代位弁済(読み)だいいべんさい(英語表記)surrogation

精選版 日本国語大辞典 「代位弁済」の意味・読み・例文・類語

だいい‐べんさい ダイヰ‥【代位弁済】

〘名〙 他人債務弁済した者が、その弁済により、債務者求償することができる範囲内で債権者地位を承継すること。弁済による代位

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デジタル大辞泉 「代位弁済」の意味・読み・例文・類語

だいい‐べんさい〔ダイヰ‐〕【代位弁済】

第三者債務者に代わって弁済した場合に、債権者のもっていた債権担保権などが弁済者に移転すること。

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改訂新版 世界大百科事典 「代位弁済」の意味・わかりやすい解説

代位弁済 (だいいべんさい)
surrogation

たとえば,保証人が債務者に代わって弁済したような場合には,保証人は債務者に対して弁済のため支出した費用などの償還を求めることができる。この求償権の実現を確実にするため,弁済によって,債権者が債務者に対して有するいっさいの権利が,保証人に移転するものとされている。これを,弁済による代位,または,代位弁済という(民法499条以下)。

 要するに,債務者以外の第三者が弁済するときは,第三者に債務者へ贈与する意思のないかぎり,第三者は債務者に対して求償権を取得し,これを担保するために,債権者の権利が第三者に移転するわけである。ところで,第三者といっても,保証人,物上保証人連帯債務者などのように,もし債務者が弁済をしなければ,なんらかの法的不利益をうける者(〈弁済ヲ為スニ付キ正当ノ利益ヲ有スル者〉)と,親族,友人などのように,なんらの不利益をもこうむらない者とがある。前者が弁済すれば,この者は法律上当然に債権者の権利を取得する(法定代位。500条)のに反し,後者による弁済があった場合には,債権者の同意がなければ債権者の権利に代位しない(任意代位。499条)。そして,任意代位にあっては,債権者から債務者に対し,代位によって権利が弁済者へ移転した旨を通知するか,または,債務者がこれを承諾しなければ,債務者および第三者に対し,権利の移転を対抗することができない。債務者が債権者に対し金銭債務を負担する場合には,保証人が立てられたり,物上保証人が存在するなど,法定代位をなしうる者が数人に及ぶこともまれではない。したがって,なんらの手当をも講じないときは,求償したがって代位の循環を生じ,混乱を招くおそれがある。そこで,民法501条は,法定代位をなしうる者の相互間の代位関係について,次のように定めている。(1)保証人は抵当権などの付着した不動産譲受人(第三取得者)に対して代位することができるが,そのためには,〈予メ〉抵当権などの登記に代位の付記登記をしておかねばならない。ここにいう〈予メ〉とは,保証人が弁済し(代位を生じ)たのち,第三取得者が出現するまえであると解されている。(2)第三取得者は保証人に対して代位しない。このように日本の民法は,保証人の求償権を第三取得者のそれよりも,厚く保護している。(3)第三取得者が数人存在する場合は,それぞれの不動産の価格に按分して相互に代位しうる。(4)物上保証人が数人存在するときも,(3)と同じように扱う。(5)保証人と物上保証人とが存在する場合には,頭割りによって相互に代位するが,物上保証人が数人いるときは,保証人の負担部分を除いて,不動産の価格に按分して代位する。たとえば,Aに対するBの1200万円の債務をCが保証し,かつ,DとEがそれぞれ価格800万円,200万円の不動産に抵当権を設定していた場合において,Cが1200万円を弁済したとすれば,CはDに対し640万円,Eに対し160万円につき代位することとなる(以上,501条参照)。

 なお,法定代位をなしうる者の求償権の満足を確保するため,債権者に担保保存義務が課せられている(504条)。しかし,この規定は任意規定であり,また,代位によって取得した権利を行使しないとの約束も,必ずしも無効とはいえないところから,金融機関が融資し,保証人などを立てさせる際には,保証人などが代位によって取得した権利を金融機関の承諾なしに行使しないこと,担保保存義務を負わないことなどを,約定するのが一般的である。代位弁済は,第三者が債務全額を弁済することによって生じるのが普通であるけれども,債務の一部を弁済することによっても生じる(一部代位。502条)。この場合には,代位者は〈弁済シタル価額ニ応ジテ〉債権者とともに権利を行うものとされている。たとえば,債務の半分を弁済した代位者は,この債務を担保するための抵当権を,債権者とともに行うこととなるが,代位者は単独でこの抵当権を実行することができ,債権者は不適切な時期に抵当権を実行させられるという不利益をこうむるおそれがある。そこで,多数説は,法律の文言にかかわらず,一部代位の場合には,代位者の権利は債権者の権利に劣後すると解している。外国の立法例には,このようなたてまえをとるものが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「代位弁済」の意味・わかりやすい解説

代位弁済
だいいべんさい

第三者または共同債務者(たとえば保証人や連帯債務者など)の1人が、債務者または他の共同債務者にかわって弁済をなす場合には、これらの者に対して求償権を取得することが多い。この求償権の効力を確保するために、民法は、債権者の有した権利およびこれに従たる権利(担保権など)が弁済者に移転するものとした(499条以下)。これを代位弁済、弁済者の代位、または弁済による代位という。たとえば、丙が乙の債権者甲に弁済することにより、甲の債権、担保権(たとえば抵当権や質権)などが丙に移転するなど。代位弁済には法定代位と任意代位とがある。弁済するについて正当な利益を有する者(物上保証人とか抵当不動産の第三取得者など)は、弁済によって当然債権者に代位する(500条)。これが法定代位である。その他の者は債権者の承諾を得て代位することができる(499条)。これが任意代位である。

[淡路剛久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「代位弁済」の意味・わかりやすい解説

代位弁済
だいいべんさい
surrogierte Erfüllung

第三者または共同して債務を負う者 (保証人,連帯債務者など) が弁済した場合に,債権者の所有していた債権およびこれに伴う担保権や保証債務などが求償権の範囲内で弁済者に移転することをいう。弁済者の求償権を確実にするために認められた制度である。弁済するについて正当な利益を有する者 (物上保証人,担保財産の第3取得者,保証人,連帯債務者など) は弁済によって当然に代位を生じる (法定代位,民法 500) が,その他の第三者は弁済と同時に債権者の承諾を得て代位することができる (任意代位,499条) 。なお,法定代位をなしうる者相互間の関係,債権者の担保保存義務などについては詳細な規定が設けられている (501~504条) 。

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