精選版 日本国語大辞典 「存在と無」の意味・読み・例文・類語
そんざいとむ【存在と無】
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フランスの哲学者・作家サルトルの哲学論文。1943年刊。「現象学的存在論の試み」という副題がつけられており、フッサールとハイデッガーの影響を受けながら、著者独自の無神論的実存主義を確立した画期的な大著である。彼はまず、デカルトの「コギト」(われ思う)を純化して、これをまったく自発的な非反省的意識としてとらえるところから出発し、フッサールに倣って、意識の志向性(あらゆる意識は何かの意識である)を強調しつつ、自由の根拠である意識と、その意識を制約する事物の偶然性との相克、一つの意識と他者の意識との相克などを詳細に論じ、ダイナミックな哲学世界をつくりあげることに成功した。厳密を極めた論理を展開しながらも、現実の人間存在の具体性をもあわせ備えており、後年のサルトルの思想と行動の基盤を据えた大作である。彼の「アンガージュマン」の構造についても、周到な哲学的位置づけがなされている。
[鈴木道彦]
『松浪信三郎訳『存在と無』1・2・3(1955~60・人文書院)』▽『竹内芳郎著『サルトル哲学序説』(1972・筑摩書房)』
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