大岡信(読み)オオオカマコト

デジタル大辞泉 「大岡信」の意味・読み・例文・類語

おおおか‐まこと〔おほをか‐〕【大岡信】

[1931~2017]詩人評論家静岡の生まれ。長男芥川賞作家の大岡あきら。詩集「記憶と現在」「故郷の水へのメッセージ」、評論紀貫之」「詩人・菅原道真」、随筆折々のうた」など。平成7年(1995)芸術院恩賜賞。平成9年(1997)文化功労者、平成15年(2003)文化勲章芸術院会員

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大岡信」の意味・わかりやすい解説

大岡信
おおおかまこと
(1931―2017)

詩人、評論家。静岡県生まれ。父は歌人大岡博(1907―1981)。東京大学国文科卒業。少年期から詩や短歌に親しんだ。東大在学中に日野啓三佐野洋らと『現代文学』を創刊。卒業後は同人誌『櫂(かい)』に参加し、また『シュルレアリスム研究会』をつくる。読売新聞記者生活10年、その間、第一詩集『記憶と現在』(1956)で清新な知性と感性の躍動をみせ、以後旺盛(おうせい)な詩作と評論活動を展開、もっとも代表的な現代詩人の一人に数えられる。詩集に、『透視図法――夏のための』(1972)、『水府 みえないまち』(1981)、『草府にて』(1984)、『ぬばたまの夜、天の掃除器せまってくる』(1987)、『故郷の水へのメッセージ』(1989。現代詩花椿(はなつばき)賞)、『世紀変り目にしやがみこんで』(2001)ほか。選詩集に現代詩文庫『大岡信詩集』『続・大岡信詩集』『続続・大岡信詩集』。評論集に、『超現実と抒情(じょじょう)』(1965)、『蕩児(とうじ)の家系』(1969。藤村記念歴程賞)、『紀貫之(きのつらゆき)』(1971。読売文学賞)、『詩人・菅原道真(すがわらのみちざね)』(1989。芸術選奨文部大臣賞)など。1979年(昭和54)1月より『朝日新聞』に「日本詩歌の常識」づくりを意図してコラム「折々のうた」を連載、好評を得る。単行本化された『折々のうた』(1980)は菊池寛賞を受賞した。連詩の試みや海外の詩人との活発な交流など幅広い活動でも知られている。日本芸術院会員。1994年(平成6)芸術院恩賜賞。1997年文化功労者、2003年文化勲章受章。2004年6月、フランスレジオン・ドヌール勲章オフィシエ章を受章。長男の大岡玲(あきら)(1958― )は芥川(あくたがわ)賞作家。

[吉田文憲]

『『現代詩文庫24 大岡信詩集』(1970・思潮社)』『『現代詩文庫131 続・大岡信詩集』(1995・思潮社)』『『現代詩文庫153 続続・大岡信詩集』(1998・思潮社)』『『蕩児の家系――日本現代詩の歩み』新装版(1975・思潮社)』『『大岡信著作集』全15巻(1977~1978・青土社)』『『詩集 透視図法――夏のための』(1977・書肆山田)』『『大岡信詩集 水府 みえないまち』(1981・思潮社)』『『大岡信詩集 草府にて』(1984・思潮社)』『『ぬばたまの夜、天の掃除器せまってくる』(1987・岩波書店)』『『詩集 故郷の水へのメッセージ』(1989・花神社)』『『詩人・菅原道真――うつしの美学』(1989・岩波書店)』『『折々のうた』1~10・総索引(1992・岩波書店)』『『世紀の変り目にしやがみこんで』(2001・岩波書店)』『『紀貫之』(ちくま文庫)』『『萩原朔太郎』(ちくま学芸文庫)』『『現代詩人論』(講談社文芸文庫)』『『「忙中閑」を生きる』(角川文庫)』『大岡信・谷川俊太郎著『対談 現代詩入門』(中公文庫)』『思潮社編・刊『現代詩読本 大岡信』(1992)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大岡信」の意味・わかりやすい解説

大岡信
おおおかまこと

[生]1931.2.16. 静岡,三島
[没]2017.4.5. 静岡,三島
詩人。父は歌人の大岡博。旧制静岡県立沼津中学校(現静岡県立沼津東高等学校)を経て旧制第一高等学校,東京大学文学部国文科を卒業。学生時代からその批評眼と詩才が注目される。読売新聞社外報部記者を経て,明治大学東京芸術大学教授を歴任。1989~93年日本ペンクラブ会長(→国際ペンクラブ),日本現代詩人会会長を 2期務めた。従来の文学者にはみられない,日本古典の理解とヨーロッパ文学や芸術作品,美術への広範囲な見識をもつ。快活な人柄で,文学のみならず,芸術分野の人々にも愛された。詩作品には『記憶と現在』『水府 みえないまち』『草府にて』『春 少女に』(1979無限賞),『故郷の水へのメッセージ』(1989現代詩花椿賞),『地上楽園の午後』(1993詩歌文学館賞)などがあり,平明なことばで批評性と抒情性を表現した。また,複数の詩人による共同制作である「連詩」を生み出し,日本にかぎらず世界へと輪を広げた功績は大きい。1979年より 28年間『折々のうた』を朝日新聞に連載したほか(1980菊池寛賞),評論集の『蕩児の家系』(1969歴程賞),『紀貫之』(1972読売文学賞),『うたげと孤心』『詩人・菅原道真』(1990芸術選奨文部大臣賞)など次々と発表した。1995年恩賜賞・日本芸術院賞,1996年マケドニア(現北マケドニア)のストルガ詩祭で金冠賞,1997年朝日賞,2002年国際交流基金賞など受賞多数。1997年に文化功労者,2003年文化勲章,2004年フランスのレジオン・ドヌール勲章オフィシエ。

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百科事典マイペディア 「大岡信」の意味・わかりやすい解説

大岡信【おおおかまこと】

詩人,評論家。静岡県三島生れ。東大国文科卒。読売新聞記者,明治大学教授,東京芸術大学教授を務める。東大卒業後,谷川俊太郎らの《櫂(かい)》に加わり,1959年,吉岡実,清岡卓行らと《鰐》を結成。詩と批評を発表した。1956年の処女詩集《記憶と現在》以降,詩集には《春 少女に》(1978年。無限賞),《水府》《地上楽園の午後》などがある。評論活動も多彩で,《蕩児の家系》(1969年。歴程賞),《紀貫之》(1971年。読売文学賞),《詩人・菅原道真――うつしの美学》(1989年。芸術選奨文部大臣賞)など。また《朝日新聞》連載(1979年―2007年)の《折々のうた》は広く読者の関心を得た。1994年度の恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。《大岡信著作集》全15巻。大岡玲は長男。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大岡信」の解説

大岡信 おおおか-まこと

1931- 昭和後期-平成時代の詩人,評論家。
昭和6年2月16日生まれ。大岡博の長男。大岡玲の父。はじめ読売新聞に勤務し,昭和29年谷川俊太郎らの詩誌「櫂(かい)」に参加。45年ごろから連句(連詩)をはじめる。47年「紀貫之(きの-つらゆき)」で読売文学賞,54年から「朝日新聞」に連載をはじめた「折々のうた」で55年菊池寛賞。明大教授,東京芸大教授。平成7年芸術院恩賜賞。9年文化功労者。15年文化勲章。日本ペンクラブ会長もつとめた。静岡県出身。東大卒。

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