引渡し(読み)ヒキワタシ

デジタル大辞泉 「引渡し」の意味・読み・例文・類語

ひき‐わたし【引(き)渡し】

拘束した人や占有した物を他に引き渡すこと。また、売買契約の成立した商品などを売り手から買い手に引き渡すこと。
幕などを張り渡すこと。
「かりそめの仮り屋などいへど、風すくまじく―などしたるに」〈更級
遊女を客に引き合わせること。
「かか衆が―の酒事ささごとすぎて」〈浮・一代男・七〉

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改訂新版 世界大百科事典 「引渡し」の意味・わかりやすい解説

引渡し (ひきわたし)

法律用語としては,まず民法178条が,動産に関する物権の譲渡には対抗要件として〈引渡し〉が必要であるとしており,そこでいう引渡しは占有の移転を意味し,現物を実際に引き渡す場合(現実の引渡し)のほか,簡易(の)引渡し(譲受人またはその代理人が現に占有物を所持している場合に当事者意思表示のみによってなされるもの。182条2項),占有改定(自己の占有物を爾後は本人(譲受人)のために占有する旨の意思表示をして本人に間接占有を得させるもの。183条),指図による移転(代理人によって占有をしている者が,その代理人に対して爾後第三者のために占有するよう命じ第三者がこれを承諾するもの。184条)をも含む(〈占有〉の項参照)。しかし他方,民法182条1項等でいう〈引渡し〉は〈現実の引渡し〉のみをさす。
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百科事典マイペディア 「引渡し」の意味・わかりやすい解説

引渡し【ひきわたし】

民法上,占有を移転すること。単に現実の引渡し(物の上の現実の支配の移転)のみならず,占有改定,簡易の引渡し,指図による引渡しをも含む。引渡しは動産物権譲渡の対抗要件である(民法178条)。
→関連項目公示の原則

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「引渡し」の意味・わかりやすい解説

引渡し
ひきわたし
traditio; Übertragung

法律用語。当事者の合意に基づく占有の移転。引渡しとしては,現実の引渡し (民法 182条1項) だけでなく,観念的な引渡しを認めている。簡易の引渡し,たとえば賃貸人賃貸物所有権賃借人に譲渡して引渡すには,賃貸人がいったん賃貸物を取戻したうえ,あらためて現実の引渡しをするような手間を省いて,引渡しを受ける者が現実に占有しているときは,単に当事者の意思表示だけで引渡しがあったものと認められること (同条2項) ,および占有改定 (183条) ,指図による引渡し (184条) がそれである。

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