笑止(読み)しょうし

精選版 日本国語大辞典 「笑止」の意味・読み・例文・類語

しょう‐し セウ‥【笑止】

〘名〙
※高野本平家(13C前)三「今度の御座に笑止数多(あまた)あり。先法皇の御験者、次に后御産の時御殿の棟より甑(こしき)を転かす事あり」
※易林本節用集(1597)「勝事 シャウシ 笑止」
② (形動) 困ったこと。困惑するような出来事。また、そのさま。
謡曲蟻通(1430頃)「あら笑止や、にはかに日暮れ大雨降りて」
③ (形動) 気の毒に感じられること。同情すべきこと。いたましいこと。また、そのような対象のさま。
※歌謡・閑吟集(1518)「わが恋は、水にもえたつほたるほたる、ものいはでせうしのほたる」
※浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂「はれそれは御太儀なと、笑止(セウシ)な顔はすれど」
④ (形動) ばかばかしくて、笑うべきこと。かたはらいたいこと。おかしなこと。また、そのさま。
史記抄(1477)九「注者の其処の文字を解するばかりなば、此様な事がせうしぞ」
※湯葉(1960)〈芝木好子〉「はじめのうちは笑止なほど、畏こまって膝頭を揃えていたが」
⑤ (形動) 恥ずかしく思うこと。また、そのさま。
浄瑠璃一谷嫩軍記(1751)四「始ての付合になめたらしい、ヲヲ笑止と、袖震ふさへ廓めかし」
[補注]①の挙例の「高野本平家‐三」の箇所は、龍谷大学本では「今度の御産に勝事あまたあり」となっており、「勝事」と表記されている。「勝」と「笑」とは本来ショウ」「セウ」として別音であるが、平安時代末にはその発音上の区別は失われていたと考えられる。

しょうし‐・い セウシ‥【笑止】

〘形口〙 せうし・し 〘形ク〙 (名詞「しょうし(笑止)」の形容詞化) 気の毒である。また、滑稽である。おかしい。
※甲陽軍鑑(17C初)品三二「信玄公の氏政をさげすみ給ふ、とせうしく存ずる也」
[補注]「しょうし」を語幹とみて文語ク活用としたが、後の音「し」を形容詞語尾のように意識したとすればシク活用とも考えられる。

わらい‐や・む わらひ‥【笑止】

[1] 〘自マ五(四)〙 笑うことがやまる。
※浄瑠璃・生写朝顔話(1832)宿屋段口「笑ひ止まずば手は見せぬ」
[2] 〘自マ下二〙 ⇒わらいやめる(笑止)

わらい‐や・める わらひ‥【笑止】

〘自マ下一〙 わらいや・む 〘自マ下二〙 笑うことをやめる。
※青草(1914)〈近松秋江〉四「笑ひ止めると隙(すか)さず仲居は徳利を取り上げた」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「笑止」の意味・読み・例文・類語

しょう‐し〔セウ‐〕【笑止】

[名・形動]《「勝事」からか》
ばかばかしいこと。おかしいこと。また、そのさま。「笑止の至り」「笑止の沙汰」「笑止なことを言う」
気の毒に思うこと。また、そのさま。
「老の歩みの見る目―に」〈露伴五重塔
困っていること。また、そのさま。
「あら―や、この御文の様も、頼み少なう見えて候」〈謡・熊野
恥ずかしく思うこと。また、そのさま。
「ほんにまあわしとした事が、始めての付け合ひになめたらしい、おお―」〈浄・嫩軍記
[類語]おかしいおもしろい滑稽こっけい傑作剽軽ひょうきん喜劇的ユーモラスコミカルばかばかしい馬鹿らしい馬鹿臭い詰まらない馬鹿愚か愚かしい阿呆らしい阿呆臭い下らない馬鹿げる愚劣無思慮ぶしりょ無考え浅はか浅薄せんぱく軽はずみ軽率笑い事笑止千万片腹痛い噴飯物噴飯笑い大笑い高笑い哄笑爆笑呵呵大笑抱腹絶倒笑い崩れる笑いける笑い転げる吹き出す腹の皮をよじ腹の皮を腹を抱える御中おなかを抱えるおとがいを解く愚にも付かぬへそで茶を沸かすへそ茶聞いてあきれるちゃんちゃらおかしい

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