大江音人(読み)おおえのおとんど

精選版 日本国語大辞典 「大江音人」の意味・読み・例文・類語

おおえ‐の‐おとんど【大江音人】

平安前期の漢学者本主の子。はじめ大枝氏。従三位参議に至る。「貞観格式」「日本文徳天皇実録」の編纂に携わった。著作に「江音人集」「弘帝範」(ともに佚)がある。江相公(ごうしょうこう)と称せられる。弘仁二~元慶元年(八一一‐八七七

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「大江音人」の意味・読み・例文・類語

おおえ‐の‐おとんど〔おほえ‐〕【大江音人】

[811~877]平安前期の学者。儒家としての大江家の基礎を築いた。師の菅原是善らと「貞観格式」を編纂へんさん。「弘帝範」「群籍要覧」を撰進せんしん家集「江音人集」。江相公。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「大江音人」の意味・わかりやすい解説

大江音人 (おおえのおとんど)
生没年:811-877(弘仁2-元慶1)

平安前期の文人官僚。江相公(ごうしようこう)と呼ばれる。大江本主の子。阿保親王の子とする説もある。大学寮に学び,対策に及第後,少内記,東宮学士などを経て,左少弁となり,以後弁官を歴任する。864年(貞観6)参議。清和天皇に《史記》を進講,877年南淵年名が行った尚歯会に加わる。従三位左衛門督に至る。史書に〈通儒〉と評されるように音人の本領詩人であるよりむしろ学者であった。貞観格式の撰定の中心となり,《文徳天皇実録》の編纂にも参与した。また帝王学の書《弘帝範》と類書《群籍要覧》を編纂(ただし現存しない)。現存する詩文は少なく,《日観集》および《扶桑集》の詩人であったが,音人の作と確定できる詩は残らない。文章は〈貞観格式序〉など数編がある。家集《江音人集》も伝わらない。文人社会における大江氏の地位を確立し,江家の始祖と称された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

朝日日本歴史人物事典 「大江音人」の解説

大江音人

没年:元慶1.11.3(877.12.11)
生年:弘仁2(811)
平安前期の公卿,学者。「おとひと」とも。備中権介大枝本主の長男(『三代実録』)。したがって阿保親王の孫に当たり,『尊卑分脈』は母は阿保の侍女,中臣氏とするが,年齢の点で疑問がある。菅原清公に師事し文章生,東宮学士などを経て貞観6(864)年参議,同8年10月,海(江に通ずる)のように尽きることなく栄えよとの意をこめて大枝から大江に改姓,江家の祖となり,江相公と称された。政体,故事に詳しく,疑義あるごとに朝廷から諮問を受けたという。また清和天皇に『史記』を進講したように学者としても知られ,「通儒」と称された。『貞観格式』の上表文と式序をつくり,『文徳実録』の編纂にも参画した。『弘帝範』『群籍要覧』なども編纂したが,家集『江音人集』とともに散佚して伝わらない。承和の変(842)に連座して尾張(愛知県)に配流され2年後帰京したとの説もあるが(『公卿補任』),正史では確認できない。

(村井康彦)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大江音人」の意味・わかりやすい解説

大江音人
おおえのおとんど
(811―877)

平安前期の学者。平城(へいぜい)天皇の曽孫(そうそん)と称する。菅原清公(すがわらのきよきみ)に学び、東宮学士、左大弁を経て参議になる。詩人よりも学者として政策や故実に明るく、検非違使(けびいし)別当のときに長岡の獄所を改革した話は名高い。天皇のために『弘帝範』3巻を撰(えら)び、古書を抄出分類して『群籍要覧』40巻を編したが現存しない。また菅原是善(これよし)らと『貞観格式(じょうがんきゃくしき)』を編纂(へんさん)した。詩文集『江音人集』は散逸したが、儒家として大江家を確立した。仏道を深く信仰し信義に厚い性格はのちに往生伝に収められる原因となった。

[大曽根章介]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大江音人」の解説

大江音人 おおえの-おとんど

811-877 平安時代前期の公卿(くぎょう),学者。
弘仁(こうにん)2年生まれ。阿保親王の王子。大枝本主の養子。菅原清公にまなび,文章生,東宮学士となる。貞観(じょうがん)6年(864)参議。左大弁,勘解由長官などをかね,従三位にすすんだ。「貞観格式(きゃくしき)」の撰定にくわわり,「弘帝範」「群籍要覧」などをあらわした。江家(ごうけ)の祖で,江相公と称される。元慶(がんぎょう)元年11月3日死去。67歳。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大江音人」の意味・わかりやすい解説

大江音人
おおえのおとんど

[生]弘仁2(811)?
[没]元慶1(877).11.3. 京都
平安時代前期の学者。菅原清公に学び,参議,従三位にいたる。大江家家学の祖。『貞観格式』『文徳実録』の編纂に関与し,自著に『群籍要覧』『弘帝範』,歌集に『江音人集』などがあったが,いずれも伝存しない。 (→大江氏 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の大江音人の言及

【大江氏】より

…一方,平城天皇皇子阿保親王の後裔とする説がある。すなわち《尊卑分脈》《大江氏系図》などには,大江音人(おとんど)の父本主を阿保親王の子とする。また音人を直接阿保親王の子とする《続本朝往生伝》などもある。…

※「大江音人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android