手打(読み)ちょうち

精選版 日本国語大辞典 「手打」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐ち てうち【手打】

※俳諧・鸚鵡集(1658)一「春風にちゃうちならふやわらびの手〈宗通妻〉」

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改訂新版 世界大百科事典 「手打」の意味・わかりやすい解説

手打 (てうち)

契約や和解の成立したしるしとして双方がそろって拍手はくしゆ)すること。手締めともいう。手打の風習は,神を礼拝したり神を招いて神前で誓約する形式から出たものと考えられる。馬喰(ばくろう)や〈酉(とり)の市〉での商取引のほか,抗争の和解にも手打が行われる。やくざの社会では,今日でも,紛争処理のための手打式は仲裁人をたてた重々しい儀式となっている。民俗社会では村寄合婚礼で手打の風がみられ,婚約成立の際に仲人(なこうど)が嫁方に届ける酒を〈手打酒〉と呼ぶ所もある。また上棟式で棟梁を中心に大工が手締めを行う風習は広くみられるが,京都府北桑田郡美山町では倉を建て壁を塗る日に大きな長方形の餅に餡(あん)などをつけた〈手打餅〉を村中に配ったといい,この日の手伝いをテウチと呼んだという。一方,岩手県下閉伊郡普代村では船の上で手打(拍手)するのはよくないという言伝えがあった。なお,歌舞伎の顔見世の際に祝儀贔屓(ひいき)連が土間で役者にほめ言葉を述べ,一斉に手を打つことや,下稽古読みが終わり,各人が配役の割当てに異存のない意を表すために手拍子を打つこともテウチという。現在の宴会などにおける一本締め,三本締めや,会合における拍手もこの手打の伝統をひくものといえよう。
柏手(かしわで) →拍手
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世界大百科事典(旧版)内の手打の言及

【拍手】より

…折口信夫によると,平安期の大饗(おおあえ)と名付けられた饗宴には正客が正席につくと,列座の衆が拍手するのが本式で,宴(うたげ)とは〈うちあげ(拍ち上げ)〉で礼拝を意味したが,時代を経るにしたがって饗宴全体をあらわし,ついには酒宴をさすようになり,これが饗宴の主要部を構成すると考えられるようになったという。柏手(かしわで)手打【藤井 正雄】。…

※「手打」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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