最中(読み)もなか

精選版 日本国語大辞典 「最中」の意味・読み・例文・類語

も‐なか【最中】

〘名〙
事物または事柄の中心。まんなか。中央。
※公忠集(986‐999)「いけみづのもなかに出でて遊ぶいをの数さへ見ゆる秋の夜の月」
② 物事のもっとも盛んなこと。また、そのとき。まっさかり。さいちゅう。〔匠材集(1597)〕
※少年の悲哀(1902)〈国木田独歩〉「ころは夏の最中(モナカ)、月影鮮(さ)やかなる夜であった」
③ 陰暦十五夜。また、その夜の月。〔伊京集(室町)〕
和菓子の一つ。餠米で薄く丸く焼いた皮を二片合わせ、その中に餡(あん)を詰めたもの。形が円形で「最中の月」に似ているところからいう。今日では種々の形のものがある。最中饅頭。
※人情本・祝井風呂時雨傘(1838)七回「ハイ、此の箱が最中(モナカ)
⑤ 近世、大道で行なわれたいかさま博打(ばくち)
※歌舞伎・梅雨小袖昔八丈(髪結新三)(1873)二幕「仕事と知りつつ十両でも彼奴に金を取られるのは、最中(モナカ)でとられると同じことだ」

さい‐ちゅう【最中】

[1] 〘名〙
① まんなか。中央。中間。〔元和本下学集(1617)〕 〔月離暦指〕
② ものごとが最もたけなわであるとき。まっさかり。もなか。さなか。
※平家(13C前)一「八幡に百人の僧をこめて、信読の大般若を七日よませられける最中に」
③ 最も勢いの盛んなもの。その仲間のなかで、はぶりのよい者。
源平盛衰記(14C前)一四「王城一の美男也、心剛に弓箭取ってよし、渡辺党の最中(サイチウ)也」
[2] 〘副〙 盛んに。しきりに。
※四座役者目録(1646‐53)上「観世方大鼓之次第〈略〉観世祐賢の代に、最中被打」

さ‐なか【最中】

〘名〙 もっともたけなわである時。最高潮である時。さいちゅう。
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後「如何に怏々(くよくよ)してゐる那裏(サナカ)でも、決して学校を休むだことが無い」

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デジタル大辞泉 「最中」の意味・読み・例文・類語

さい‐ちゅう【最中】

[名]
動作・状態などが、いちばん盛んな状態にあるとき。進行中のとき。まっさかり。さなか。「今が暑い最中だ」「食事の最中
まんなか。
いちばん盛りの状態にある人。
「渡辺党の―なり」〈盛衰記・一四〉
[副]しきりに。
「三皿目のシチウを今三人で―食っている」〈虚子俳諧師
[類語]最中さなかたけなわ真っ只中真っ最中真っ盛りあいだ

さ‐なか【最中】

たけなわであるとき。さいちゅう。「夏の最中」「忙しい最中
[類語]最中さいちゅうたけなわ真っ只中真っ最中真っ盛り

も‐なか【最中】

真っ盛り。さいちゅう。
「ころは夏の―、月影さやかなる夜であった」〈独歩・少年の悲哀〉
中央。まんなか。
「水の面に照る月波を数ふれば今宵ぞ秋の―なりける」〈拾遺・秋〉
《形を「最中の月」に模したところから》和菓子の一。糯米もちごめの粉をこね、薄くのばして焼いた皮を2枚合わせ、中にあんを詰めたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「最中」の意味・わかりやすい解説

最中
もなか

和菓子の一種。最中の皮を煎餅種(せんべいだね)というように、元来干菓子であったが、1805年(文化2)に江戸・吉原(よしわら)の竹村伊勢大掾(いせだいじょう)の職人が、煎餅種の半端(はんぱ)ものに使い残しの餡(あん)を入れて売り出したのがあたり、最中は餡を入れるのが普通となって半生(なま)菓子になった。最中の考案された経緯から、これを雑菓子とみて引菓子に用いるのを嫌う向きもあるが、現在は優れた最中が多くつくられている。最中の皮は糯米(もちごめ)の粉を水でこねて蒸し、薄くのしたものを丸く切って焼く。ぱりっとした皮の風味が身上(しんじょう)である。餡は小豆(あずき)の粒餡、こし餡のほか、うぐいす餡、白餡、ゆず餡、ごま餡、黒糖餡、ひき茶餡、栗(くり)餡もある。最中の姿は、『拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)』に「池の面(も)に照る月なみをかぞふれば こよひぞ秋の最中なりける」(源順(したごう))とある陰暦十五夜の満月が天心にかかった形で、円月形が本来だが、いまは形、文様など種々になった。有名な最中には東京の塩瀬の袖(そで)ヶ浦、空也(くうや)最中、喜作(きさく)最中、秋色(しゅうしき)最中、石川県金沢の加賀さま、栃木県足利(あしかが)の古印(こいん)最中、三重県松阪の老伴(おいのとも)、富山県高岡の江出乃月(えでのつき)などがある。

[沢 史生]

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改訂新版 世界大百科事典 「最中」の意味・わかりやすい解説

最中 (もなか)

和菓子の一種。もち米の粉を水でこねて蒸し,餅について薄くのばし,型抜きして焼いたもなか種(だね)と呼ぶ皮を2枚用いて,その中にあんをはさんだもの。風来山人平賀源内の《根無草後編》(1769)に〈最中の月は竹村に仕出す〉とあるように,江戸新吉原の廓(くるわ)内にあった菓子屋竹村伊勢の創製になるもので,円形であったため十五夜の月になぞらえて,初めは〈最中の月〉と呼んだ。やがて〈最中〉とのみ通称されるようになったが,当初のものの実態は必ずしも明らかでなく,あんころ餅だとする説もある。しかし,《菓子話船橋(かしわふなばし)》(1841)に〈最中の月のやうなる餅の焼種〉とあるところから,あんころ餅でなかったことは断定しうるが,あるいは種に砂糖液を塗っただけで,あんなしのものであった可能性もなしとしない。その後〈最中饅頭(まんじゆう)〉という名称があらわれるが,この段階になるとあんを入れていたことは明らかである。このもなかという菓子はたいへん好まれたようで,どこの菓子屋でも作るというまでに普及し,皮の形や色,あるいはあんにさまざまなくふうをこらしたものが作られている。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「最中」の解説

もなか【最中】

和菓子の一種。もち米の粉を蒸して薄くのばし、型を用いてさまざまな形に焼いた2枚の皮を合わせ、中にあんを詰めたもの。◇江戸時代後期、新吉原仲の町にあった和菓子店「竹村伊勢」で考案されたものとされる。「最中」は「真ん中」「真っ最中(さいちゅう)」の意で、十五夜をいうこともあった。菓子は当初円形で、銘は仲秋の名月に見立てて「最中の月」。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「最中」の意味・わかりやすい解説

最中
もなか

和菓子の一種。もち米粒でつくった薄い皮の間にあんをはさんだもの。江戸時代に考案されたといわれ,当時は最中月と称していた。最中皮のつくり方はもち米粉を水で練り,蒸してから薄く伸ばし焼型にはさんで焼く。この皮にあんを入れ,もう1枚の最中皮の合せ目を濡れ布で湿らして合せる。

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百科事典マイペディア 「最中」の意味・わかりやすい解説

最中【もなか】

和菓子の一種。もち米粉をこねて蒸し,薄く伸ばして型をとり,焼いて皮(最中だね)とし,2枚で餡(あん)を包む。皮の形は円,角,菊,梅鉢など各種。もとは円形で最中の月と称し,干菓子の一種であったという。

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普及版 字通 「最中」の読み・字形・画数・意味

【最中】さいちゆう

真ん中。

字通「最」の項目を見る

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