肩帯(読み)ケンタイ(英語表記)shoulder girdle

デジタル大辞泉 「肩帯」の意味・読み・例文・類語

けん‐たい【肩帯】

前足を支える骨格上肢帯じょうしたい

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精選版 日本国語大辞典 「肩帯」の意味・読み・例文・類語

けん‐たい【肩帯】

〘名〙
脊椎動物胴体にあって上肢を支える骨格。肩甲骨烏喙(うかい)骨、鎖骨などからなり、上肢を脊柱に連結している。上肢帯
② 肩からかけて、剣をつるしたり太鼓や旗を支えたりする帯。負い帯。つり帯。〔五国対照兵語字書(1881)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「肩帯」の意味・わかりやすい解説

肩帯 (けんたい)
shoulder girdle

脊椎動物の体の肩部にあって前方の有対肢(胸びれまたは前肢)の骨格や筋肉の土台となり,それらを胴に固定する働きをもつ骨格。ヒトでは上肢帯と呼ばれ,鎖骨と肩甲骨がこれにあたる。後方の有対肢(腹びれまたは後肢)に対しても類似の骨格があってこれを腰帯(ようたい)(骨盤のことでヒトでは下肢帯)と呼び,肩帯と腰帯を合わせて一般に肢帯という。

 軟骨魚類の肩帯は中軸の骨格とはつながらないU字形の骨格で,片側が烏口(うこう)軟骨・肩甲軟骨・上肩甲軟骨という3部分から成り,前2者の接続部に胸びれが付着する。硬い骨を備えた脊椎動物になると,肩帯の構成骨の数は一般に原始的な種類に多く,高等なものほど減少する。原型的な硬骨魚類では,軟骨魚類の肩帯要素とみられる烏口骨・肩甲骨・上肩甲骨という3種の軟骨性骨(軟骨が変化してできる骨)と,鎖骨・擬鎖骨上鎖骨)・上擬鎖骨・後側頭骨という4種の皮骨(軟骨を経ずにできる骨)の合計7種の骨が三日月形に配列し,鰓孔(えらあな)の後ろのいわゆる“かま”の骨格をつくり,最下部で左右の鎖骨どうしが連結する。これらのうち肩甲骨および烏口骨に胸びれの骨格がつく。最上部にある後側頭骨は頭蓋の後部に連結するので,胸びれは肩帯を介して頭骨に固定されていることになる。高等な硬骨魚類では軟骨性骨は退縮して肩甲骨と烏口骨(合体して肩甲烏口骨)だけになる一方,皮骨要素では鎖骨が退化消失し擬鎖骨が大きく発達する。俗にいう〈タイのタイ〉は肩甲烏口骨のことで,これに胸びれの骨格が関節する。

 他方,陸生化した四足動物では逆に皮骨の方が退縮し,肩帯は体の中軸骨格とまったく連結しない。原始的な種類では左右の鎖骨の間に間鎖骨が介在して両側の肩帯を結びつける。現存の両生類では上記3種の軟骨性骨と鎖骨とが肩帯をつくり,肩甲骨・烏口骨・鎖骨の互いに接する点に前肢の上腕骨が関節でつながる。爬虫類のうちトカゲ類の肩帯もこれと同様の構成をもつが,他の多くの爬虫類および鳥類では上肩甲骨は消失し,肩甲骨・烏口骨・鎖骨および間鎖骨が肩帯をつくる(ただしヘビ類は肩帯を完全に失っている)。そして前3者の接合する点に上腕骨が関節し,烏口骨はさらに胸骨とも接続する。鳥類では左右の鎖骨が間鎖骨を介して正中部で連結融合し,1個のV字形の骨になる。これを叉(さ)骨,暢思(ちようし)骨(ウィッシュボーン)などと呼ぶ。

 哺乳類では,爬虫類と同様の肩帯をもつ単孔類を除き,構成骨の数がさらに減少する。烏口骨は退縮して肩甲骨の烏口突起に転化しているので,軟骨性骨は1個だけである。また唯一の皮骨である鎖骨も,特殊化したクジラ類,走行性動物である有蹄類や食肉類では退化または消失している。これらの動物では肩帯は1対の肩甲骨だけで,前肢の上腕骨は肩甲骨の前端だけに連結しているわけである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肩帯」の意味・わかりやすい解説

肩帯
けんたい

脊椎(せきつい)動物の有対肢のうち前肢の骨格の一部で、前肢帯ともいう。前肢の体外へ突出した部分である自由肢を脊柱に結合する役を果たし、体幹内にある。後肢の自由肢を脊柱に結ぶものを腰帯(ようたい)または後肢帯という。肩帯と腰帯をあわせて肢帯という。つまり、魚類を含め、対(つい)をなす付属肢(有対肢)は自由肢と肢帯に分けられる。

 肩帯と腰帯は基本的には同じ構造をもつが、構成する骨の名称が異なる。自由肢の関節部について、肩帯では、背側のものを肩甲骨、腹側の前方部を前烏喙(うかい)軟骨、後方部を烏喙骨(烏口(うこう)骨)という。前烏喙軟骨は鎖骨となり、肩甲骨と胸骨とをつなぐ。ただし硬骨魚類のうち全骨類と真骨類は鎖骨を欠く。腰帯では、背側を腸骨、腹側の前方部を恥骨(ちこつ)、後方部を坐骨(ざこつ)といい、両生類以上では全体としてひとかたまりの骨盤肢帯をつくる。

 肢帯は、魚類ではひれの運動を安定させ、陸生動物では体重が自由肢へかかるのを仲介する。魚類では内骨格性の肩帯を補強する皮骨性肩帯が発達していて、上鎖骨を介して頭蓋(とうがい)に結合している。しかし両生類では、上鎖骨の縮小により頭蓋との結合が消失し、頭は胴に対して自由に動けるようになった。上鎖骨は爬虫(はちゅう)類以上には存在しない。機能的には内骨格性の肩帯(いわゆる肩帯)が重要で、おもな体肢筋はすべてこれに付着する。陸生動物では、肢帯に付着する肢筋の量の増加に伴い肢帯が大きくなる。烏喙骨は、哺乳(ほにゅう)類様の爬虫類である盤竜類(化石)では小さかったが、哺乳類の祖先である獣弓類から哺乳類の単孔類、有袋類、有胎盤類段階へと進むにつれて、大きくなっただけでなく、脚(あし)の姿勢と付着筋の変化に伴い、烏喙骨の形も著しく変化した。

[川島誠一郎]


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普及版 字通 「肩帯」の読み・字形・画数・意味

【肩帯】けんたい

上肢帯。

字通「肩」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の肩帯の言及

【骨格】より

…これに肢帯と自由部とが区別される。肢帯とは前肢の肩帯と後肢の腰帯(骨盤帯)で,いずれも体壁中に没入して,体表から突出している自由部を中軸骨格に結びつける役割を営む。
[魚類の骨格]
 軟骨魚類(図2)では全部が軟骨性,硬鱗魚類では軟骨に一部は骨を交え,硬骨魚類(図3)では大部分が骨で,一部軟骨を交えている(一部にはすべて軟骨の種類もある)。…

【手】より

…上肢と体幹との境界は,体表からいうと三角筋の起始をなす線(鎖骨―肩峰―肩甲棘(きよく))であるが,骨格から見ると肩甲骨と鎖骨は全部広義の上肢のうちに加えられる。この両骨を合わせて〈上肢帯(肩帯)〉といい,いわば上肢を体幹にぶらさげ,運動を円滑にするための仲立ちの部分である。この上肢帯より末梢の,体幹から伸び出した部分を自由上肢という。…

※「肩帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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