神経内科(読み)しんけいないか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「神経内科」の意味・わかりやすい解説

神経内科
しんけいないか

神経障害による疾患を対象とする診療科目で、単に神経科ともいう。対象疾患には脳、脊髄(せきずい)、末梢神経(まっしょうしんけい)および骨格筋など神経系統を侵す障害がすべて含まれている。これらを研究する学問はneurologyで、神経学、神経内科学、神経病学とよばれる。

 神経内科で扱われる病気には、脳卒中をはじめ、髄膜炎脳炎頭痛自律神経失調症進行性筋ジストロフィーなどのほか、パーキンソン病ハンチントン病脊髄小脳変性症、シャイ‐ドレーガー症候群、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)、多発性硬化症スモンなど、いわゆる難病も多く含まれている。

[海老原進一郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「神経内科」の意味・わかりやすい解説

神経内科 (しんけいないか)
neurology

神経疾患を対象とする診療科名であり,それを研究する学問は神経内科学または神経学と呼ばれる。なお日本では単に神経科といえば,精神科のことを意味する。神経学は19世紀に確立し発展してきた学問で,現在は臨床的に精神医学,脳神経外科学,内科学さらには小児神経学,神経心理学,神経耳科学,神経眼科学および神経放射線学などと密接に関係している。さらに臨床のみならず,神経解剖学,神経病理学,神経化学,神経薬理学,神経生理学,分子遺伝学および分子生物学など広範な基礎科学の支えの上に成り立っており,これら基礎および臨床の各分野を含む神経科学neuroscienceの中核となっている。この神経科学は今日急速に進歩しつつあり,生命科学の大きな柱をなしている。

 対象とする疾患は,脳,脊髄,末梢神経および骨格筋を侵すあらゆる障害を含み,意識や精神・知能の障害から筋脱力あるいは感覚障害に至る幅広い症状を呈する。このような障害の原因としては以下のように多数のものが知られている。(1)血管障害 いわゆる脳卒中であり,日本では死亡原因の第2位を占めている。(2)腫瘍 原発性と転移性とがある。(3)変性疾患 認知症,パーキンソン症候群,筋萎縮性側索硬化症,筋ジストロフィー症など原因不明で進行性である。(4)脱髄疾患 多発性硬化症など。(5)代謝障害 脂質症,フェニルケトン尿症など。(6)中毒 スモン,アルコール中毒など。(7)外傷。(8)奇形 脊髄空洞症など。(9)感染症 髄膜炎,脳炎など。(10)機能的疾患 頭痛,自律神経失調症,てんかんなど。病因が不明であったり治療法がまだ確立していないなど,いわゆる難病といわれている病気も多いが,研究の急速な進歩により病態の解明とともに治療法の開発や改善も進みつつある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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