5~6グラム、赤裸で目は閉じている。生後2週間ほどで開眼し、餌(えさ)を食べ始める。4週齢で巣立ちし、3か月齢で親と同じ大きさになり、繁殖可能になる。寿命は2~3年。実験動物として医学生物学領域で広く使われているラットは、本種の畜用品種である。

[土屋公幸]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドブネズミ」の意味・わかりやすい解説

ドブネズミ
Rattus norvegicus; Norway rat

齧歯目ネズミ科。アジア中央部,シベリア南部が原産地と考えられているが,いまやクマネズミと並んで世界的に分布している。クマネズミが人家の天井裏などにすむのに対し,本種はその名のごとく下水,台所などを中心に生活している。耳が小さく,前に倒しても眼に届かないこと,尾が体長より短いことでクマネズミと区別される。体長 25cm,尾長 20cm内外,体重 200~500gと大型で,性質も荒く,次第に他のネズミを圧迫しているといわれる。雑食性で,ときに生きた小動物 (魚,昆虫類など) を捕食する。実験動物として用いられるダイコクネズミは本種が白化し家畜化されたもので,シロネズミあるいはラット (ラッテ) とも呼ばれている。

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百科事典マイペディア 「ドブネズミ」の意味・わかりやすい解説

ドブネズミ

シチロウネズミとも。齧歯(げっし)目ネズミ科。体長22〜26cm,尾17〜22cmの大型のイエネズミ。原産地はアジア中央部だが,現在はほとんど世界中に分布。日本でも全土に多い。下水,溝などにすみ,ほとんど何でも食べる。1腹4〜10子。→ダイコクネズミ
→関連項目ネズミ(鼠)

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栄養・生化学辞典 「ドブネズミ」の解説

ドブネズミ

 ネズミの一種で,都市に多い種.

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世界大百科事典(旧版)内のドブネズミの言及

【イエネズミ(家鼠)】より

…人家およびその付近の農耕地などにすみ,人間社会に半ば寄生して生活するネズミ。ふつうドブネズミクマネズミハツカネズミの3種を指す。これに対し,山野などの自然環境下で野生生活をおくるネズミをノネズミ(野鼠)という。…

※「ドブネズミ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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