熱応力(読み)ネツオウリョク(英語表記)thermal stress

デジタル大辞泉 「熱応力」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐おうりょく【熱応力】

物体温度変化による膨張収縮外部的な拘束によって妨げられたときに、物体内部に生じる応力

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精選版 日本国語大辞典 「熱応力」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐おうりょく【熱応力】

〘名〙 応力の一つ。温度変化によって生ずる自由な膨張収縮が外部から拘束されたり、物体内部の物質相互の牽制によったりして生ずる応力。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱応力」の意味・わかりやすい解説

熱応力
ねつおうりょく
thermal stress

温度の変化や不均一な温度分布により物体内に生ずる応力。物体は温度変化により膨張または収縮するが、この膨張や収縮が外部的な拘束などにより妨げられると、妨げられた変形量に相当するひずみを受けたことになり、それに応じた応力が物体内部に生ずる。たとえば、鉄の棒の伸縮を完全に拘束して10℃の温度変化を与えると1平方センチメートル当り約2000N(20MPa)の熱応力が発生する。熱応力の大きさは材料線膨張係数縦弾性係数に比例する。甚だしい温度変化を受けたり、急速に加熱または冷却されて物体内に大きな温度差を生ずる場合(熱衝撃という)には物体内の熱応力も大きくなり、材料の降伏点を超えて塑性変形を生じたり破壊に至ることもある。また、加熱と冷却とが繰り返される場合には熱応力が繰り返し生ずることになり、疲労による破壊に至ることもある。この現象を熱疲労という。

[林 邦夫・中條祐一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱応力」の意味・わかりやすい解説

熱応力
ねつおうりょく
thermal stress

温度変化があれば,物体は一般に熱膨張熱収縮によって変形する。この自由な変形がなんらかの形で拘束されると,物体にはそのときの熱ひずみに対応する応力が生じる。また,拘束されなくても,物体内の温度分布が不均一なときや熱膨張係数の異なる材料から成る構造物体では,同じ理由で応力が発生する。この種の応力を熱応力という。急激な温度変化を受けたり,構造体内の温度勾配が大きなときには,熱応力も増大し,やがて降伏応力をこえることもある。したがって破壊応力に達して亀裂が発生したり,永久変形を生じる場合もある。

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百科事典マイペディア 「熱応力」の意味・わかりやすい解説

熱応力【ねつおうりょく】

温度の変化または不同によって物体内部に生じる応力。熱膨張または熱収縮が何かの原因で妨げられるとき起こり,均質物体でも場所によって温度が異なれば高温部分圧縮応力,低温部分で引張応力を生じる。温度変化や温度差が大きいと熱応力が材料の降伏点を越え,永久変形や割れ目ができることがある。

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世界大百科事典(旧版)内の熱応力の言及

【応力】より

…溶接,熱処理などの過程により生じた内部応力も残留応力という。このほか外力の作用なしに発生する応力に熱応力がある。これは物体に温度分布があるとき熱膨張が不均一に生ずることにより発生するものである。…

※「熱応力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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