ヒトスジシマカ(読み)ひとすじしまか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒトスジシマカ」の意味・わかりやすい解説

ヒトスジシマカ
ひとすじしまか / 一条縞蚊
[学] Aedes albopictus

昆虫綱双翅(そうし)目糸角(しかく)亜目カ科に属する昆虫。ヤブカ属に属し、南日本の住家近くや昼間木陰などで吸血しにくるのはほとんど本種である。翅長3ミリメートル内外の黒色の小形種。中胸背の正中線に沿って銀白色の1縦条を有す。その後方にも細い銀白色のW字斑(はん)があり、翅根の上方部に銀白色の幅広い鱗片(りんぺん)よりなる斑紋をもつ。仙台市以南の南日本、および東洋区、オーストラリア区の熱帯から温帯にかけて広く分布する。墓地の花立て、水盤、竹の切り株、水槽空き缶、古タイヤなどの人工容器の小水域に発生し、あまり移動せずに近くに通りかかるヒトや動物を激しく襲って吸血する。昼間活動性であるが、夜間でも灯火のもとでは吸血活動がみられる。デング熱を媒介するカとして衛生上重要種である。

倉橋 弘]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「ヒトスジシマカ」の解説

ヒトスジシマカ

吸血性のカの一種。一般に「ヤブカ」と呼ばれる。分布域は、東アジア、東南アジア、オーストラリア、アフリアなど。日本では東北地方から南西諸島小笠原諸島までの地域に分布するが、温暖化により年々、生息域の拡大が確認されている。人を吸血する際に皮膚に痒みと腫れを引き起こし、デング熱や西ナイル熱などの感染症を媒介することから、国際自然保護連合(IUCN)が定める「世界の侵略的外来種ワースト100」の一つに指定されている。体長は4~5ミリ程度で、黒と白の縞模様の体色が特徴。国内における主な発生時期は5〜10月で、成虫寿命は1週間から1カ月程度。行動範囲は約50〜100メートルで、直射日光が当たらない水場の近くや湿度の高い場所を好み、主に昼間に活動する。

(2014-9-1)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒトスジシマカ」の意味・わかりやすい解説

ヒトスジシマカ
Aedes albopictus

双翅目カ科。体長 4.5mm内外。体は黒色で,胸部背面中央に鮮明な白色線があり,後方に白色のW字紋がある。各腹節基部には細い白色横帯があり,肢にも各関節部に白色帯があるほか,後肢第 5跗節は全部白色。昼間活動する最も多いヤブカの1種である。幼虫は少量のたまり水で育つ。東北地方以西の日本全土,アジア,オーストラリア区の温帯から熱帯にみられる普通種で,最近アメリカ大陸へも分布を拡大したことが知られている。これは,アジア諸国から輸入した古タイヤ内のたまり水に産卵されていたことによる。デング熱を媒介する。

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世界大百科事典(旧版)内のヒトスジシマカの言及

【ヤブカ(藪蚊)】より

…ヤブカ属はもっとも多数の種を含む群で,熱帯はもとより北極圏まで分布する。黒白の縞が特徴的なヒトスジシマカA.albopictusはなかでもふつうで,日本の東北地方以南では都市,農山村の別をとわず昼間屋外で好んで人を刺す。黄熱病の伝播をするので有名なネッタイシマカA.aegyptiもこの近縁種で,ともに熱帯地にはとくに多く,デング熱を媒介する。…

※「ヒトスジシマカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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