胆嚢がん(読み)たんのうがん(英語表記)Carcinoma of the Gallbladder

家庭医学館 「胆嚢がん」の解説

たんのうがん【胆嚢がん Carcinoma of the Gallbladder】

胆石胆嚢炎治療で見つかる
[どんな病気か]
 胆嚢および胆嚢管粘膜(たんのうかんねんまく)の細胞から発生したがん腫(しゅ)です。高齢(60~70歳代)の女性に多く、男女比はおよそ1対2~3です。胆石症の人によくみられます。日本では、10万人に2人の頻度です。
 胆嚢の壁は薄いので、がん腫はすぐにリンパ管や小血管に浸潤(しんじゅん)(入り込む)します。また、周囲の臓器に直接浸潤したり、リンパ節や肝臓転移したり、腹膜播種(ふくまくはしゅ)(種をばらまいたような転移)をおこしたりと、多様に進展します。そのため、胆嚢がんの約45%が切除不能となります。
[症状]
 胆石による右季肋部(きろくぶ)(右わき腹)の疝痛せんつう)(刺すような、焼けるような激しい痛み)発作(ほっさ)で発症します。胆石症や胆嚢炎で胆嚢を摘出(てきしゅつ)してみて早期がんが発見される例が多く、術前に診断がつくことはあまりありません。
 ポリープ型の隆起性病変の場合、胆嚢の入り口が病変でふさがれないと症状はでません。
 進行性の胆嚢がんの症状は、上腹部痛、黄疸おうだん)、腹部腫瘤(ふくぶしゅりゅう)の順に多くみられます。がんが肝臓に浸潤・転移したり、十二指腸(じゅうにしちょう)や横行結腸(おうこうけっちょう)に直接浸潤していても、下血(げけつ)や通過障害がない場合は特別な症状はありません。そのため、外科治療するのに手遅れとなることが多くなってしまうのです。
 胆嚢の頸部(けいぶ)に発生したがんが肝門部や総胆管(そうたんかん)(図「胆嚢、胆管の部位の名称」)へ浸潤すると黄疸を生じます。さらに進行すると、ほかの消化器がんと同様の症状が現われます。
[原因]
 胆石は胆嚢がんの誘発因子であるといわれ、胆石の人の2%以下に胆嚢がんが、胆嚢がんの患者さんの60~90%に胆石があるという報告もあります。しかし、胆嚢がんの人の胆石保有率は男性より女性が高く、胆嚢の発がん機序(きじょ)(がんが発生するきっかけ)は男女で異なるともいわれています。
[検査と診断]
 超音波検査がもっとも侵襲しんしゅう)(身体的負担)がなく、手軽で有用な検査です。発見されたポリープの直径が1cm以上ある場合は、悪性かあるいは悪性化する可能性が高く、1.5~2cmになると悪性化の可能性がより高くなり、すぐに外科治療を受けなければなりません。
 胆嚢に腫瘍性病変が疑われたとき、CT断層撮影、内視鏡下胆嚢胆管造影(ないしきょうかたんのうたんかんぞうえい)検査が行なわれます(外来でも受けられます)。また、体外から肝臓を経由して針または管(カテーテル)を挿入し、胆嚢を直接穿刺(せんし)造影する方法も有用で、これは入院のうえで行なわれます。
 胆嚢がんの肝への直接浸潤、肝転移がないかどうかを診断するために、肝臓のCT断層撮影が行なわれます。肝門部、膵頭(すいとう)部、大動脈周囲にあるリンパ節が腫れて大きくなっているかどうかが、手術治療の決定、手術後の予後の推測に重要な情報を提供します。
 内視鏡の先端にプローブ(探触子(たんしょくし))をつけた超音波内視鏡検査も有用です。手術前には血管造影も行なわれます。
◎進行がんなら拡大手術を実施
[治療]
 胆嚢は粘膜、固有筋層、漿膜(しょうまく)の3層で構成されていますが、がん細胞がどの層まで到達しているかで手術法や予後が異なります。
 表面の粘膜内にとどまるがんならば胆嚢の摘出だけで十分ですが、固有筋層に達している場合は胆嚢肝床(たんのうかんしょう)という部位が切除され、周辺のリンパ節も郭清(かくせい)(あとを残さずきれいに取り去る)されます。漿膜に達している場合はリンパ節転移の可能性が高いため、年齢、肝機能などにもよりますが、肝臓や肝臓周辺の定められた区域を切除する拡大手術が必要です。
 また、膵頭部のリンパ節への転移や胆管を経由した膵臓への浸潤があれば、膵頭十二指腸切除も行なわれます。
●日常生活の注意
 超音波検査で胆嚢および肝内胆管が観察できますから、50歳以上の人は年に1~2回、検診を受けることをお勧めします。とくに、胆石や胆嚢ポリープがあるといわれた高齢の女性は、定期的に検査を受けるべきです。
 尿の色には平素から注意しましょう。閉塞性黄疸が生じた人の尿は濃く、汚くなります。また、眼球(がんきゅう)の白目(しろめ)の部分が黄色くなり、血液中の総ビリルビン値が1dℓ中3mg以上あれば、黄疸(おうだん)と診断されます。
 顔色が黒ずむほど強い黄疸が長期間続くと、肝機能障害、胃潰瘍(いかいよう)、腎機能障害になりますから、すぐに専門医のいる病院を訪ねる必要があります。
 ただし、同じ消化器でも、胃・大腸の専門医では、胆嚢がん、肝門部胆管がんの治療はできないのがふつうですから、注意しましょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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