尿道狭窄(読み)にょうどうきょうさく(英語表記)Urethral stricture

精選版 日本国語大辞典 「尿道狭窄」の意味・読み・例文・類語

にょうどう‐きょうさく ネウダウケフサク【尿道狭窄】

〘名〙 尿道がせばまって尿の排出をさまたげる病気。〔内科撰要(1792)〕

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六訂版 家庭医学大全科 「尿道狭窄」の解説

尿道狭窄
にょうどうきょうさく
Urethral stricture
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か

 尿道狭窄は文字どおり尿道が狭くなり、それによって排尿障害を生じるものです。尿道狭窄には先天性の尿道狭窄と後天性の尿道狭窄とがあります。後天性のものは尿道組織障害後の瘢痕化(はんこんか)によるものです。

原因は何か

①先天性尿道狭窄

 先天性尿道狭窄は発生学的にみると、内胚葉(ないはいよう)に由来する部分外胚葉(がいはいよう)に由来する部分の接合部に発生するもので、両者の間にあった尿生殖膜(にょうせいしょくまく)は胎生7週で破れて開口しますが、この膜が残ると先天性尿道狭窄になると考えられています。

②後天性尿道狭窄

 外傷と感染が原因になりますが、外傷によるものが多い傾向にあります。

・外傷性尿道狭窄

 骨盤骨折会陰部(えいんぶ)打撲などで外力が加わり、尿道そのものに断裂あるいは裂傷を生じると、その治癒過程で組織の瘢痕を生じて狭窄ができます。

 通常は経尿道的手術・尿道ブジーのような、尿道内操作により尿道粘膜の傷を生じるものが最も多く、単なるカテーテル挿入によっても尿道狭窄を生じることがあります。このような場合では、操作後数年たってから偶然発見されることもあります。

・炎症性尿道狭窄

 尿道炎にかかったあと、尿道壁が瘢痕性の収縮を起こすために発生します。原因としては淋病(りんびょう)結核(けっかく)が多いのですが、現在では圧倒的に淋病によるものが多くなっています。手術などの理由で尿道カテーテル留置の既往のある場合にも、狭窄がみられることがあります。

症状の現れ方

 先天性の場合、狭窄の程度によってさまざまな症状を示します。尿道の抵抗が増すために尿流が乱流あるいは逆流となり、尿道から膀胱への細菌の侵入を許し、膀胱炎が起こりやすくなります。尿道の通過障害のため、膀胱尿管逆流症が起こったり、膀胱排尿筋が過敏になって頻尿(ひんにょう)を伴う夜尿や昼間遺尿(いにょう)(尿をもらす)の症状を示します。

 後天性の場合には、成人が多いため排尿困難を訴える場合が多いようです。尿路感染症を併発したり、前立腺炎(ぜんりつせんえん)精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)を起こすこともあります。そのほか、狭窄部の尿道周囲膿瘍(のうよう)や尿道(ろう)の形成、尿流の通過障害による膀胱尿管逆流症や水尿管(尿管の拡張)がみられることもあります。

検査と診断

 症状と病歴などから尿道狭窄が疑われた場合、尿道造影、尿道内視鏡で診断します。先天性で女児の場合、球頭ブジーでひっかかりがあれば診断できます。

 先天性尿道狭窄では、外尿道括約筋(かつやくきん)の遠位部に狭窄が認められます。後天性の場合では、淋病では尿道振子部(しんしぶ)に多く、外傷性の場合は尿道膜様部(まくようぶ)に狭窄が多くみられます。

治療の方法

 手術療法では内視鏡を用いて狭窄部を切開したり、尿道切開刀を用いて切開します。外傷性尿道狭窄では経会陰的に尿道を露出して瘢痕部を切除し、同部を再建します。

 拡張術といって尿道ブジー、バルーンを用いて狭窄部を拡張する場合もあります。

宮北 英司

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家庭医学館 「尿道狭窄」の解説

にょうどうきょうさく【尿道狭窄 Urethral Stricture】

[どんな病気か]
 膀胱(ぼうこう)から体外への尿の通り道である尿道が細くなり、尿が出にくかったり、全部出るのに時間がかかったりする状態で、男性におこります。生まれつきのものと、尿道の外傷や尿道炎(にょうどうえん)(「尿道炎」)の後遺症によるものとがあります。外傷や尿道炎が治癒(ちゆ)した後、長い期間ののちに尿道がいっそう細くなり、初めて症状に気づく場合があります。
 淋菌性尿道炎(りんきんせいにょうどうえん)は治療が進歩し、これが原因の尿道狭窄は少なくなっていますが、自動車事故などによる外傷は多くなりました。外傷直後に血尿(けつにょう)があったら、その後の尿道狭窄に注意します。
[症状]
 尿の出方が細くなり、排尿(はいにょう)にかかる時間が長くなり、いきまないと尿が全部出ず、膀胱内に尿が残る結果、排尿間隔が短くなり、排尿回数が多くなります。
 膀胱内に残尿(ざんにょう)があると、尿路感染症(にょうろかんせんしょう)、尿路結石(にょうろけっせき)、尿路憩室(にょうろけいしつ)、腫瘍(しゅよう)がおこりやすくなります。
 女性に比べて尿道が長い男性では、排尿困難がよくみられますが、そのおもな原因は前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)と尿道狭窄です。排尿困難を治療しないと尿路全体に尿の停滞による障害がおこるので、適切な診断と治療が必要です。
[検査と診断]
 検尿などの一般検査のほか、前立腺の病気と区別するため、肛門(こうもん)から指で前立腺を触れる触診、超音波で前立腺をみる検査なども必要です。
 尿道がせばまっている位置や程度は、尿道造影(造影剤を使ったX線撮影)で知ることができます。しかし、尿道狭窄は尿道だけの病気ではなく、腎臓(じんぞう)、尿管、膀胱などの全尿路に影響がおよんでいる可能性があるので、尿に造影剤が出るようにして撮影する排泄性腎盂造影(はいせつせいじんうぞうえい)などで全尿路の状態をみる必要があります。カテーテルの挿入や内視鏡検査が必要な場合もあります。
[治療]
 泌尿器科(ひにょうきか)には、尿道狭窄の治療のために直径が3分の1mmずつ太くなる金属、ゴム、合成樹脂などさまざまな材質のさまざまな形の管が用意されており、細い管から順次太い管を尿道に挿入して、尿道を拡張することができます。特殊な内視鏡による切開術、手術による形成術が必要となる場合もあります。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「尿道狭窄」の意味・わかりやすい解説

尿道狭窄
にょうどうきょうさく

尿道の内径がなんらかの原因で細くなった状態をいう。先天性と後天性に大別されるが、大部分は後天性であり、男性に多い。後天性尿道狭窄の原因としては、外傷性と炎症性が代表的である。外傷性として骨盤骨折後に併発する場合は後部尿道に、また騎乗型損傷によって会陰(えいん)部を直接打撲した場合には前部尿道に狭窄を発生しやすい。さらに、外尿道口から器械を挿入して前立腺(せん)などの手術をしたあとにも、狭窄が発生することがある。炎症性のものとしては淋菌(りんきん)性尿道炎(淋疾)後や尿道結核の治癒過程で狭窄を生じることがあるが、近年その頻度は減少し、外傷性尿道狭窄が増加している。いずれも尿が出にくく、尿に勢いがなく尿線が細かったり何本かに分かれるほか、残尿感や頻尿などの症状を呈し、しばしば膀胱(ぼうこう)炎を合併する。また、長期間放置すると腎(じん)機能も低下する。

 診断は尿道撮影により行われる。治療は、軽度の狭窄では金属ブジー(消息子)による尿道拡張が行われるが、しばしば再発することがある。高度の狭窄やブジー挿入不能例、繰り返しブジーが必要な症例、尿道瘻(ろう)や尿道周囲に膿瘍(のうよう)を合併した症例などに対しては、手術が必要となる。

 なお、先天性尿道狭窄は尿道のどの部分にも発生しうるが、とくに外尿道口付近に多くみられ、これに対しては外尿道口切開術が行われる。

[河田幸道]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尿道狭窄」の意味・わかりやすい解説

尿道狭窄
にょうどうきょうさく
urethral stricture

尿道壁の一部が瘢痕化して,尿道が狭く,かつ拡張しにくくなった状態をいう。おもな症状は排尿障害で,原因としては,尿道の外傷,淋菌性炎症,結核などがある。いったん狭窄が起ると完治がむずかしく,膀胱炎や腎盂炎を繰返すことがある。ほかに,先天的な原因による広義の尿道狭窄もあり,小児にみられる。女性にみられる尿道狭窄は,単純な尿道炎によるもので,症状も頻尿や排尿後不快感のことが多い。

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