小脳失調症(読み)しょうのうしっちょうしょう(英語表記)cerebellar ataxia

改訂新版 世界大百科事典 「小脳失調症」の意味・わかりやすい解説

小脳失調症 (しょうのうしっちょうしょう)
cerebellar ataxia

小脳およびそれと密接な連絡をもつ脳幹・脊髄の障害により運動を円滑に遂行できない状態。起立時に体が不安定で動揺するため足を広く開く。歩行も手足の動きがばらばらで協調がとれず,開脚で酔ったときのように千鳥足となる(酩酊歩行)。また物を取ろうとしてもさっと手が届かず,ぎくしゃくと振れたり(運動解体),行きすぎたりする(測定障害)。手の回内・回外などの反復運動は非常にぎごちなく時間がかかる(変換運動障害)。書字に際しては,ペンで紙をつき破ったり,字がしだいに大きくなったりする。会話はぶっきらぼうで唐突となり(爆発性,断綴性言語),音声を出すのに努力を要する。原因は感染症,腫瘍,血管障害,中毒(アルコール,抗痙攣(けいれん)剤などによる)などさまざまであるが,遺伝性あるいは孤発性で進行性の病態もあり,脊髄小脳変性症と呼ばれている。
運動失調症
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の小脳失調症の言及

【運動失調症】より

…上肢の深部知覚に障害がある場合には,上肢にも失調症状が出現し,書字が乱れるようになったり,ネクタイを結んだりボタンをかけたりすることがうまくできなくなることもある。
[小脳性失調症cerebellar ataxia]
 小脳をおかすきわめて多数の病気でみられるものであり,やはり起立や歩行における平衡障害が生ずるのと同時に,上肢の運動障害,言語障害など,広い範囲にわたる運動障害を生じやすい。起立歩行の障害は,脊髄癆性失調症の場合とは異なって,眼を閉じても平衡障害が強くなることはない。…

【運動障害】より

…機能的には,起立歩行時の身体の平衡や随意運動での個々の骨格筋の活動の時間的・空間的調整を行っている。したがって小脳系の病変では,筋肉そのものには影響を及ぼさないが,平衡障害や四肢の随意運動に際してのぎごちなさなど,小脳失調症を呈する。
[大脳基底核系の運動障害]
 大脳基底核は線条体(尾状核と被殻),淡蒼球,視床下核,黒質などからなっており,これが関与した調節系も小脳系と同様,最終共通経路を直接的にではなく,前2者すなわち錐体路系と脳幹網様体系の二つの調節系を介して間接的に運動を制御している。…

※「小脳失調症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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