大脳皮質基底核変性症(読み)ダイノウヒシツキテイカクヘンセイショウ

デジタル大辞泉 「大脳皮質基底核変性症」の意味・読み・例文・類語

だいのうひしつ‐きていかく‐へんせいしょう〔ダイナウヒシツ‐ヘンセイシヤウ〕【大脳皮質基底核変性症】

パーキンソン症状筋肉固縮動作緩慢・歩行障害など)と大脳皮質症状失行失語など)が同時に起こる病気。中年期以降に発症し、緩やかに進行する。一方の腕が思うように動かせない、動きが遅くなるなどの症状に続いて、同じ側の脚、反対側の腕・脚にも運動障害が起こる。前頭葉頭頂葉萎縮が見られるが発症の機序は不明。パーキンソン病関連疾患として厚生労働省特定疾患難病)に指定されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大脳皮質基底核変性症」の意味・わかりやすい解説

大脳皮質基底核変性症
だいのうひしつきていかくへんせいしょう
corticobasal degeneration

タウオパチー、つまり過剰にリン酸化されたタウ(タンパク質)が大脳、とくにその前方に蓄積し、さまざまな認知機能障害と運動障害をきたす中枢神経疾患である。CBDと略称される。最初の報告では、進行性の運動機能の悪化、左右差のある筋のこわばり(筋強剛)と失行を中心に、四肢ジストニア(筋肉の緊張異常)やミオクローヌス(不随意の収縮)を伴う疾患とされた。また「他人の手徴候」(自分の意思に反して一方の手が勝手に動き、患者にはその手が他人の手のように感じられる症状)は、本症の特徴として有名である。大脳の前頭葉・頭頂葉が左右非対称に侵され、基底核と黒質も障害されることでさまざまな症状が現れる。

 当初、本症では、認知機能は比較的よく保たれると考えられていた。しかし、認知症が前景にたつ(症状のなかでも認知機能の障害が目だつ)例や、初期には運動障害はなく認知機能障害だけの例も多いことが知られるようになった。また近年の研究により、他の疾患と誤りかねない臨床症状がみられ、鑑別が困難なケースがさまざまにあることが明らかになってきた。そこで、大脳皮質基底核変性症という名称は病理学的診断名として用いられ、類似の症状を示すさまざまな疾患を総称した臨床診断病名としては「大脳皮質基底核変性症候群」とよばれるようになっている。

 現時点では、大脳皮質基底核変性症に対する特異的な生物学的マーカーや脳画像所見はないため、本症を生前に確実に診断することはむずかしい。また治療としては、個々の症状に対症療法が行われるが、現時点では根本的な治療法は確立されていない。

 なお、本症は国が定める難病(指定難病)に指定されている。

[朝田 隆 2023年9月20日]

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