産業基盤(読み)さんぎょうきばん

改訂新版 世界大百科事典 「産業基盤」の意味・わかりやすい解説

産業基盤 (さんぎょうきばん)

産業の育成,発展にとって不可欠な施設の総称。産業用地,用水,道路,橋,鉄道港湾空港,発電施設などをはじめ,技術開発機関や産業訓練,教育のための機関,病院,保育園などをも含む。

 産業基盤は,経済学的な観点からいえば社会資本の一部である。社会資本は企業の生産活動に直接関連する生産資本と区別されるが,機能別には,(1)団地,用水,道路,港湾など生産機能をもつもの,(2)病院,公園,レクリエーション施設など福祉機能をもつもの,(3)治山・治水施設など国土保全機能をもつもの,などに分類できる。産業基盤はこのうち(1)の全部と(2)の一部をさす。

 一般に,資本主義諸国の産業政策は,産業基盤政策,産業秩序政策,産業経過政策の三つに要約できるが,そのうち産業基盤政策は,産業の育成を目的として,これら産業基盤の整備を行おうとするものである。発展途上国の多くでは,これらの先行投資が行われていないために経済発展が思うように進まないのが現状であり,産業基盤政策が最も重要な課題となっている。

 日本の産業基盤整備は,昭和40年代から地方に重点的に行われてきた。まず,1962年策定の全国総合開発計画(全総)のもとで,いわゆる拠点開発方式が採られ,〈新産業都市(新産都市)〉〈工業整備特別地域(工特地域)〉において,重点的な産業基盤整備が行われ,企業が誘致された。さらに,69年の新全国総合開発計画(新全総)では大規模開発プロジェクトの推進を核とする開発方式が採られ,以後,新幹線網,高速道路網,港湾,空港などの全国ネットワークや,大規模工業基地といった形で産業基盤が整備された。定住構想が打ち出された77年の第三次全国総合開発計画(三全総)以降は,地方定住を促進するための基盤整備へと重点が移った(以上については〈国土総合開発〉の項参照)。また,80年に通産省が発表した〈テクノポリス構想〉以降,先端技術産業の地域振興が重要になっており,技術開発や産業訓練のための機関の充実,生活環境の向上などが産業基盤整備の重要な柱となりつつある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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