散在神経系(読み)さんざいしんけいけい

精選版 日本国語大辞典 「散在神経系」の意味・読み・例文・類語

さんざい‐しんけいけい【散在神経系】

〘名〙 動物の最も下等な神経系神経細胞体表に散在し、その突起は互いに連結して網目状を呈する。ヒドライソギンチャクなどの刺胞動物にみられる。脳や神経節をつくらない点で集中神経系と異なる。散漫神経系

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「散在神経系」の意味・読み・例文・類語

さんざい‐しんけいけい【散在神経系】

神経細胞が体全体に散在し網目状に連絡している神経系。神経節をもたない未分化の神経系で、腔腸動物ヒドライソギンチャクにみられる。→集中神経系

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「散在神経系」の意味・わかりやすい解説

散在神経系
さんざいしんけいけい

腔腸(こうちょう)動物がもつ神経系で、散漫神経系ともいい、集中神経系の対語である。ヒドラやクラゲなどの腔腸動物の神経細胞は突起を出し、その突起が互いに連絡して神経網をつくっている。この神経網は全身に散在的に広がる。口や咽頭(いんとう)の部分に神経細胞や突起がやや集中しているが、その分布密度にはさほど大きな濃淡の差はない。ヒドラなどの神経網では、興奮の伝わり方に方向性がなく、いずれの方向にも伝わっていく。これらの動物では脳とか脊髄(せきずい)といった神経機能をコントロールする中枢はどこにもないので、個体に加わった刺激に対する反応はきわめて単純で、複雑な行動の発現は不可能である。

[新井康允]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「散在神経系」の意味・わかりやすい解説

散在神経系【さんざいしんけいけい】

散漫神経系とも。中枢と末梢区別がなく,全身に一様に分布する神経系。集中神経系の対。腔腸動物,特にヒドラなどの刺胞動物に特有のもので,表層細胞層に神経細胞が疎に分布して互いに突起を出して連結し,網目構造を形づくっている。1点を刺激されてもあらゆる方向に興奮が伝達されること,刺激が弱い場合は途中で減衰して興奮が局部的になること,伝導速度が小さいことなどが特徴。→神経系

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の散在神経系の言及

【神経系】より

…【水野 昇】
【神経系の系統発生】

[無脊椎動物の神経系]
 進化の初期の段階で出そろった無脊椎動物の神経細胞には,突起の少ない細胞と分泌性細胞が多い。無脊椎動物の神経系はいずれも外胚葉に由来するが,散在神経系と集中神経系の二つの様式がある。ヒドラのような腔腸動物では散在神経系で,神経細胞がその突起で互いに連結し,口を中心に体の全域に網状に分布する。…

※「散在神経系」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android