特別活動(読み)とくべつかつどう

精選版 日本国語大辞典 「特別活動」の意味・読み・例文・類語

とくべつ‐かつどう ‥クヮツドウ【特別活動】

〘名〙 小・中・高等学校で、教科道徳以外の教育課程領域。望ましい集団生活を通して、心身の調和的発達個性伸長、自主的・実践的態度育成目的としている。特別活動の内容は、児童会生徒会活動学校行事などから成る。特活。

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デジタル大辞泉 「特別活動」の意味・読み・例文・類語

とくべつ‐かつどう〔‐クワツドウ〕【特別活動】

小・中・高等学校で、各教科・総合的学習などと並ぶ教育課程の一領域。集団活動を通して、個性の伸長、自主的・実践的態度を育てることを目的とする。児童会活動生徒会活動・学校行事など。特活。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「特別活動」の意味・わかりやすい解説

特別活動
とくべつかつどう

小・中・高等学校において、各教科のほかに、学校がその教育的意義を認めて、教育課程上に位置づけている、さまざまな児童・生徒の活動を総括する呼称。ただし、高等学校の教育課程が、各教科と「特別活動」の2領域で成り立つのに対し、小・中学校の場合には、両者の中間的な性格のものとして「道徳」の時間を設けているので、その教育課程も、つごう三つの領域によって編成するものとされている。

[井上治郎]

内容

国が定める教育課程の基準である学習指導要領によると、小・中学校の特別活動は、学級活動(従来の学級会活動と学級指導を統合)、児童・生徒会活動、学校行事からなり、小学校高学年ではクラブ活動が加わる。これに対して、高等学校の特別活動は、ホームルーム、生徒会活動、学校行事の三つを、その内容とするものである。また、小・中学校の場合も高等学校の場合も、学校行事のなかには、入学式や卒業式などの儀式的行事、文化祭や学芸会などの学芸的行事のほか、体育祭や運動会、遠足や修学旅行、ボランティア活動などが含まれる。

 ちなみに、学校給食や身体測定などのように、一般には児童・生徒の活動とはみなしにくいものも、教育課程上はすべて特別活動である。これらが先にあげた各種の内容のいずれに該当するかは、実施の態様に応じてそれぞれ異なってくるというのが、学習指導要領の基本的な考えである。

[井上治郎]

歴史

特別活動に包括される、さまざまな児童・生徒の活動は、学校制度の発足と同時に、事実としてはそれに付随して行われてきたものであるが、それらを積極的に学校の教育課程に位置づけて指導するという着想は、比較的新しい。この点で先鞭(せんべん)をつけたアメリカの場合でも、それが一般化し始めたのは、1920年代の、全人教育あるいは児童・生徒中心の教育を旗印にした「新教育」運動以来のことである。日本においては大正期にその影響も一部にみられたが、実際には、1947年(昭和22)の現行の学校制度の成立と同時に、ようやく緒(ちょ)についたにすぎない。それ以前は、特別活動といわれる活動すべては教育課程外のこととして取り扱われ、学校の十分な教育的配慮のもとには置かれていなかったのが実情である。

 特別活動という総括的な呼称にしても、これが小・中・高等学校を通じる統一的なものとして用いられることになったのは、1977年の学習指導要領の改訂の時点からである。それまでは、特殊教科課程、特別課程活動、教科以外の活動、特別教育活動、各教科以外の教育活動、課外活動、などさまざまな名称が、学校種別ごとにくふうされてきたという経緯をもっている。

 従来、小学校から高等学校までの教育課程の一端を担ってきたクラブ活動は、完全週5日制の導入、「総合的な学習」の時間新設に伴い、1998年(平成10)の学習指導要領の改訂で中・高等学校の特別活動としては廃止された。

[井上治郎]

意義

特別活動を、学校の正規の教育課程のなかに取り入れるということは、単に形式的な制度の変更にとどまらず、一つの新しい教育観の主張を意味する。それは、教科書に象徴される知識、技能の伝達だけをその課題とした伝統的な学校観にかわり、より多様な実地の経験を積ませることが児童・生徒の人格の調和的な発達にとって不可欠だとする認識に基づく学校観をもってしようとするものである。特別活動においては、とくに児童・生徒の自主的な集団活動が重視され、また、その指導の方法原理として「なすことによって学ぶ」という考えが強調されるのも、そのゆえである。

[井上治郎]

『『宮坂哲文著作集Ⅲ』(1968・明治図書出版)』『井上治郎著『望ましい集団活動と教師の指導』(1972・明治図書出版)』『飯田芳郎著『児童・生徒の活動』(1974・高陵社書店)』『保坂一郎著『小・中・高等学校 特別活動の論理と実際』(1986・東洋館出版社)』『宇留田敬一ほか著『特別活動全書』全4巻(1991~93・明治図書出版)』『関川悦雄著『特別活動の基礎と展開』(1994・啓明出版)』『佐々木昭著『特別活動の研究』(1998・学文社)』『弓野憲一編『特別活動と総合的学習の心理学』(1999・ナカニシヤ出版)』『日本特別活動学会編『キーワードで拓く新しい特別活動』(2000・東洋館出版社)』『山口満編著『特別活動と人間形成』新版(2001・学文社)』『宮川八岐著『21世紀型特別活動の実践構想』(2001・明治図書出版)』『山口五郎ほか著『特別活動の理論と実践』新訂3版(2002・学文社)』『鯨井俊彦著『特別活動の展開』(2002・明星大学出版部)』

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世界大百科事典(旧版)内の特別活動の言及

【教育課程】より

…これには理論的根拠があったのではなく,〈道徳〉の時間を特設する政策の必要から出された規定とみられることが多かった。68年改訂では,各教科,特別活動,特設道徳の3領域に改められた。民間教育研究運動や日教組の教育研究活動では,1950年代から,子どもの発達に即し,学習意欲を喚起しつつ科学や芸術などの文化をどう子どもたちに獲得させるかを探究しながら,自主編成の運動がすすめられてきた。…

※「特別活動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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