業績主義(読み)ぎょうせきしゅぎ

改訂新版 世界大百科事典 「業績主義」の意味・わかりやすい解説

業績主義 (ぎょうせきしゅぎ)

近代的あるいは合理的な労務管理の基本は業績主義であるとされる。能力発揮による業績achievementの達成度に基づいて処遇を決定すべきだとする考え方である。近代以前の社会において,家系縁故等の属性ascriptionによって処遇の決定が行われたことと対比される。メリット・システムは一般に公務員任用制度について使われるが,ほぼ同義である。実績主義によって適材適所が可能となり,組織の効率的運営,ひいては社会の進歩がはかられると評価されている。日本の企業では年功制度年功的労使関係)が支配的であり,業績主義が否定されていると一般には主張されている。しかし業績のいかんにかかわらず,年齢や勤続年数のみによって処遇を決定するという理念的な年功制をとる例は,実際にはむしろほとんど見いだしえない。日本の企業においては,実際経験に基づいた高い能力,つまり年功要素を内包した業績が重視されているとするのが,より妥当であると考えられる。

 業績主義は努力主義とも対比される。日本の企業では,たとえ業績があがらない場合においても,本人の努力いかんを評価する。これは業績主義の厳しさに欠けると一般には批判される。しかし短期の評価期限内の業績が過度に重んぜられる場合,一定の業績評価期間内には達成困難な課題に進んで取り組むことを回避しようとする心理的雰囲気が醸成される危険が大きい。長期にわたる困難な課題の解決に献身する者の評価のためには,短期的業績主義を改める必要がある。一般的に業績の公平客観的な評価のためには,数値化の必要性が強調される。そのため業績測定のための多くの試みが繰り返されてきた。しかし数値化の過度の重視も危険を伴う。数値化に適さない価値の高い課題が軽視される風潮を醸成する危険があるからである。業績主義は客観的公平な人事処遇のため有効な主義であるが,その実地への適用には慎重かつ総合的な配慮が必要である。
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百科事典マイペディア 「業績主義」の意味・わかりやすい解説

業績主義【ぎょうせきしゅぎ】

社会学用語としてのアチーブメントachievement(業績)はアスクリプションの対概念。R.リントン〔1893-1953〕によれば,アスクリプションが先天的に規定された地位であるのに対し,業績は個人の能力や努力の結果得られた社会的地位である。この2分法はT.パーソンズの行為選択の概念にも引き継がれている。
→関連項目メリット・システム

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