急性死/突然死(ポックリ病)――心臓死を中心として(読み)きゅうせいしとつぜんしぽっくりびょうしんぞうしをちゅうしんとして

家庭医学館 の解説

きゅうせいしとつぜんしぽっくりびょうしんぞうしをちゅうしんとして【急性死/突然死(ポックリ病)――心臓死を中心として】

心筋梗塞(しんきんこうそく)が突然死原因のトップ
 突然死とは文字どおり、今まで元気であった人が予期せず急に具合が悪くなり、死亡に至ることをさしていますが、医学的には何らかの症状が出現して1時間以内に脳死に至ることと定義されています。経過時間は、2時間とする報告もあり、また以前の報告では、24時間を採用したものも多くみられます。
 人口の0.1~0.2%におこるとされ、生後6か月以内と45歳以上の2つのピークがあります。全死亡者のなかでは突然死の占める割合は10~20%で、そのうち心臓死が80~90%、そのなかでは心筋梗塞によるものが50~80%を占めていることからみて、心筋梗塞になりやすい男性と高齢者で突然死数が増えます。しかし、死亡者のなかで突然死をした人の割合は若い人のほうが高く、社会問題となる背景ともなっています。
 心筋梗塞による死亡者の25%は1回目の発症で突然死をするといわれ、突然死をおこす病気としての心筋梗塞症の恐ろしさを示しています。心筋梗塞で生き残ったとしても、心筋梗塞が広範囲におよんで心臓の機能が大きく低下していたり、不整脈が多い場合にも突然死が多いことがわかっています。
◎突然死に有効な治療法はない
 心筋梗塞以外の心臓病で突然死をおこすものとしては、心肥大をおこす病気として高血圧性心臓病(こうけつあつせいしんぞうびょう)、肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)をはじめとする弁膜症、先天性心疾患(せんてんせいしんしっかん)のなかで手術不可能な肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)をともなうもの(アイゼンメンジャー症候群)などがあります。
 肥大型心筋症は、原因不明で心臓の筋肉が肥大してくる病気で、遺伝することが多く、若い人の突然死の代表です。大動脈弁狭窄症は手術を受けることで治る病気となりました。
 これらの心臓病による突然死は、手術で原因疾患が治せる場合を除き、有効な治療法がないのが現状です。塩酸アミオダロンという強力な抗不整脈薬が登場しましたが、突然死の原因となる不整脈を抑えるのに有効な場合もあるものの、副作用が強いのが欠点です。致死的不整脈を生じたときに、心臓に電気ショックをかけられるように小型の器械を埋め込む最新の治療(ICD)も試みられています。
◎いろいろとある突然死の原因
 あらゆる心臓病が進行すると突然死をおこすほかに、最近は心筋炎も突然死の原因として注目されています。また心電図のQTという部位が延長してくるQT延長症候群も突然死をおこすことで有名です。
 心臓病にともなう突然死の多くは、致死的な不整脈である心室細動(しんしつさいどう)によっておこります。検査上はまったく心臓に異常はないのに、突然に心室細動をおこす特発性心室細動という病気もあり、東南アジアでみられる原因不明の突然死もこの1つと考えられています。
 新生児にみられる乳幼児突然死症候群(にゅうようじとつぜんししょうこうぐん)は、全新生児の0.1~0.3%におこり、生後6か月までに多く、心臓死よりは脳の呼吸調節の異常ではないかと考えられています。
 突然死の原因と考えられているものには、ほかにも多くのものがありますが、肺が障害されて肺活量が小さくなることや、精神的ストレス、特殊な音なども原因となります。開発途上国では、村八分にされた人に突然死がみられるとの報告もあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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