失行症(読み)しっこうしょう

精選版 日本国語大辞典 「失行症」の意味・読み・例文・類語

しっこう‐しょう シッカウシャウ【失行症】

〘名〙 日常経験によって習得した運動が、意識障害もなく運動機能の障害もないのに大脳の一定部位の損傷によって行なえなくなった状態行為不能症。
埋葬(1971)〈立原正秋〉四「まるで失行症の病人のようにあっちにぶつかりこっちにぶつかりして歩いていた」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「失行症」の意味・わかりやすい解説

失行症
しっこうしょう

大脳の特定部位の損傷によって、麻痺(まひ)などの運動障害がないのに、いろいろな目的のある行為や動作ができなくなる状態をいい、肢節運動失行、観念運動失行観念失行構成失行着衣失行の諸型がある。肢節運動失行は、手指顔面下肢など身体の一部に失行が現れ、麻痺への移行型とみなされる。観念運動失行では、影絵キツネのまねをさせるなど単純な動作が、自発的にはできるのに命令されるとできなくなる。観念失行では、たばこに火をつけるなど複雑な動作をさせると、火のついていないマッチをたばこに近づけるなど動作の時間的順序混乱がみられる。構成失行では、図形を描いたり積み木を組み立てたりすることが、着衣失行では、衣服を着ることができなくなる。

[海老原進一郎]

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家庭医学館 「失行症」の解説

しっこうしょう【失行症】

 ネクタイがうまく結べない、更衣がうまくできないなど、手、足の運動障害とは関係なく、ふだん何の苦労もなくできている動作がうまくできなくなった状態を、失行症といいます。動作の手順がわからなくなったり、ふだん使っている道具、日用品が上手に使えなくなってしまいます。
 このような行為・動作の障害の多くは、病初期にみられることがありますが、時間経過とともに、その多くは消失していきます。

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世界大百科事典(旧版)内の失行症の言及

【失行】より

…運動麻痺,失調,不随意運動などの運動障害,知能障害,および意識障害などはなく,なすべき行為を十分に理解し,運動に際し使用する物品もよく認知しているにもかかわらず,なすべき行為を遂行しえない症状を失行または失行症という。この症状は大脳の部分的破壊によって生ずる。…

※「失行症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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