以往(読み)いおう

精選版 日本国語大辞典 「以往」の意味・読み・例文・類語

い‐おう ‥ワウ【以往】

〘名〙
① ある時点よりあと。以後。…よりこのかた。
※続日本紀‐延暦一〇年(791)九月二〇日「始蒙賜朝臣姓是以、和銅七年以往、三比之籍、並記朝臣
※袋草紙(1157‐59頃)上「如古今万葉集以往人者」
※一年有半(1901)〈中江兆民〉附録「是れより以往、イザ段碁と云ふに至ては」 〔春秋左伝‐僖公二八年〕
② (「已往」の誤用) ある時点・基準よりまえ。以前。
※続日本紀‐慶雲元年(704)五月甲午「免壬寅年以往大税、及出神馬郡当年調
出雲風土記(733)秋鹿「恵曇の池〈略〉養老元年より以往は、荷、自然叢れ生ひて太だ多かりき。二年より以降、自然失せて、都べて茎なし」
近代秀歌(1209)「ことばは古きを慕ひ、心は新しきを求め〈略〉寛平以往の哥にならはば、おのづからよろしき事も、などか侍らざらん」
[語誌](1)本来「以往」は将来を、「已往」は過去を意味するが、日本では混同されることが多かった。「以往」は「日本書紀」に三例あり、古訓は全て「ユクサキ」と本来の意味で用いられている。しかし、「風土記」や「続日本紀」の例にも見られるように古くから「以前」の意味で誤用された。「観智院本名義抄」には「以往」にヲツカタ・アナタ・イニシヘ、「已往」にサキの訓がある。「色葉字類抄」では「以往」をサキツカタ・古今部とし、「已往」は掲載されていない。
(2)「已往」は前項①の「続日本紀」のような適切な使用例があるが、平安鎌倉期以後の用例は少ない。前項②の例など、「以後」の意に使われた誤用も一部見えるが「文明本節用集」に「已往 イワウ又作以往」、「塵芥」に「以(左傍「已」)往(イワウ)」とあるように中世では混同していたことがうかがえる。

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デジタル大辞泉 「以往」の意味・読み・例文・類語

い‐おう〔‐ワウ〕【以往/×已往】

その時からのち。以後。以降。「平安遷都―の文化
(已往)それより前。以前。往時
「およばぬ高き姿を願ひて寛平―の歌にならはば」〈近代秀歌
[補説]本来、「以往」はある時からのち、「已往」はある時から前の意であるが、混用されている。

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普及版 字通 「以往」の読み・字形・画数・意味

【以往】いおう(わう)

以後。〔左伝、僖二十八年〕今日より以(ちか)ふの後、行くは其の力を保つこと無く、居るは其の罪を懼(おそ)るること無(なか)らむ。

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