日本大百科全書(ニッポニカ) 「吸収(生物)」の意味・わかりやすい解説
吸収(生物)
きゅうしゅう
生物学用語。細胞が細胞膜を通して外部の物質を細胞内に取り入れること。単細胞生物ではそのものが、多細胞生物では特別に大きな表面積をもつ器官の細胞(植物根毛細胞、動物消化管吸収上皮細胞)が主として吸収の働きをする。諸物質は、浸透、拡散、能動輸送のいずれかにより細胞内に入る。浸透とは細胞内外の浸透圧の差に従うもので、動植物とも水はこれにより吸収される。拡散とは細胞内外の物質の濃度に差があるときになされる。多細胞生物では、吸収した物質は次々とほかに運ばれるので細胞内外の濃度差が保たれ能率よく吸収される。アミノ酸類、ビタミン、胆汁により微粒子化した脂肪など、植物での無機塩類の吸収はこれによる。能動輸送はATPの結合エネルギーを使う反応により物質を取り入れる仕方であり、脂肪酸やアミノ酸のあるもの、ナトリウムやカリウムのイオンの吸収はこれによる。ブドウ糖の吸収にもATPが使われる。
[竹内重夫]