節季候(読み)せきぞろ

精選版 日本国語大辞典 「節季候」の意味・読み・例文・類語

せき‐ぞろ【節季候】

[1] 〘名〙 江戸時代歳末門付けの一種。一二月の初めから二七、八日ごろまで、羊歯(しだ)の葉を挿した笠をかぶり、赤い布で顔をおおって目だけを出し、割り竹をたたきながら二、三人で組になって町家にはいり、「ああ節季候節季候、めでたいめでたい」と唱えて囃(はや)して歩き、米銭をもらってまわったもの。せっきぞろ。《季・冬》 〔俳諧・誹諧初学抄(1641)〕
[2] 歌舞伎所作事。長唄。二世桜田治助作詞。四世杵屋六三郎作曲。初世藤間勘十郎振付。文化一〇年(一八一三江戸森田座初演。七世市川団十郎の八変化物「閏茲姿八景(またここにすがたはっけい)」の一つで、節季候の振事。

せっき‐ぞろ【節季候】

〘名〙 =せきぞろ(節季候)(一)
※俳諧・はなひ草(寛永二〇年本)(1643)「十二月 神楽(かぐら)、あづま遊ひ、〈略〉節季(セッキ)候、もちつき」

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デジタル大辞泉 「節季候」の意味・読み・例文・類語

せき‐ぞろ【節季候】

《「節季せっきにて候」の意》江戸時代の門付けの一。歳末に三、四人一組でウラジロの葉をつけた笠をかぶり、赤い布で顔を覆い、四つ竹などを鳴らしながら「せきぞろ、せきぞろ」とはやして家々を回り、米銭べいせんを請うた。せっきぞろ。 冬》「―の来れば風雅も師走哉/芭蕉

せっき‐ぞろ【節季候】

せきぞろ(節季候)

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改訂新版 世界大百科事典 「節季候」の意味・わかりやすい解説

節季候 (せきぞろ)

門付(かどづけ)の芸人。江戸時代師走になると赤い布で顔を隠し,頭に裏白(うらじろ)をつけた笠をかぶった芸能者数人が一組となり,割竹をたたいて〈節季候節季候 めでたいめでたい〉と唱えて家々の門口を訪い歩いた。のちには紙の頭巾(ずきん)に宝尽しの紙前垂れをし,四つ竹,小太鼓拍子木などを鳴らし,女の三味線に合わせてにぎやかに囃して〈せきぞろ ほうほう 毎年毎年旦那のお庭へ飛び込めはねこめ〉などと唱えて歩いた。《俚謡集》(1914)に広島県賀茂郡の例として〈大和国からござりた節季候,御家の掛りをあらあら申せば,四方の堀には水を湛へ,八ツ棟造りの檜の無節,先年飛驒の匠が建てたる御家か,さても見事や,せきぞろ〉という唱えごとを載せる。《日本永代蔵》《人倫訓蒙図彙(じんりんきんもうずい)》にその姿が見える。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「節季候」の意味・わかりやすい解説

節季候
せきぞろ

元禄(げんろく)時代(1688~1704)から盛んに行われた一種の物乞(ご)い。歳末になると男女が編笠(あみがさ)に歯朶(しだ)の葉をつけてかぶり、赤い布で顔を隠して目だけ出し、簓(ささら)をすりながらめでたい唄(うた)を口ずさみ、門付(かどづけ)をして、米や銭をもらって歩いた。簓ばかりでなく太鼓もたたいてやってきた。昔は三都にあったが、江戸時代末期には江戸の街だけとなった。

[遠藤 武]


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百科事典マイペディア 「節季候」の意味・わかりやすい解説

節季候【せきぞろ】

江戸時代の門付(かどづけ)芸の一つ,またその芸人。毎年12月中旬から末に,紙の頭巾(ずきん)と前垂をつけた者(古くは裏白をつけた笠(かさ)をかぶり赤い覆面をした)が3〜4人で組になり,四つ竹などではやしながら〈せきぞろ,ほうほう…〉と来年を祝う祝詞を唱えながら米銭を請い歩いた。

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世界大百科事典(旧版)内の節季候の言及

【山人】より

…折口の海と山との連続性と里との交流過程は,柳田の仮説と異なるわけだが,柳田が山を山人の起源とするのに対して,折口は海に中心をおいている点が注目される。また折口は,山人の具体的な姿として,笠をつけみの(蓑)をまとい,山苞(やまづと)として削掛け(けずりかけ)などのや杖を所持して現れることを特徴としてあげており,その姿で宮廷の祭りには呪詞(いわいごと)を述べに来たり,のちには村々を訪れて祝福を与えていく節季候(せきぞろ)などの遊芸,門付人ともなっていく過程に目をむけていて,日本芸能史に果たした役割の重要性を指摘しながら,独自の体系を打ち出している。そのほか早川孝太郎や宮本常一らの研究もあるが,山人研究は近代化の進展とともに,実態調査をとおしては実体をつかみにくくなったために,十分な研究が行われていない。…

※「節季候」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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