壊死(読み)エシ

デジタル大辞泉 「壊死」の意味・読み・例文・類語

え‐し〔ヱ‐〕【壊死】

[名](スル)生体の一部の組織や細胞が死ぬこと。また、その状態。血液が供給されなくなった部分や火傷をした部分などに生じる。ネクローシス

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精選版 日本国語大辞典 「壊死」の意味・読み・例文・類語

え‐し ヱ‥【壊死】

〘名〙 細胞や組織など、生体の一部の死、または死んだ状態。火傷(やけど)感電などの物理的原因、毒物・腐食物などの化学的原因、局所貧血・血管運動神経障害などの病理的原因がある。〔現代術語辞典(1931)〕

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百科事典マイペディア 「壊死」の意味・わかりやすい解説

壊死【えし】

生体の一部の組織・細胞が死ぬこと。病理組織学的には,凝固壊死(結核の際の乾酪化など),融解壊死または液化壊死,壊疽(えそ)などに分類される。小さい場合は,吸収されたり,周囲から肉芽組織が増殖してなおるが,大きい場合は周囲組織との境界がはっきりして,潰瘍(かいよう)として外界に排出される。
→関連項目アルコール性肝障害A-Cバイパス術炎症カポジー水痘様発疹カリエス亀頭包皮炎拒絶反応劇症溶連菌感染症脂肪吸引手術SPECT生体小腸移植鼠径ヘルニア腸捻転脳梗塞やけど

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改訂新版 世界大百科事典 「壊死」の意味・わかりやすい解説

壊死 (えし)
necrosis

生体内の一部の組織や細胞が死ぬことをいう。正常な細胞が種々の障害を被ったとき,障害の程度に応じて,さまざまな反応を示す。形のうえで現れる変化のうち,可逆性のものを変性とよぶが,壊死は,不可逆性の変化に陥ったものである。壊死をおこす原因には,栄養動脈の閉塞による血行停止(たとえば,冠動脈閉塞によっておこる心筋梗塞),毒素(ヘビ毒ガス壊疽(えそ)菌,ジフテリア菌などによる細胞融解),ウイルス感染による細胞崩壊,化学物質(青酸塩など),電離放射線(癌の放射線療法などでおこる),高温や低温(火傷,凍傷)などが挙げられる。細胞壊死メカニズムには不明の点が多いが,膜系のATPの喪失,カルシウムイオンの細胞内流入が密に関係している。壊死に陥った細胞ではタンパク質凝固がはじまり,硬化し,細胞核が崩壊し,消失する(これを凝固壊死coagulation necrosisという)。またリソソーム加水分解酵素が活性化され自己融解がおこる。最終的には,壊死組織は,生体のマクロファージによって処理吸収され,繊維組織によって置換される。脳組織では,大きな領域が壊死に陥ると,器質化(壊死した細胞が繊維組織に置換されること)が遅いため壊死組織は融解し脳軟化の状態となる(これを融解壊死liquefaction necrosisという)。壊死に陥った細胞は腫大し,染色性が変化したり,横紋筋細胞では横紋が消失したりする。結核症肉芽腫にみられる乾酪壊死は凝固壊死の一種であるが,菌体成分の脂質のためクリーム状になるとされている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「壊死」の意味・わかりやすい解説

壊死
えし

生体内におこる局所的な組織の死をいう。生体の組織、細胞は血液循環や神経の作用によって生きているわけであるが、これらに障害がおきた場合や、高熱、低温、薬物、毒物、圧迫電流、放射線、分泌物の誤流といった、細胞を直接障害死滅させる因子によって、壊死の状態が生ずる。壊死に陥った組織では、細胞全体が崩れ、細胞の境界が不明となり、ついには消失する。さらには、核がばらばらになったり、濃縮したり、壊れたりというような種々の様相も呈する。壊死には、死滅した組織が不溶性の物質になる凝固壊死(心臓、脾臓(ひぞう)、腎臓(じんぞう)などにみられる梗塞(こうそく)、結核結節の乾酪(かんらく)化巣)と、軟化し液化に陥る液化壊死(脳軟化巣)とがある。壊死をおこした組織に対して、生体は異物と認識し、吸収、被包などの種々の処理反応を示す。

[渡辺 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「壊死」の意味・わかりやすい解説

壊死
えし
necrosis

全身の死(death)に対して,生体の一局所の細胞または組織の死のこと。壊死を招く原因として,局所血行障害による酸素や栄養の欠乏,細菌やウイルスなどの有害作用,毒物の作用,高温,機械作用,放射線,高圧荷電などの物理的作用,神経性障害などがあげられる。その変化の経過から,(1) 凝固壊死,(2) 液化または融解壊死,(3) 壊疽または脱疽に分けられる。

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栄養・生化学辞典 「壊死」の解説

壊死

 一部の細胞や組織が死ぬこと.疾病,物理的・化学的傷害,血流の傷害などによって起こる.生体自身のプログラムによって起こる細胞死(アポトーシス)と区別される.

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生活習慣病用語辞典 「壊死」の解説

壊死

生体内の一部の組織や細胞が虚血 (血液の流れが停滞し酸素や栄養素が不足すること)などにより死んでしまうこと、またはその状態をいいます。

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化学辞典 第2版 「壊死」の解説

壊死
エシ
necrosis

[同義異語]ネクローシス

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