家庭医学館 の解説
せんじょうあいじーえーすいほうしょうほうしんじょうひふえん【線状IgA水疱症/疱疹状皮膚炎 Linear IgA Bullous Dermatosis / Dermatitis Herpetiformis】
全身に紅斑(こうはん)と水疱(すいほう)が多発し、強いかゆみがあります。症状も検査結果も、線状IgA水疱症と疱疹状皮膚炎とはよく似た所見を示します。
しかし、疱疹状皮膚炎は、蛍光抗体法(けいこうこうたいほう)で組織を観察すると、免疫(めんえき)グロブリンのIgAが真皮乳頭部(しんぴにゅうとうぶ)や表皮基底部に顆粒状(かりゅうじょう)に並んでいるのに対し、線状IgA水疱症では、線状に並んでいる点が異なります。このちがいが線状IgA水疱症の病名の由来ともなっています。
また、疱疹状皮膚炎はグルテン過敏腸症をともないやすいのに対し、線状IgA水疱症では合併することはありません。このことも、2つの病気が異なると考えられる根拠となっています。
なお、疱疹状皮膚炎は、どちらかといえば、成人におこることが多いのですが、線状IgA水疱症には、40歳代を中心に発病する成人型と、10歳未満の子どもにおこる小児型とがあります。小児型では、陰部、臀部(でんぶ)(おしり)、太ももの内側などに皮疹(ひしん)が群がってできることが多くあります。
[症状]
肘(ひじ)、膝(ひざ)などの曲げ伸ばしする部位の外側、わきの下、肩、腰、臀部などに紅斑が多発します。その紅斑の縁に小さな水ぶくれ(水疱)が輪のように群がって発生します。
かゆみが強くてひっかくために、小さなただれができ、かさぶた(痂皮(かひ))ができ、色素沈着や小さな瘢痕(はんこん)もできます。
このため、紅斑、水疱、痂皮、色素沈着、瘢痕などの病変が混在して見られることが多いものです。
これらの症状は、治療をすると治まりますが、また再発することをくり返します。
[検査と診断]
組織を微量採取して調べる病理組織検査を行なうと、表皮の下に水疱がみられ、そこに隣接する真皮乳頭部に好酸球(こうさんきゅう)の微小膿瘍(のうよう)がみられます。
蛍光抗体法で組織を観察すると、線状IgA水疱症では、真皮乳頭部や表皮基底部にIgAが線状に沈着しており、疱疹状皮膚炎では、顆粒状に沈着しているのがみられます。
[治療]
線状IgA水疱症では、DDS(ダプソン。商品名=レクチゾール)を内服しますが、疱疹状皮膚炎ほどよく効きません。このため、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド)の内服を併用することがよくあります。
疱疹状皮膚炎では、DDSを内服で用いるとよく効きます。この薬の有効なことが疱疹状皮膚炎と診断する1つの根拠ともなります。副腎皮質ホルモン(ステロイド)の内服も効果があります。
また、疱疹状皮膚炎には、小麦などの穀類に含まれるグルテンというたんぱく質に対し腸が過敏に反応し、下痢などがおこるグルテン過敏腸症がおこることが多いものです。このグルテン過敏腸症の治療にグルテン除去食を用いると、皮膚の病変も改善します。