支払不能支払停止(読み)しはらいふのうしはらいていし

改訂新版 世界大百科事典 「支払不能支払停止」の意味・わかりやすい解説

支払不能・支払停止 (しはらいふのうしはらいていし)

支払不能とは,債務者の弁済能力がなくなったために,弁済期の到来した債務を一般的かつ継続的に弁済できなくなった状態をいう。資産と負債の計数上の比較だけでなく,債務者の信用・技能などあらゆる要素を総合して判断される客観的な状態である点で,資産負債の計数上の比較に基づく債務超過と異なる。支払停止とは,支払不能であることを外部的に表示する行動をいう。債務者の主観的行為であって,支払拒絶の意思表示のように明示的なもの,夜逃げのように黙示的なもの,手形不渡りによる銀行取引停止処分などの態様がある。

 破産法の目的が総債権者への公平な弁済と債務者の更生であること,一般破産主義を採ることから,現行法は支払不能を一般的破産原因とした(破産法126条1項)。支払停止は支払不能を推定させるものとされている(2項)が,これは,支払停止の背後には通常支払不能があるという経験則と破産申立権者の破産原因立証の便宜とを考慮した結果である。支払停止は債務者みずから資産状態の悪化を示す行為であるので,否認権行使(72~74条)や相殺禁止(104条2,4号)の基準ともされている(相殺権)。
破産
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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