法師ヶ母(読み)ホウシガハハ

デジタル大辞泉 「法師ヶ母」の意味・読み・例文・類語

ほうしがはは〔ホフシがはは〕【法師ヶ母】

狂言亭主が酒に酔った勢い女房を離縁するが、女房は実家へ帰る途中に、「法師子供)が母恋しや」と狂乱の体の夫と会い、よりを戻す。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「法師ヶ母」の意味・わかりやすい解説

法師ヶ母 (ほうしがはは)

狂言の曲名。女狂言。大蔵,和泉両流にある。酔って帰宅した夫は,妻の迎え方が気にいらぬと悪態をつき,離別を言い渡してしまう。妻は子どもに心を残しながら泣く泣く家を出て行く。さて,酔いから覚めた夫は,後悔のあまり物狂いとなって妻を探し求めに出,無事,妻とめぐり会い,ともに手を取って家へ帰って行く。登場は夫と妻の2人で,夫がシテ。ほかに地謡(じうたい),囃子(笛,小鼓,大鼓)が出演する。前場と後場からなり,前半は《貰聟(もらいむこ)》などと同じ筋立てだが,後半は物狂能の形式を模した舞狂言(まいきようげん)風の演出となり,シテは物狂いの象徴である笹を持って登場し,一セイを謡い,カケリを舞う。狂言ではわが子(男児)のことを〈かな法師〉と称するが,これは愛(かな)しい坊主というほどの意味であり,したがって〈法師が母〉は,子どもの母,つまり妻の意である。
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