精選版 日本国語大辞典 「夜半の寝覚」の意味・読み・例文・類語
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平安後期の物語。現存本の題名は《寝覚》または《夜の寝覚》。作者は菅原孝標女(たかすえのむすめ)と伝えるが,確かでない。現存本は5巻または3巻に分かつが,中間および巻尾(続編)に欠巻がある。ほかに鎌倉期に続編を切り捨て改作縮小したとおもわれる中村本5巻(旧蔵者中村秋香)があり,中間の欠巻部分の筋立ての大体は補われる。源氏の太政大臣の中君が関白左大臣の息の中納言と相思の関係にあって2児を生みながら,外的ないろいろな事情に妨げられ,〈夜の寝覚絶ゆるよなく〉て数奇の生涯を送るという物語。《源氏物語》宇治十帖の影響が著しい。登場人物の心理描写は克明で,《源氏物語》以後の物語の中では抜群である。今は欠けている続編では,男女両主人公の息子まさこと女三宮の恋愛事件を中心に,中君に恋を仕掛ける冷泉院の話がからむが,結局まさこの恋愛成就,女主人公の死で終わる物語があったことが,残存資料からうかがえる。
執筆者:松尾 聡
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