細川紙(読み)ホソカワガミ

デジタル大辞泉 「細川紙」の意味・読み・例文・類語

ほそかわ‐がみ〔ほそかは‐〕【細川紙】

埼玉県比企ひき郡小川町産のこうぞ製の和紙。帳簿などに用いる。はじめ紀伊国細川村で産したところからの名称。ほそかわし。
[補説]国指定の重要無形文化財。また、平成26年(2014)「和紙 日本手漉てすき和紙技術」の名称で、本美濃紙石州半紙とともにユネスコ無形文化遺産に登録された。

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精選版 日本国語大辞典 「細川紙」の意味・読み・例文・類語

ほそかわ‐がみ ほそかは‥【細川紙】

〘名〙 純楮(こうぞ)製の和紙の一種。主に帳簿などに用いられた。和歌山県高野山中腹の細川原産といわれるが、江戸時代からは埼玉県比企郡小川町周辺で漉(す)かれている。

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改訂新版 世界大百科事典 「細川紙」の意味・わかりやすい解説

細川紙 (ほそかわがみ)

埼玉県比企郡小川町および秩父郡東秩父村ですかれている強靱(きようじん)な楮紙(こうぞがみ)。《正倉院文書》によれば,武蔵国は774年(宝亀5)に紙すきが行われている。地元の伝承によれば,比企郡平村の慈光寺には871年(貞観13)の写経が残っており,この写経用紙を供給するところから,この地の紙すきが始まったという。1668年(寛文8)の資料では,すでに比企,秩父,男衾(おぶすま)の3郡における製紙業の発展はめざましい。当時は大河原紙と称して,秩父郡の安戸村が中心であった。それから160年後の《新編武蔵風土記稿》(1828)によれば,小川紙と称して,平村,腰越村などですき,小川村に問屋がいて,中心地となっている。初めは天領であるため,代官に税を払えば,江戸府内の販売は自由であったが,1813年に江戸十組問屋以外に販売することが禁じられ,紙の価格を問屋に一方的に取り決められた。現在の小川紙の内容は,東京の需要を反映し江戸型紙原紙,障子紙,雲竜紙,ガラス繊維入り紙,書道半紙,画仙紙,黒四つ塵紙(ちりし),大和塵紙,鯉幟紙(こいのぼりがみ),文庫紙(ぶんこし),パッキング原紙などと種類が多いが,その中心となるのは細川紙である。細川紙は本来,和歌山県伊都郡高野町細川ですき出した紙といわれる。細川紙は紙の地合がしまって,紙面にけばだちが生じにくく,きわめて強靱な楮紙で,とくに地元に近い群馬楮を使用したものは,淡黄色の明るい紙色と光沢を示して,独特の魅力を有する。細川紙の用途は,かつて大福帳,土地台帳などであったが,現在は文庫紙(畳紙(たとうがみ)),和本用紙,書画用紙などである。昔,晴天の日の盛んな板干しの光景から,〈ぴっかり千両〉の言葉が広まった。現在,槻(つき)川に沿い,小川町と東秩父村ですく業者により細川紙技術者協会が結成されている。1975年に重要無形文化財に総合指定され,細川紙技術者協会は保持団体に認定された。
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百科事典マイペディア 「細川紙」の意味・わかりやすい解説

細川紙【ほそかわがみ】

コウゾを原料とした強靭(きょうじん)な厚い手すき和紙。〈ほそかわし〉とも呼ばれる。和歌山県高野町細川でかつて生産されていた和紙。その後,生産の拠点は埼玉県に移り,比企郡小川町で生産される〈小川和紙〉のひとつとなった。小川和紙は,埼玉県比企郡小川町および,秩父郡東秩父村で生産される和紙である。小川での和紙製造の起源は奈良時代に遡るとされるが,江戸時代に小川を中心とした比企・秩父・男衾(おぶすま)の三郡が和紙の一大産地に発展するのは,江戸が経済の中心地として飛躍してからのことである。各種の紙が漉かれたが代表的な紙は細川紙であった。和歌山県高野町細川で漉かれていた〈細川奉書〉と同質の紙(細川紙)を小川で漉かせるようになったことから有名となる。その後和歌山での生産は途絶し,〈細川紙〉の技術は埼玉のみで引き継がれることとなった。1978年,国の重要無形文化財に指定。石州半紙(島根県)及び本美濃紙(ほんみのし)(岐阜県)と併せて,〈和紙:日本の手漉和紙技術〉として,2014年ユネスコ無形文化遺産に登録された。
→関連項目小川[町]東秩父[村]無形文化遺産保護条約

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知恵蔵mini 「細川紙」の解説

細川紙

埼玉県小川町周辺で生産されている、楮(こうぞ)を原料とした手すき和紙の名称。同地域で生産される小川和紙の中でも代表的な紙である。紙の地合がしまって、紙面にけばだちが生じにくい強靱(きょうじん)な楮紙(こうぞがみ)である。江戸時代、小川を中心とした比企・秩父・男衾が和紙の一大産地に発展し、各種の紙が漉(す)かれた。和歌山の高野山麓の紙漉き場である細川村で漉かれたことが「細川紙」の名称の由来であるというのが有力。細川紙の用途はかつては土地台帳、大福帳、記録用紙など、強靱性が特に求められるものに広く用いられていたが、しだいに需要が減少し、現在は和本用紙、文庫用紙、たとう紙などに使用されている。2014年11月27日、細川紙の手すきの技術は、09年にすでにユネスコ無形文化遺産に登録されている島根県の「石州半紙」、岐阜県の「本美濃紙」に続き、2014年11月27日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産へ登録されることが決定した。

(2014-11-28)

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デジタル大辞泉プラス 「細川紙」の解説

細川紙

かつて和歌山県伊都郡の高野町細川で生産されていた和紙。原料はコウゾ。その後生産の拠点は埼玉県に移り、比企郡小川町で生産される「小川和紙」のひとつとなる。和歌山県での生産は途絶。1978年、国の重要無形文化財に指定。

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世界大百科事典(旧版)内の細川紙の言及

【小川[町]】より

…現在は和紙生産の大部分が機械すきとなり,加工紙も生産されている。細川紙と呼ばれたコウゾのみを原料とする手すき和紙も伝承されており,1978年に重要無形文化財に指定された。県立製紙試験場もある。…

【楮紙】より

…本来,越前奉書は地元のコウゾや加賀楮,本美濃紙は津保草(つぼくさ)とよばれる地元のコウゾを使っていたものだが,現在は絶えてしまったので,よく似た性質の那須楮で代用している。その他,細川紙(埼玉県)は地元に近い群馬楮を使って,黄色みの濃い,光沢のある楮紙となるのが本来の姿であった。また東北地方や九州南部に多い,冬の農閑期にすく副業の製紙家は,地元のコウゾを使う場合が多い。…

※「細川紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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