有頂天(読み)うちょうてん

精選版 日本国語大辞典 「有頂天」の意味・読み・例文・類語

うちょう‐てん ウチャウ‥【有頂天】

〘名〙
① (bhavāgra の訳語) 仏語。欲界色界無色界三界のうち、存在(有)の世界の最上(頂)である色究竟天(阿迦尼吒天(あかにだてん))をさす。また、一説には無色界の最上である非想、非非想処天とする。うちょう。
※三教指帰(797頃)下「如是衆類、上絡有頂、下籠無間獄
曾我物語(南北朝頃)一二「上はうちゃうてんを限り、下は阿鼻を際として」
② (形動) (①にのぼりつめる意から) 我を忘れること。夢中になり、他をかえりみないさま。
※俳諧・毛吹草(1638)六「月を見る人の心や有頂(ウチャウ)天〈正依〉」
滑稽本浮世風呂(1809‐13)三「有頂天(ウテウテン)になって夜鍋仕事も手につくもんぢゃアねへ」

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デジタル大辞泉 「有頂天」の意味・読み・例文・類語

うちょう‐てん〔ウチヤウ‐〕【有頂天】

[名]《〈梵〉akaniṣṭhaまたはbhavāgraの訳》
色界しきかいの中で最も高い天である色究竟天しきくきょうてんのこと。形ある世界の頂。阿迦尼吒天あかにだてん
色界の上にある無色界の中で、最上天である非想非非想天ひそうひひそうてんのこと。
[名・形動]
得意の絶頂であること。また、そのさま。大得意。「試験に合格して有頂天になる」
物事に熱中して夢中になること。また、そのさま。
「忠兵衛気も―」〈浄・冥途の飛脚
[類語]歓喜狂喜驚喜欣喜雀躍きんきじゃくやく随喜得意好い気・絶頂感・優越感意気揚揚鬼の首を取ったよう誇らか揚揚得得鼻高高誇らしい鼻が高い肩身が広いときしたり顔自慢顔自慢たらしい会心昂然こうぜん胸を張る得意満面得意顔勝ち誇る肩を張る肩で風を切るこれ見よがし意気が揚がるうぬぼれるのぼせるひけらかすあごをなでるどや顔所得ところえ手柄顔おご肩肘かたひじ張る天狗になる見得を切る大見得を切る高ぶる誇示見せつける満足満悦充足飽満自足自得自己満足本望満ち足りる心行く堪能満喫安住安んずる甘んずる十分十全嬉しい楽しい面白い喜ばしい喜び愉快痛快結構喜悦納得慊焉けんえん三平思わしい上機嫌ご機嫌おんの字足りる足る舞い上がる満たす気を良くする溜飲りゅういんを下げる言うことなし気に意に適ううきうきうはうはわくわくいそいそぞくぞく

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故事成語を知る辞典 「有頂天」の解説

有頂天

得意の絶頂であること。

[使用例] 音楽関心を持つ者同士の、率直な共感気分しゅうはなってき、それはほとんど私を有頂天にさせたといっていいだろう[奥泉光シューマンの指|2010]

[由来] 仏教で、しきかいの中で最も高い天であるしききょうてんのこと。また、色界の上にあるしきかいの中で、最上天であるそう非非ひひそうてんのこと。厳密にどういう場所を指すかはともかく、「法華経ほうどくほん」に「下はごくに至り、上は有頂天に至る」とあるように、この世界で最も高いところだと認識されていました。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「有頂天」の意味・わかりやすい解説

有頂天
うちょうてん

サンスクリット語ではババーグラbhavāgraといい、仏教世界観仏界を除く最高位の世界。三界(さんがい)(欲界、色界(しきかい)、無色界)の最高位にある非想非非想処天(ひそうひひそうしょてん)のこと。三界は有(う)ともよばれるので、その頂上にあるこの天が有頂天とよばれ、修行を究めた人がこの天に昇ることができるとされる。鳩摩羅什(くまらじゅう)訳『法華経(ほけきょう)』序品(じょぼん)では、三界中の色界の最高位である色究竟天(しきくきょうてん)が有頂天とされている。なお、極度の喜びを表す「有頂天になる」という表現はこの仏教語に由来し、この場合は天は天神の意味であるので、「天なる」と表現される。

[定方 晟]

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デジタル大辞泉プラス 「有頂天」の解説

有頂天

日本のポピュラー音楽。歌は男性J-POPユニット、B'z。2015年発売。作詞:稲葉浩志、作曲:松本孝弘。同年、日本テレビ系で放送されたドラマ「学校のカイダン」の主題歌。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有頂天」の意味・わかりやすい解説

有頂天
うちょうてん
Akaniṣṭha

仏教的世界観から生存形態を分類したなかで,形ある世界の最頂に位する神。色究竟天 (しきくきょうてん) ともいう。転じて「得意の絶頂」の意に用いる。

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世界大百科事典(旧版)内の有頂天の言及

【宇宙】より

…欲界,色界,無色界を合わせて三界と呼ぶ。〈有頂天〉は〈有の世界の最高の場所〉の意であるが,これを非想非非想処のこととする伝承と,色究竟天のこととする伝承とがある。三界を超越したところに仏界がある。…

【三界】より

五蘊(ごうん)(色,受,想,行,識)のうち色をもたず,受,想,行,識という精神的要素のみからなる生物,欲望と物質のいずれをも超克した生物のすむ領域で,禅定の深さによって4段階に分けられる。この4段階の最高処〈非想非非想処天〉を〈有頂(うちよう)天〉という。漢訳法華経では色界の最高処〈色究竟天〉が〈有頂天〉とされている。…

※「有頂天」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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