白血球減少症(好中球減少症/無顆粒球症)(読み)はっけっきゅうげんしょうしょうこうちゅうきゅうげんしょうしょうむかりゅうきゅうしょう(英語表記)Leukopenia

家庭医学館 の解説

はっけっきゅうげんしょうしょうこうちゅうきゅうげんしょうしょうむかりゅうきゅうしょう【白血球減少症(好中球減少症/無顆粒球症) Leukopenia】

[どんな病気か]
 健康な人の血液中に含まれる白血球は、血液1mm3あたり4000~9000個で、これが1mm3あたり3000個以下になった状態を、白血球減少症といいます。
 白血球には好中球(こうちゅうきゅう)、好酸球(こうさんきゅう)、好塩基球(こうえんききゅう)、単球(たんきゅう)、リンパ球などの種類があり、好中球、好酸球、好塩基球の3つを合わせて顆粒球(かりゅうきゅう)とも呼ばれます。
 減少した白血球の種類によって好中球減少症顆粒球減少症無顆粒球症などとも呼ばれます。
 顆粒球減少症(かりゅうきゅうげんしょうしょう)には、好中球、好酸球、好塩基球などの減少症がありますが、白血球の45~65%は好中球なので、好中球減少は顆粒球減少とほとんど同じ意味で使われています。
 とくに、血球のなかで顆粒球(好中球)がほとんどなくなってしまい、重い感染症にかかることの多い病気を、無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)と呼んでいます。
 ここでは、白血球減少症の大部分を占める好中球減少症と、無顆粒球症について、解説します。
■好中球減少症(こうちゅうきゅうげんしょうしょう)
 血液中の好中球の数が1mm3あたり1500個以下になった状態をいいます。
 好中球は感染を防ぐ機能に重要な役割をになっているので、好中球が減ってくると、とくに細菌や真菌(しんきん)に感染しやすくなります。
 したがって、感染症にかかり、ふつうの治療を受けたにもかかわらず発熱などの症状がとれないときは、好中球減少症を疑ってみる必要があります。
 原因としてもっとも多いのは、薬剤の使用が引き金になるものです。
 抗菌薬や抗生物質、消炎鎮痛薬、抗けいれん薬抗甲状腺薬(こうこうじょうせんやく)、経口糖尿病薬、精神安定剤、各種の抗がん剤抗ヒスタミン薬、抗不整脈薬など、さまざまな薬剤が原因となります。
 そのほかにも、骨髄(こつずい)の造血(ぞうけつ)障害(再生不良性貧血や白血病放射線照射など)、脾臓(ひぞう)の機能亢進(こうしん)による破壊(肝硬変(かんこうへん)など)、好中球の発育不良・不全(骨髄異形成症候群など)、感染症(ウイルスや細菌)、免疫(めんえき)の病気(膠原病(こうげんびょう)、自己免疫性好中球減少症など)、遺伝(周期性好中球減少症、家族性慢性好中球減少症など)など、さまざまな原因があります。
 これらの原因をまとめると、好中球の産生がうまくいかない、好中球の破壊が異常に進行する、好中球の利用が激しく、産生が追いつかない、ということがいえます。
 好中球の減少のほかに、赤血球(せっけっきゅう)の減少(貧血)、血小板(けっしょうばん)の減少(出血)などをともなうことも少なくありません。
 好中球の減少が進んで無顆粒球症になると、敗血症(はいけつしょう)など、生命にかかわる重い感染症をおこすことがありますので、その予防がたいせつです。
 原因となる可能性のある薬剤の使用は、すぐに中止します。
■無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)
 顆粒球がほとんどなくなってしまっている状態を、無顆粒球症といいます。
 顆粒球の減少がおこるメカニズムには、2種類があります。
 1つは、薬剤の中毒作用によって、骨髄にある顆粒球のもとになる細胞が傷害されてしまう場合です。
 もう1つは、おもに、薬剤を異物とみる好中球が薬剤と結合し、さらに、その結合したものに対する抗体(こうたい)がつくられ、それが好中球を呼び集めて破壊することによるものです。
 無顆粒球症では、薬剤の使用といった、きっかけになることがあってから急に(1~2日間)、全身のだるさなど、まえぶれとなる症状が現われ、その後に震えをともなう高熱、ひどいのどの痛みがおこってきます。
 重症になると、肺炎、敗血症などをおこし、危険な状態になります。
 静脈から採血して検査すると、顆粒球・好中球が著しく減少しており、ときにはまったく検出できないこともあります。
 針を刺して骨髄の組織を少量とり、顕微鏡で調べてみると、顆粒球になる前の細胞(骨髄芽球(こつずいがきゅう)、前骨髄球(ぜんこつずいきゅう))が増えているのがみられます。
 治療は、原因となった薬剤、放射線照射などをすぐに中止します。
 感染が原因となっている場合には、その感染症の治療を行ないますが、薬剤の使用は、慎重に行なう必要があります。
 細菌などの感染を防ぎ、体力をつけるために、入院して治療するのが原則となります。
 肺炎や敗血症など、重症の感染症をおこしてしまった場合は、慎重に、強力な抗生物質療法を行ないます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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