籠の鳥(読み)かごのとり

精選版 日本国語大辞典 「籠の鳥」の意味・読み・例文・類語

かご【籠】 の 鳥(とり)

① 籠の中の鳥。籠の中で飼われている鳥。籠に入れられた鳥。
風俗画報‐五二号(1893)人事門「大奥の殿に籠(カコ)の鳥(トリ)同様棲息する多くの女中に」
② おもちゃの一つ。竹などでつくった鳥籠の中に、うぐいすなどの作りものを入れたもの。鳥はぜんまいなどの仕掛けで、動いたり、鳴いたりするようになっている。
※雑俳・歌羅衣(1834‐44)二「音を入れる・おもちゃへこへこ籠の鳥」
③ (籠の中の鳥は自由に飛び回れないところから) 自由を束縛されていること。また、そのような境遇の人。籠の中の鳥。
(イ) 捕われたり、周囲から強い圧力をかけられたりして自由に行動できないこと。また、そのような人。
浄瑠璃今宮心中(1711頃)中「二郎兵衛めはかごの鳥」
(ロ) 遊女。郭から出られず、年季借金などに縛られ、格子窓の中に居て客を引いたりすることなどからいう。
浮世草子・浮世栄花一代男(1693)二「籠(カゴ)の鳥かやあかぬなげぶし」
※浮世草子・傾城禁短気(1711)四「女郎はままならぬ身とて、〈略〉行て逢いぬる事も成難く、籠(カゴ)の鳥かやうらめしき」

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デジタル大辞泉 「籠の鳥」の意味・読み・例文・類語

かご‐の‐とり【籠の鳥】

籠の中の鳥のように、身の自由が束縛されている状態のたとえ。また、そのような境遇の人。籠の中の鳥。
1の境遇から》遊女。
「―なる梅川に焦がれて通ふ廓雀さとすずめ」〈浄・冥途の飛脚

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「籠の鳥」の意味・わかりやすい解説

籠の鳥
かごのとり

流行歌および映画の題名。歌の成立は1922年(大正11)で、千野かおるほか2名の作詞、鳥取春陽(とっとりしゅんよう)作曲とされている。しかし赤沢大助(だいすけ)の告訴もあって、著作権の帰属は明確さを欠く。とにかくこの曲の流行を決定づけたのは、帝国キネマ製作の映画『籠の鳥』(松本英一監督)である。24年8月に封切られた大阪・芦辺(あしべ)劇場は5週間、東京・遊楽館は4週間の続映となり、後編の好評とも相まって、女優歌川八重子は一躍スターダムにのし上がった。しかし、退廃的な曲調が「国民精神作興ニ関スル詔書」(1923年11月発布)の主旨にもとるため、映画館内で観客合唱が禁じられたり、歌そのものを禁止したりする動きもあった。

[倉田喜弘]

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