家庭医学館 「前置胎盤/低置胎盤」の解説
ぜんちたいばんていちたいばん【前置胎盤/低置胎盤 Placenta Previa / Low Lying Placenta】
胎盤(たいばん)は、胎児(たいじ)と母体をつなぐたいせつな臓器で、妊娠初期は絨毛(じゅうもう)といわれます。妊娠12週~13週ごろから胎盤がかたちづくられ、子宮の増大とともに成長し、妊娠32週ごろに完成するといわれています。
その胎盤の一部または大部分が、子宮下部(子宮の入り口近く)に付着し、内子宮口(ないしきゅうこう)におよぶものが前置胎盤で、子宮口の近くに付着していても、内子宮口におよばないものが低置胎盤です。妊娠中期以降に、おなかはほとんど痛くないのに、突然、新鮮な大量の出血をおこします。
[原因]
胎盤の付着場所の異常が原因です。妊娠経過中に子宮口が開いたり、子宮が収縮したりすると、子宮壁と胎盤の間にずれが生じ、その部分の細い血管から出血がおこります。
[検査と診断]
妊娠経過や症状でもほぼ診断がつきますが、超音波診断装置で、胎盤の位置と内子宮口を確認することにより診断します。子宮口が開いていると、内診で胎盤を触ることもできますが、かえって出血が多くなることがあります。
[治療]
前置胎盤では、経腟分娩(けいちつぶんべん)はできません。出血の量にもよりますが、胎児が母体の外での生活が可能ならば、帝王切開術(ていおうせっかいじゅつ)を行ない、胎児を娩出(べんしゅつ)します。このとき、胎盤が付着していたところからの出血が止まらず、子宮摘出が行なわれることがあります。
胎児が、まだ母体外での生活が不可能な時期ならば、入院し安静にして、子宮収縮抑制剤と止血剤を使用し、体外生活の可能な時期まで待ちます。
もしも出血がひどく、母体が危険なようならば、輸血や緊急帝王切開を行なう必要があります。
●日常生活の注意と予防
突然出血がおこりますので、遠出は控え、子宮収縮をおこさないように過労は避け、安静に努めます。