弾薬(読み)だんやく(英語表記)ammunition

翻訳|ammunition

精選版 日本国語大辞典 「弾薬」の意味・読み・例文・類語

だん‐やく【弾薬】

〘名〙 弾丸とそれを発射するための火薬。弾丸と火薬の総称。たまぐすり。
※兵士懐中便覧(1868)〈福沢諭吉訳〉「或は弾薬武器を棄て或は職分を忘れて敵の物を掠奪したる者」

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デジタル大辞泉 「弾薬」の意味・読み・例文・類語

だん‐やく【弾薬】

弾丸とそれを発射するための火薬の総称。「弾薬庫」
[類語]火薬硝薬爆薬

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改訂新版 世界大百科事典 「弾薬」の意味・わかりやすい解説

弾薬 (だんやく)
ammunition

狭義には拳銃,小銃,大砲などの火器や火砲から発射されるものをいう。広義にはこのほか,爆弾,ミサイル,ロケット弾など軍事的に敵に向かって投射または発射されるあらゆる飛翔体をいい,さらにすべての爆発物,爆発装置,火工品をさすこともある。以下ではおもに最も狭義の場合について述べる。

 一般に,口径20mm未満の火器に使用される弾薬を小火器弾薬,20mm以上の口径のものに使用される弾薬を火砲弾薬という。いずれも火薬の力で発射され,人員の殺傷,車両や艦艇や資・器材の破壊,航空機の撃墜などに用いる。小火器弾薬は,拳銃,小銃,機関銃,散弾銃などに用いられ,通常,弾丸,発射薬,雷管付き黄銅製の薬莢(やつきよう)で一体化されている(図1)。実戦用としては,普通弾,徹甲弾,焼夷弾,曳光弾(えいこうだん),およびこれらを組み合わせた弾薬(たとえば曳光徹甲焼夷弾)があり,訓練用には,空包,擬製弾,狭窄弾(きようさくだん)などがある。このほか,口径20mm以上であるが擲弾(てきだん)を小火器弾薬に含めることがある。火砲弾薬は,カノン(加農)砲,榴弾(りゆうだん)砲,迫撃砲無反動砲などから発射され,通常,尖頭長円筒形の弾丸,炸薬(さくやく)を起爆する信管,発射薬を点火する火管,およびこれらを一体化する黄銅または鉄製の薬莢からなる(図2)が,弾種により信管や炸薬,あるいは薬莢を欠くものもある。これら構成部品の組みつけ,発射薬量の加減,装塡要領などによって,固定弾,半固定弾,分離装塡弾などに分けられる。実戦用には,榴弾,対戦車榴弾,粘着榴弾,徹甲弾,発煙弾,照明弾などがあり,訓練用には,空包,演習弾,擬製弾などがある。

弾薬のコラム・用語解説

【おもな弾薬】

曳光弾
弾丸に曳光剤を充塡し,弾丸の飛行軌跡を肉眼で見られるようにした弾薬または弾丸。小火器用の曳光弾は,弾丸の飛行経路または弾着点の観測用,信号用および可燃物の点火用に用いられ,火砲用としてはおもに戦車用の弾薬,とりわけ徹甲弾などの底部に曳光剤が装着され,弾着点の観測用に用いられる。
演習弾
射撃訓練に用いられる弾薬で,弾丸には通常,不活性の充塡物または弾着標示用の薬剤が充塡される。外形は一般に榴弾に似ており,重量もだいたい等しくしてある。
擬製弾
実物とおおむね同じ形に作られ,装塡・抽筒動作などの訓練目的に用いる完全無火薬の弾薬または弾丸。それを使用する火器の検査に用いることもある。
狭窄弾
小火器の射撃訓練に用いる弾薬で,経済的で軽易に訓練できる利点があるが,射距離が短い,反動が小さいなどの点が普通弾と異なる。
空包
発射音または発射音と煙を出す目的をもった弾薬。雷管をつけた薬莢に爆発力の弱い火薬を充塡し,弾丸のかわりに紙栓などで蓋がしてある。演習用,信号用,礼砲用などに使用される。
散弾
弾丸が多数の比較的小さい鉛玉の集合体で構成されたもの。現在では警備用,狩猟用などに用いる。散弾銃弾は他の小銃弾と異なり。命中効率は高いが,その有効射程は一般に短い。
焼夷弾
焼夷剤を充塡した弾薬。主として可燃性の目標を攻撃する場合に使用される。
照明弾
時限信管の作用によって所望の弾道高で落下傘付き照明筒を放出し,その照明剤の燃焼によって目標地域の照明,観測などを行う弾薬。
対戦車榴弾
指向性炸薬によるモンロー効果によって装甲板に穿孔する弾薬。モンロー効果とは,指向性爆薬の一端に円錐形または半球形の空洞あるいはV字形の溝を設け,これを目標に向けて他端から起爆すると爆薬の爆発によって高温高速の微粒子からなる噴流が形成されることをいい,この噴流により装甲に穴があけられる。
擲弾
比較的短距離の人員,資材などを攻撃するために炸薬または化学剤を充塡した弾薬。擲弾には手榴弾(てりゆうだん)と小銃擲弾(擲弾銃)の2種類がある。
徹甲弾
弾丸の運動エネルギーによって装甲などを侵徹しようとするもので,運動エネルギーが大きいほど,つまり質量および速度が大きいほど,効果は大である。
粘着榴弾
ホプキンソン効果により装甲板を破壊する弾薬。ホプキンソン効果とは,装甲板が爆発衝撃を受けると装甲板の内部に応力波が生ずるが,この波頭圧力が動的限界張力よりも十分高くなると装甲板の背面に層状剥離を生ずることをいう。粘着榴弾は薄肉製弾殻内に多量の爆薬を塡実し,弾着時に装甲板に爆薬が密着した状態で起爆し,装甲内部に剥離破片を生じさせるものである。
発煙弾
発煙剤などの化学剤を充塡した弾薬または弾丸。煙幕の展張および信号などに用いられる。発煙弾は,その発煙剤の散布方式によって炸裂式と弾底放出式の二つに分類される。発煙弾の弾殻は,弾肉が薄く榴弾と同程度である。
普通弾
一般用途に使用される小火器弾薬または弾丸。通常,弾心には鉛合金,焼入れしない鋼,またはこれらを組み合わせたものを使用し,これに被甲をかぶせてある。人員殺傷用,堅固でない目標用,訓練用などに使用される。
榴弾
爆薬を充塡した弾薬または弾丸で,各口径の火砲に用いられ,人員および軽装甲材に対し爆風および破片による殺傷,破壊効果をもっていて,使用量は他の弾種に比較して大である。
執筆者:

ヨーロッパでは14世紀前半ころには黒色火薬が製造されるようになり,15世紀に入ってから,金属溶解法などの進歩に伴って青銅製の一体砲身が生まれ,錬鉄を鍛造した弾丸,次いで鋳鉄製の弾丸が生まれて石の弾丸にとってかわった。黒色火薬を充塡した爆裂弾の着想が生まれたのもこの時代である。砲弾内の炸薬に点火する技術は1763年,〈砲兵の父〉といわれたフランスのグリボーバル将軍Jean Baptiste Gribeauvalが弾薬,火砲などを含む砲兵器材全般の互換性の実現を企てる標準化計画を発表したとき,その一環として開発された。すなわち,発射薬を薬包に詰め,これと砲弾とを組み合わせる方式で,これにより発射速度(単位時間当りの発射弾数)の増大,不発の防止などの進歩が図られた。19世紀に入ると砲身への施条技術が進行し,弾丸も細長い空気抵抗の少ない形状となり,火薬ガスの漏れを防いで薬室内での装薬の燃焼を規正し,かつ弾丸に旋動を付与するための銅帯を弾体尾部に植えこむ技術が開発された。また,弾体内に殺傷・破壊用物質を充塡する技術と弾丸を適時に破裂させる信管の開発により,榴弾や榴散弾が登場した。

 19世紀後半から20世紀初頭にかけて真鍮製の薬莢が出現し,これによって105mm級以下の小口径の火砲は,可塑性の緊塞具を閉鎖機に装着しなくても,ガス漏れを防ぐことができるようになり,また装薬を詰めた薬莢を弾丸の尾部に接続して一体の完全弾薬とすることによって,弾丸装塡および発射速度を増大できるようになった。もう一つの飛躍的進歩は,1880年にフランスのビエイユPaul Vieilleが発明した綿火薬が発射薬として用いはじめられたことである。黒煙が出ない利点があり,無煙火薬と呼ばれることになった。また1885年フランスのテュルパンEugene Turpinがメリニットmélinite(ピクリン酸,黄色火薬)を発明したが,これは砲弾や水雷に充塡する炸薬として,黒色火薬に比較して格段に優れたものである。

 小火器弾薬については,小銃が初めて戦争に実用されたのは16世紀初頭であったが,18世紀に入っても使用弾薬は鉛製の丸玉であった。1820年ころの雷管の発明に伴い,これを用いて撃発する小銃の開発,腔綫(こうせん)の発明,長弾による元込め装塡方式の採用などにより,小銃は大躍進した。

 第1次大戦に至って弾薬に関する基本的技術は,火砲とともにほぼ完成の域に達した。航空機の出現に伴って同大戦前から高射砲用の曳火信管付榴弾が生まれたが,20~40mm級機関砲用の信管付榴弾の出現は同大戦後になってからである。さらに特筆すべきものとして毒ガスなどを砲弾に詰めて使用したことがあげられよう(化学兵器)。

 第2次大戦以後における砲弾の進歩はめざましく,特に対戦車および対空用において顕著なものがあった。対戦車用としては,砲弾直径の何倍もの厚さの装甲を貫徹するモンロー効果やホプキンソン効果を利用する対戦車榴弾や粘着榴弾が実用化し,運動エネルギーを利用する徹甲弾も出現した(図3)。対空用では瞬発および時限の両機能をもつ複動信管,さらには自ら電波を発射してその反射波をとらえ,目標付近で起爆する近接信管が出現した。近接信管は,現在では野戦砲や迫撃砲用弾薬に利用され,曳火射撃にその威力を発揮している。

 最近,野戦砲用弾薬に関しては,補助推進弾,弾底抵抗減少弾などにより射程が増大し,かつレーザー,赤外線誘導方式の導入による終末誘導砲弾の開発により精度が画期的に向上し,点目標射撃をも可能にしつつある。

 また,最近では多重装甲,特殊装甲などの出現により装甲防護技術が向上,このため火薬エネルギー弾の効果が減少し,相対的に運動エネルギー弾の価値を高める傾向にある。減口径有翼弾による弾長の増大や比重の大きい弾心材料の改良により断面重量を増大し,侵徹効果を大きくする方向にある。
火薬 →軍用爆薬 →信管
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