役方(読み)やくかた

百科事典マイペディア 「役方」の意味・わかりやすい解説

役方【やくかた】

江戸幕府職制うち行政担当の職。寺社奉行町奉行勘定(かんじょう)奉行などがこれに相当。武官に当たる番方に対する語で,文官の意。
→関連項目組頭旗本

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「役方」の意味・わかりやすい解説

役方
やくかた

江戸幕府の職制区分。武官である番方に対して、行政・経済関係の役職を総称して役方といった。寺社奉行(ぶぎょう)、町奉行、勘定奉行のいわゆる三奉行をはじめとして役職の数は多い。江戸初期には幕府の機構体系化されておらず、番方との区別はあいまいな点が多く、格式上も下位に置かれた。その後、18世紀にかけて役職の整備が進展し、また政治・経済が複雑化されるとともに重要性も増し、実質的に番方より優位にたつようになった。18世紀初頭には番方とは独自の役方の就職・昇進の体系も確立したとみられる。

[佐々悦久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「役方」の意味・わかりやすい解説

役方
やくかた

江戸時代,幕府,諸藩での軍事組織を番方と呼んだのに対し,行政・家政組織を一般にこう呼んだ。幕府では御用人寺社奉行町奉行勘定奉行など,政治・経済関係の重職はもちろん,その属僚たちをさす言葉としても用いられた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「役方」の解説

役方
やくかた

江戸時代の幕府・藩の職制のうち,財政司法・行政などの実務に従事する役職。幕府の場合,寺社・町・勘定の三奉行や遠国奉行,郡代・代官などが代表的なものである。初期の臨戦体制下では,警備系の番方が重視されたが,平和な時期になると役方の重要性が増し,積極的な人材登用がはかられた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「役方」の解説

役方
やくかた

江戸幕府の職制による区分
大番・書院番などの武官である番方に対する語で,三奉行などの行政・経済関係の実務に従事する役職をいう。初め番方が武士の誇りとされたが,江戸中期以降文治政治とともに政治・経済が複雑化するにつれて役方が優位にたった。

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世界大百科事典(旧版)内の役方の言及

【組頭】より


[武家]
 与頭とも書く。江戸幕府の番方(武官),役方(文官)の長官である頭,奉行,支配などの配下にあって,次官として各組の頭に任じたものをいう。幕府の番方の一つ大番には大番頭の配下に大番組頭,役方の一つ勘定所には勘定奉行の配下に勘定組頭,無役(本来は番方に所属)のものを集めた小普請組には小普請支配の配下に小普請組頭がいるといったぐあいである。…

【旗本】より

… 旗本の幕府勤仕は有職を原則としたが無役の者も少なくない。有職の旗本は武事系の番方(ばんかた)と文事系の役方に分かれ(番方・役方),はじめは番方が重視されたが,泰平のためしだいに役方が重視されるにいたった。番方は江戸城の警備および将軍に随行警衛することを任務とし,これに大番書院番小性組番,新番小十人組の5番があった。…

【番方・役方】より

…江戸時代の幕府・諸藩の職制上の区分。武官の系統を番方,文官の系統を役方という。番方は常備軍として殿中・城門の守衛,城番,主君出行時の供奉などを職務とした。…

※「役方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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