精選版 日本国語大辞典 「気」の意味・読み・例文・類語
き【気】
け【気】
げ【気】
ぎ【気】
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中国思想史上の用語。宇宙に充満する微物質。アトムとは異なり,ガス状に連続していて分割できない。万物を形づくり,それに生命,活力を与えるもの。物質=エネルギーと定義される。すでに《管子》内業篇に気が天地の間を流動し,五穀や星となるさまが描かれている。気がたえざる運動のうちにあり,凝集すると物が形成され,その凝集が拡散するとその物体が消滅することも,《荘子》知北遊篇に見えている。少し具体的に述べてゆくと,天は軽い気,地は重い気がそれぞれ分かれてできたものである(《淮南子(えなんじ)》天文訓)。星もまた〈元気の英(エッセンス)〉にほかならない(楊泉《物理論》,《列子》天瑞篇)。季節のめぐりも,陰の気と陽の気の消長による。旧中国で皇帝は,各季節の気を迎える〈迎気〉という祭を行うならわしがあった。自然現象も気の運動による。たとえば雲は,山や川から立ちのぼる気と考えられていたし(《説文》),雷は陰気の中に閉じこめられた陽気が無理に出ようとするときに発生するという(《朱子語類》巻九十九)。大地の中にも土や岩の空隙を縫って〈地気〉が走っている。そのコースを〈地脈〉という。風水説では,この地脈を〈竜〉と呼び,そのなかでも生気のわだかまる所を特に〈穴〉と呼び,そこに墓を営むと生気が死者の肉体を媒介にして子孫に感応し,その家は栄えるという。このように大地は,気というエネルギーに充たされた,一個の巨大な生命体と考えられていたのである。古くから行われた〈候気の法〉というのがある。12本の律管(音階の基準になる12本の長さの異なるパイプ)を土中に埋め,その上に灰をかぶせておくと,地気の活動に応じて特定の律管の灰が飛び,それによって季節の移り変りが観測できる(《夢渓筆談》巻七)。ちなみに,石は気の結晶したものである(《物理論》,《本草綱目》巻八)。人体の中にも気が流れている。その周流するルートが〈経絡(けいらく)〉である。中国医学では,病気は気の不調によって生じると考えられた。〈病は気から〉という諺は,実はこの中国医学に由来する(出典は《黄帝素問》挙痛論篇)。道教では,1日を〈生気〉と〈死気〉の時間帯に分け,〈生気〉のときに深くゆるやかな呼吸を実践すれば,体内の気が入れかわり,不死の体になるという(《抱朴子》釈滞篇など)。このような気論をふまえながら,これを一個の哲学として体系づけたのが北宋の張載であった。
→理気説
執筆者:三浦 国雄
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中国哲学の用語。気という語は殷(いん)周の甲骨文、金文の資料や『詩経』『書経』にはみられないが、『論語』をはじめ戦国時代以後の各学派の文献に多く現れる。元来中国人は、人の気息、風(大気)や霧、雲の類、湯気などを気として認識した。そして(1)気は空気状のもので、天地の間に遍満して流動変化するとともに、人の身体の中にも満ちていると考えた。(2)気は天地万物を形成し、かつ気が生命力、活動力の根源であって、人の身体的、精神的諸機能もすべて気から生ずると考えた。(3)陰(いん)なる気と陽(よう)なる気、あるいは五行(ごぎょう)(木火土金水)の気という2種類または5種類の気を考え、この多様な気の配合、循環などによって事物の異同や生成、変化を説明した。(4)これらの多様な気の本(もと)となる根源の一気を考えてそれを元気(げんき)と称し、元気による万物の生成を説いた。気の思想は、だいたい上記(1)から(4)の順序を追って重層的に展開し、前漢のなかばごろまでに気の概念はほぼ定着して清(しん)末まで基本的な変化はなかった。かくて漢代以後、種々の系列の思想において気による生成論が説かれ、宋(そう)代以降の新儒学(性理学)においては、気は物質の根源を表す語としてその理気哲学の体系中に組み込まれ、きわめて重要な役割を果たした。なお気は狭義の哲学用語としてだけではなく、天文、気象、医学、芸術、兵法、政治等々多くの分野の理論のなかで、古来重要な用語として用いられた。
[山井 湧]
『黒田源次著『気の研究』(1977・東京美術)』▽『小野沢精一他編『気の思想』(1978・東京大学出版会)』
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…したがって荀子の性悪説は,孟子の説の一面を補うものである。孟子の良心論に影響を受けた宋学の理気説では,人間の本性に〈本然の性〉(理)と〈気質の性〉(気)を区別するが,前者は良心,後者は放心に当たると言っていいであろう。儒教の人間観では,放心や〈気質の性〉を克服し努力してゆくことによって,良心や〈本然の性〉の働きが強くなり,人は君子や聖人と呼ばれるような完全な状態に近づいてゆくと考える。…
…呼吸によって生ずる空気の運動のことであり,気息,気ともいわれるが,同時に宇宙に遍満する大気(または風)と連関するとともに人間の存在を支える生命力とも考えられた。したがってその意義も,生理的実体をさす段階から形而上的な霊気をさす段階にいたるまで多様な展開をみせた。…
…中国画の用語。5世紀,南斉末の画家,謝赫(しやかく)の画論《古画品録》の序にある〈六法〉の第一則に気韻生動とある。気はもと宇宙と人体とに遍満するものであり,陰陽の気として,あるいは元気として世界構成の原質であった。…
…絡脈は経脈から分かれて全身に網状に分布している脈である。 経脈は表に示したように末端で順次接続して全体で環状になり,そのなかを気と血(現代医学でいう血とは完全には一致しない)がたえず循環し,一昼夜で人体を50周するという。人体の生理活動は経脈中の気血の運行によって支えられているから,経脈の機能が乱れるとそれぞれに関連のある臓腑に障害が起こり,それが体表面に反映されて,体の各部位に特定の病変が起こると考える。…
…そこが辺境であっただけに,いっそう〈中央〉,すなわち真に伝統的なもの,中国的なものへの,自己同一化の欲求が激しかったのである。
[〈理〉と〈気〉による世界の把握]
朱熹の教義はどのようなものであったのか。朱熹は中国の思想家の多くがそうであったように,自己の思想をまとまった哲学論文として提出したことはなく,主として経書の注釈,ときには書簡や座談の発言を通して表明したが,われわれはそれらの言葉の奥に壮大な体系の存在を感得しうる。…
…北宋の程頤(ていい)(伊川)によって提唱され,南宋の朱熹(しゆき)(子)によって発展させられたテーゼ。程伊川と同時代の張載(横渠(おうきよ))は〈心は性と情とを統括する〉と述べたが,伊川―朱子によれば,性(本性)は理であるのに対して情(感情,情欲としてあらわれる心の動き)は気であるとされる。気は本来善悪とは関係のない存在論的なカテゴリーであるが,朱子学では心を形づくる気は不善への可能性をはらむとみなすので,情=気の発動いかんによっては本来的に天から賦与されている善性=理がゆがめられるおそれがある。…
…この点についてはこれまで確証は得られなかったが,1972年に甘粛省武威県の後漢初期の墓(武威漢墓)から処方集が,73年湖南省長沙市の馬王堆漢墓3号墓(前168築造)から10種以上の医書が出土して,漢代の医学の発達の状態がかなり明らかになった。 すなわち《素問》や《霊枢》の経脈説は馬王堆の《陰陽十一脈灸経》をさらに発展させたもので,気,血などの考えも導入して,陰陽説や五行説の立場からさまざまの理論付けを試みている。馬王堆の《五十二病方》は処方集であるが,武威の医簡に比べるとはるかに未発達の段階にあり,この2書が書かれた200年ほどのあいだに非常に大きな発達のあったことがわかる。…
…漢代儒学の特色の一つは,陰陽五行説を取り入れたことにある。陰陽説とは万物が陽気と陰気の2要素から成ると説くもので,その典型的な例は《易経》に見られる。五行説は万物が木火土金水の5要素から成るとするもので,両者は本来別個の起源をもつと考えられるが,やがて合体して陰陽五行説となった。…
…漢になって隷書の早書として草書が生まれ,草書をもとにして表現にくふうが凝らされ,一転一折の筆の運びに情感がこめられ,書の芸術化が始まった。画も書の発達とともに素朴なものから繊細・優美なものへと発展し,物の形似すなわち写実的表現の中に画家と描かれた人物や動物の生命感が共鳴しあうことを求め,これを気韻生動といった。 詩,書,画において個人の心情の表現が重視されるのは物一元的な古代とはまったく異なる点であり,物にも人間の生命と通じあう生命が宿ると考えるのである。…
…人間の生活に影響を与える大気の状態のこと。広い意味では,ある時刻または長くない時間帯における気温,湿度,風,雲,降水,視程などの気象要素を総合した大気の状態のことで,数日以上にわたる長い時間帯の場合には天候といって区別することもある。…
…身体の痛み,不快感,機能の低下や不調和などで日常生活が妨げられる,個人の肉体的異変や行動の異変をいい,そのような状態の不在を健康という。
【病気と健康】
個人の肉体の機能や行動は自然的および社会的環境と密接に結びついているため,肉体や行動の異変についての解釈や,それへの対応は文化によって異なる。しかし,一般論としていえば,その解釈には自然的解釈と超自然的解釈の二つの様式があり,一方,異変への対応には,庇護と忌避の二つの理念と形態とがあって,それぞれ複雑な組合せをもっている。…
…ただ,若き日の友人でのちに大坂に出た天文学者麻田剛立(ごうりゆう),大坂懐徳堂の中井履軒とは生涯文通をもった。 幼時より天地万物あらゆることに疑いを抱きノイローゼを発するほど苦しんだが,20歳過ぎて西洋天文学書によって天地の形体を知るを得,29歳または30歳で〈天地は気なり〉と気づき,つづいてその天地万物に〈条理〉のあることを覚った。かくて条理探究の書《玄語》の稿を起こし,53歳でついに完成した。…
※「気」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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