ヘロイン(読み)へろいん(英語表記)heroin

翻訳|heroin

精選版 日本国語大辞典 「ヘロイン」の意味・読み・例文・類語

ヘロイン

〘名〙 (Heroin) 習慣性の強い麻薬一つジアセチルモルヒネの通称。白色結晶粉末。鎮痛作用モルヒネよりも強く、かつては薬用として使われたが、現在では麻薬取締法により、製造・売買・所持・使用が禁止されている。
玄鶴山房(1927)〈芥川龍之介〉五「ヘロインなどを注射してゐた」

ヘロイン

〘名〙 ⇒ヒロイン

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デジタル大辞泉 「ヘロイン」の意味・読み・例文・類語

ヘロイン(heroin)

麻薬の一。ジアセチルモルヒネの通称。白色の粉末で、苦味がある。モルヒネより鎮痛作用が強く、副作用や習慣性も強い。法により製造・所持・売買・使用が禁止されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘロイン」の意味・わかりやすい解説

ヘロイン
へろいん
heroin

ジアセチルモルヒネの通称。麻薬。塩酸塩は白色の結晶性粉末で、水に溶けやすい。生体内で急速に加水分解され、モノアセチルモルヒネからさらにモルヒネとなって作用する。作用はモルヒネの2~5倍強く、持続時間は約2分の1である。すなわち、モルヒネよりさらに強力な鎮痛作用を有するが、依存性の発現も早く、反復投与により高度の精神的ならびに身体的依存を生じ、禁断現象がおこりやすい。ヘロインを注射すると緊張感が著しく低下し、眠気のあとに短い陶酔のときがくる。また、においに対する障害、皮膚のかゆみ、便秘、縮瞳(しゅくどう)がみられる。長期連用により禁断現象のほか、歯が抜けたり貧血をおこすなど慢性中毒症状もみられる。モルヒネの致死的な副作用は呼吸抑制で、大量投与時にみられるが、ヘロインも同様である。国際的に製造、販売、所持、使用が厳禁されている。医療用に使用することも禁止されている。用量が少なくて効くところから、密輸や不正使用される麻薬の中心的薬物となっており、世界的に取締りの対象となっている。

[幸保文治]

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改訂新版 世界大百科事典 「ヘロイン」の意味・わかりやすい解説

ヘロイン
heroine

ジアセチルモルヒネdiacetylmorphineの一般名モルヒネアセチル化によってつくられる。分子式C17H23NO5,分子量369.4,融点173℃の白色苦味結晶性粉末。鎮痛作用は,モルヒネの4~8倍強く,作用の発現もはやい。便秘,嘔吐などの作用は弱いが,陶酔作用が強いため,耐えがたい欲求を起こしやすい。すなわち,依存性がきわめて強いため,毒薬かつ麻薬として麻薬取締法によって製造,所持,使用のすべてが厳しく禁止されている。
薬物依存
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化学辞典 第2版 「ヘロイン」の解説

ヘロイン
ヘロイン
heroin

diacetylmorphine.C21H23NO5(369.41).モルヒネのジアセチル誘導体.融点173 ℃,沸点272~274 ℃(5.6 kPa).-166°(エタノール).クロロホルム,エタノールに可溶,エーテル,水に難溶.本来,その塩酸塩が商品名ヘロインであった.塩酸塩は白色の結晶.融点229~232 ℃.水,エタノールに易溶.鎮痛,呼吸抑制作用はモルヒネより強いが,依存性を起こしやすく,いわゆる麻薬中毒にかかりやすい.現在では臨床的にも用いられず,麻薬取締法により,製造,所持,使用が禁止されている.[CAS 651-27-3]

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百科事典マイペディア 「ヘロイン」の意味・わかりやすい解説

ヘロイン

化学式はC21H23O5N。モルヒネをアセチル化して得られるジアセチルモルヒネの別称。普通は塩酸塩(白色結晶性粉末)。麻薬かつ毒薬。鎮痛・麻酔作用はモルヒネにまさるが,毒性は10倍もあり,習慣性や中毒に陥りやすいため,現在では医療に用いない。中毒症状はモルヒネ中毒よりも激しく,中毒者は狂暴化する。
→関連項目向精神薬麻薬中毒

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘロイン」の意味・わかりやすい解説

ヘロイン
heroin

モルヒネと塩化アセチルから合成するので,化学名はジアセチルモルヒネ。塩酸塩は白色の針状晶または結晶性粉末で,水に易溶,アルコールに難溶,エーテルに不溶。きわめて強力な鎮痛作用をもつ薬物であるが,依存性も著しく高いので,国際連合の勧告に従って,どの国でもこれを医薬品として用いていない。しかし,ヘロインによる快楽体験を求めてこれを使用する者が多く,国際統制の目をかすめて,その地下流通機構が世界中に伸びている。ヘロインは1回でも使用すると依存性が生じ,やめられなくなる。そして,日頃より少量しか使用しない場合,「自律神経系の嵐」と呼ばれる苦痛に襲われる。生命の危険はほとんどなく,死亡例の大半は過量使用による。

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デジタル大辞泉プラス 「ヘロイン」の解説

ヘロイン

アメリカのロック・バンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲。デビューアルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」(1967年)に収録。「ローリング・ストーン」誌が選ぶ最も偉大な500曲第455位。原題《Heroin》。

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世界大百科事典(旧版)内のヘロインの言及

【麻薬】より

…薬理学的には,アヘン総アルカロイドと,これから分離して得られるモルヒネコデイン,これらの半合成体(ヘロイン,オキシコドンなど),およびモルヒネ類似の薬理作用と依存性を有する合成薬物(ペチジンなど)をさす。英語はギリシア語のnarkē(麻酔,麻痺)に由来し,これらの薬物を摂取すると,意識が混濁したり,感覚が麻痺状態になることから,麻酔様状態を起こす薬物の意でつけられた。…

【薬物犯罪】より

…58年には検挙人員が271人にまで減少して,覚醒剤犯罪はほぼ鎮静化した。 第2は,覚醒剤乱用が減少したのと相前後して顕著になってくるヘロインを中心とした麻薬乱用の増加であり,1963年には麻薬取締法違反による検挙人員が2571人に達している。この第2次薬物乱用期にも,63年の麻薬取締法改正による罰則の大幅な強化と麻薬中毒者の措置入院制度の新設,さらに不正供給組織の強力な摘発などが行われ,麻薬犯罪は64年以降急速に減少し,現在まで少数で推移している。…

※「ヘロイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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